[26年度改定] 「難治性眼疾患に対する羊膜移植術」など先進医療8件保険導入

[中央社会保険医療協議会 総会(第268回 1/22)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2014年 01月 22日

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 厚生労働省は1月22日に、中医協総会を開催した。
 この日は、平成26年度診療報酬改定に合わせて新規に保険収載する医療技術について議論したほか、DPC制度の対応や市場拡大再算定などを議題としている。
 
 
◆先進医療のうち「難治性眼疾患に対する羊膜移植術」など8件を保険導入
 
 診療報酬改定においては、たとえば入院料や各種加算などの診療報酬項目の見直しや新設・廃止などのほかに、新規の医療技術導入も行われる。
 新規の医療技術導入には、大きく分けて(1)医学会からの要望等のうち、有効性・安全性等の高いもの(2)先進医療のうち有効性・安全性の確立したもの―の2つのルートがある(p46参照)。
 
 (1)のルートは、医学会からの要望等をベースに、中医協の下部組織である診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会で「保険収載の要件を満たしているか(薬事法で承認されていない医薬品等を用いていないかなど)」「保険収載の必要性が高いか(有効性・安全性は十分かなど)」といった観点で審査が行われるものだ。
 その審査結果は中医協総会に報告され、そこで承認された医療技術が直後の診療報酬改定時に保険収載されることになる(p46参照)。
 
 平成26年度改定に向けては、関係学会から805件(重複分をカウントすると863件)の医療技術保険収載要望が出され、医療技術評価分科会で審査した結果135件(新規技術57件、既存技術78件)について「保険収載等の評価を行う優先度が高い」との結論に至った(p3〜p45参照)。
 たとえば『縦隔悪性腫瘍手術(胸腔鏡下)』『腹腔鏡下噴門側胃切除術』『体外照射(高エネルギー放射線治療』などを保険収載する一方で、『前立腺酸ホスファターゼ』などが保険から削除されることになる(p9〜p14参照)。
 総会では、これらを原案どおり了承している。
 
 ところで前回(平成24年度)改定では278件、前々回(平成22年度)改定では199件の技術について保険上の評価が行われている。
 これに比べて今回(平成26年度)改定では135件と少ないように思える。この点、診療側委員からは「平成26年度改定では改定財源が乏しい。これが保険収載に影響しているのではないか」との指摘がなされている。
 ただし厚労省保険局医療課の佐々木企画官や、医療技術評価分科会の福井分科会長(聖路加国際病院長)から「評価にあたっては、当該技術の有効性・安全性のエビデンスを中心に議論しており、財政影響等には大きく左右されていない」旨を説明している。
 
 
 (2)のルートは、先進医療としての実績を踏まえて保険収載の可否を検討するものだ(p46参照)(p60〜p61参照)。先進医療会議からは次の8技術を保険収載することが提案され、了承された(p55参照)(p58参照)。
●難治性眼疾患に対する羊膜移植術
●X線CT画像診断に基づく手術用顕微鏡を用いた歯根端切除手術
●腹腔鏡下子宮体がん根治手術
●光トポグラフィー検査を用いたうつ症状の鑑別診断補助
●内視鏡下筋膜下不全穿通枝切離術
●歯科用CAD・CAMシステムを用いたハイブリッドレジンによる歯冠補綴
●胸腔鏡下動脈管開存症手術
●腹腔鏡下スリーブ状胃切除術
 
 一方、「膝靱帯再建手術における画像支援ナビゲーション」や「ミトコンドリア病の遺伝子診断」など5つの技術が先進医療から削除されることとなっている(p55〜p56参照)(p59参照)。
 
 なお、「陽子線治療」や「重粒子線治療」など52の技術は先進医療としての継続が認められている(p56〜p57参照)。
 この点について診療側委員からは「長期間、先進医療のままとすることは、事実上の混合診療を認めることにつながる」と述べ、保険収載をするのか、先進医療から削除するのかを迅速に決定することが重要とのコメントが出されている。
 
 
◆DPCの係数計算方法等を了承、係数設定をまって激変緩和措置を検討
 
 DPC制度改革については、昨年末の中医協総会(平成25年12月25日)で大枠が了承され、今般、具体的な見直し案が厚労省当局から提示された。そのポイントは次のとおりである(p104〜p135参照)。
(1)調整係数から機能評価係数への置換えについて、平成26年度改定では「50%」とする。ちなみに平成28年度は75%、平成30年度に100%の置換えが行われる見込みだ(p104〜p105参照)。
(2)II群(大学病院本院なみの医療提供を行う病院群)の選定にかかる実績要件について、大学病院本院の実績値をもとに、外れ値を除いたI群(大学病院本院)の最低値をクリアすることと設定する(p106〜p107参照)(p113〜p118参照)。
(3)機能評価係数IIの財源配分は、各係数項目(効率性や複雑性など)で等分とする。
(4)保険診療指数(現在のデータ提出指数から改組)について、新たな増減算項目である「様式間の記載矛盾」「適切な傷病名コードによる請求」などの増減点幅は0.05点とする(「部位不明・詳細不明コード」の使用割合が高い場合の減算と同じ)(p108参照)。
(5)I群病院における保険診療指数の加算対象となる「適切な保険診療の普及のための教育に向けた取組み(指導医療官の派遣)」について、具体的な考え方を示す(ただし調整中)(p108〜p109参照)。
(6)消費増税対応として、包括点数の構成要素となる出来高点数(入院基本料や薬剤費、材料費など)の消費増税プラス改定に応じた措置を行う(p110〜p111参照)。
(7)DPC対象病院として「救急医療管理加算の届出」「『適切なコーディングに関する委員会』の毎月の開催(要件は年2回以上)」が望ましいことを明確にする(p111参照)。
(8)高額薬剤である『血液凝固第VII因子製剤(エプタコグアルファ(活性型)(遺伝子組換え))』について、血友病だけでなく『グランツマン血小板無力症』において使用する場合も包括対象外とする(p111〜p112参照)。
 
 これらの提案は了承されており、厚労省は今後、各病院の「医療機関別係数」計算等の作業に入る。この結果、現在と比べて医療機関別係数が著しく変動する場合には経営に与える影響を考慮し、「激変緩和措置」の設定が検討されることになる。
 平成24年度改定時には、「従前と比べて推計診療報酬が2.0%を超えて変動する場合には、調整係数を調整する」という激変緩和措置が採られた。
 今回(平成26年度改定)で激変緩和措置が導入されるのか、されるとしてどの程度となるのかは、医療機関別係数の分布等を見なければならず、来週以降の中医協総会を待つ必要がある(p106参照)。
 
 なお、参考資料として機能評価係数IIや各指数の分布状況が示されている(p119〜p135参照)。新設される後発医薬品係数を見ると、満点評価の病院がもっとも多い状況がうかがえる(p135参照)。
 
 
◆糖尿病用剤『ジャヌビア錠』などが市場拡大再算定の対象に
 
 この日は、市場拡大再算定等の対象品目も提示され、了承された(p62〜p63参照)(p64〜p65参照)。
 それによると、糖尿病用剤(2型糖尿病用薬)の『ジャヌビア錠』『グラクティブ錠』、関節リウマチ等用薬の『レミケード点滴静注用100』について、市場規模が拡大したことによる価格引下げ(市場拡大再算定)が行われる。
 また、これら薬剤の類似品についても併せて価格引下げ(市場拡大再算定類似品)が行われる。
 一方、気管支喘息用薬の『ゾレア皮下注用75mg』『同150mg』について、用法変更に伴う価格引下げ(用法用量変化再算定)が行われる。
 
 
 このほか総会では、平成26年度の薬価制度改革(p66〜p93参照)・材料価格制度改革(p94〜p103参照)について部会から報告を受け、了承している。厚労省当局は新たなルールに基づき、医薬品・医療材料の保険償還価格設定に入ることになる。

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