[DPC] 機能評価係数IIや算定ルール見直しの方向、分科会が中医協へ中間報告

[診療報酬調査専門組織 DPC評価分科会(平成25年度 第7回 9/20)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 09月 20日

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 厚生労働省は9月20日に、診療報酬調査専門組織の「DPC評価分科会」を開催した。この日は、中医協総会への中間報告に向けた議論を行ったほか、平成24年度退院患者調査結果などについて報告を受け、了承している。
 
 
◆「III群は細分化しない」「効率性指数に後発品割合の導入を検討する」
ことなど、近く中医協総会に報告
 
 DPCに限らず、診療報酬点数に関する事項の最終決定権限は中医協総会にある。そのため、下部組織(各部会や診療報酬調査専門組織)は、議論の途中で総会に中間報告を行い、検討の方向が中医協の考え方とずれていないか、あるいはさらに検討すべき事項はないかなどを確認するのが通例だ。
 
 DPC制度については、「基礎係数・医療機関群の骨格を維持する」「I群・II群の考え方を維持する」ことなどがすでに中医協総会で了承され(24年8月22日)、その後DPC分科会で「III群のあり方」や「機能評価係数IIの評価体系」などについてさらに検討が重ねられてきた。
 この日は、これまで議論してきた(1)基礎係数(医療機関群を含む)(2)機能評価係数II(3)算定ルール等―の各事項について中間報告案が厚労省当局から示され、これに基づいた議論を行った(p127〜p165参照)。
 中間報告は、細部について意見や反論も出されたが概ね了承されており、文言修正等を経て、近く中医協総会に提出される。
 
 各項目について、中間報告の内容と議論を整理してみよう。
 
(1)基礎係数(医療機関群を含む)
 基礎係数等については、「III群の細分化は行わない」方向が分科会で固められた(p129参照)。
 美原委員(脳血管研究所附属美原記念病院院長)から「約1300あるIII群病院には、効率性や複雑性が『高い専門病院』『中程度の地域の中核病院』『低い小規模な病院』の3つのタイプが混在しており、細分化が必要である」との意見が出されていた。
 しかし分科会では、「細分化はバラつきを補正することにはならない」「専門病院にもさまざまな種類があり基準設定は困難」などの意見が大勢を占め、「細分化は行わない」という結論に至った。
 ただし、将来的に「データを解析したうえで、細分化すべきか否かを改めて議論する」道は封じられていない。
 
 また、II群の実績要件である「臨床研修医数」について、「協力型病院の研修実績は含めず、基幹型病院の採用数実績のみで算出する」方向も固まっている(p129参照)。
 
 
(2)機能評価係数II
 機能評価係数IIでは、(i)データ提出指数について「データの質を評価する新たな評価方法等を検討する」(ii)効率性指数について「後発品の使用割合による評価の導入を検討する」(iii)地域医療指数について「精神疾患を加えた5疾病・5事業についての評価項目導入を検討する(在宅医療は、DPCでは評価が困難)」―という方向性が示されている(p131〜p132参照)。
 
 (i)のデータの質を担保する手法としては、「副傷病名の記載状況を評価する」提案が厚労省から示されているが、伏見委員(東京医科歯科大大学院教授)から「レセプト病名のように、やみくもな副傷病名記載が生じ、データの質がかえって落ちてしまう可能性がある」との反対意見が出されている。
 
 (ii)の後発品使用割合の評価については、三上委員(日医常任理事)から「DPCは包括評価であり、安価な後発品を使用すれば利益率が高くなるというインセンティブ付与の仕組みがすでに組込まれている。そこに新たな後発品使用の評価を設定するのは二重評価である」との反論が出されている。
 三上委員は、この日も「全医療機関で後発品使用を進めるべきで、DPCで強引な評価導入を行えば、後々の評価体系に悪影響を及ぼす可能性もある」旨のコメントをしている。
 この点、厚労省保険局医療課の佐々木企画官は「出来高とDPCは相互に影響しあうものである。三上委員の意向は中医協総会に伝える」と述べ、一定の理解を示している。
 
 また(iii)では「DPC病院における精神科の役割を評価すべき」との考え方が浮上している。この点、三上委員は「総合病院の精神科は、身体合併症をもつ精神疾患患者の救急医療対応として非常に重要である。DPCでも、出来高でも、総合病院の精神科を評価すべきではないか」とのコメントを寄せている。
 
 
(3)算定ルール等
 DPCにおいては、制度の隙間をつくような不適切な問題が散見されるため、算定ルールの見直しが逐次行われている。
 26年度改定に向けては、次の2点の見直しが検討されている。
 
 まず、高額薬剤を使用する診断群分類(22分類)について、入院期間Iの点数を高く設定(高額薬剤の費用を組込む)し、かつ入院期間Iを1日とすることで、入院1日目で高額薬剤の費用を回収できる仕組みが24年度改定で試行導入された。
 26年度改定では、これを継続するとともに、高額な医療材料を用いる検査(心臓カテーテル検査など)にも拡大することを検討する(p133〜p134参照)。
 この仕組みにより、「高額な薬剤等の費用を回収するための不必要な入院期間の延長」を防止することができると見込まれている。
 
 次に、退院から3日以内に「同一の病名」で再入院した場合、入院期間が通算される(3日ルール)が、これを見直す(p135〜p136参照)。
 現在は、「前入院の最大資源投入病名」と「再入院時の傷病名」が同一か否か(DPCの6桁コードが同一か否か)で判断している。
 しかし厚労省の調査では、「退院3日以内は異なる病名が6割近い(この場合、入院期間は通算されず、再入院で高い点数を算定できる)のに、4日目を過ぎると異なる病名は激減する(この場合、病名が同じでも入院期間は通算されない)(p135参照)」ことが分かった。
 これは、「再入院時の病名について何らかの操作が行われている」可能性が高いことを意味している。
 分科会では、「前入院の最大資源投入病名」と「再入院の最大資源投入病名」を比較してはどうか、との提案がなされている。ただし、この場合「入院期間を通算するか否かが再入院の退院時まで分からず、支払額の調整(減額や返還)が激増する」との指摘もあり、もう少し調整が必要なようだ。
 
 なお、3日ルール見直しに関連して三上委員は、「出来高では退院から3ヵ月間、同じ傷病名で再入院した場合に入院期間は通算される。そうした規定との整合性を図るべきではないか」とコメントしている。
 ただしDPCでは、出来高とは異なるロジックで入院日数や1日当たり点数が設定されていることから、「3ヵ月以内の同一病名再入院は通算する」などというルール設定はやや乱暴なようだ。
 厚労省医療課の佐々木企画官は、「出来高のルールや、3日ルール導入の経緯(20年度改定で導入)などを整理して示したい。この問題は中医協総会で議論していただくことも必要かもしれない」と説明するにとどめている。
 
 
○II群要件の算出方法や機能評価係数IIの重み付けなど、12月中旬目途に結論 
 
 こうした検討内容について中医協総会で了承が得られれば、DPC分科会の議論は次のステップに移る。
 今後は、(1)II群要件の具体的な算出方法(2)機能評価係数IIの「評価方法」「医療機関群別の評価」「6項目の重み付け」(3)新たな技術に対応した診断群分類の見直しや、副傷病の見直し(4)3日ルールの具体的見直しや、高額機器等を使用する場合の算定ルール(5)暫定調整係数の機能評価係数IIへの置き換えや、激変緩和措置、適切なコーディングの推進―などの議論を詰めていく予定だ(p125〜p126参照)。
 厚労省保険局医療課の担当者は、「例年に鑑みれば12月中旬には最終報告を中医協総会に提出することになろう」と見通している。
 
 
◆救急入院や後発品使用の状況探るため、10月下旬目途にヒアリング調査
 
 また、この日は「平成24年度退院患者調査」の結果が報告されている(p4〜p117参照)。
 今回は、(1)DPC導入の影響評価(2)外来診療の評価(3)総合病院精神科の診療実態―の3テーマで調査・分析が行われた。
 (1)からは「DPC病院では在院日数の短縮傾向が続いており、救急車による搬送や他院からの紹介が増加している」ことなどが明らかになっている(p7〜p25参照)(p42〜p117参照)。
 (2)では、検査や化学療法がどれほど外来に移行しているかを調べているが、施設(医療機関群)や地域との特段の関連性は見出されていない(p26〜p31参照)。
 なお、「包括評価導入によって、検査等が入院から外来にどれほど移行しているのか」を知りたいところだが、出来高病院のデータが少ない(p41参照)ため分析はなされていない。
 (3)からは、「精神科を併設する総合病院では、精神疾患を有する患者を一般病床で積極的に受入れている」ことなどが明らかとなっている(p32〜p40参照)。
 
 
 このほか、機能評価係数II等の見直しに向けて「救急医療入院、後発品使用割合、持参薬使用割合が著しく高い、あるいは著しく低い数病院を対象に、たとえば『なぜ救急医療入院に積極的でないのか』などに関するヒアリング調査を行う」ことが決まった(p118参照)。
 DPCデータやアンケート調査をもとに上記に合致する病院を選定し、10月下旬〜11月上旬にかけてヒアリングを行う予定だ。
 
 
 ところで上で述べたように、24年度改定では、II群の要件の1つに「臨床研修医をどれだけ受入れているか」が導入された。この要件により「臨床研修制度への影響はあるのか」という疑問が生じる。たとえば、「II群を目指す病院が、研修医の囲い込みをするなどの行動をとっていないか」という点だ。
 厚労省の調査によれば、「I群(大学病院本院)での研修医割合は減少し、III群(その他病院)では増加している」傾向が見られる(ただし、そもそも新臨床研修制度創設からの傾向である)が、24年度改定による特段の影響は見られないことを厚労省が報告している(p119〜p124参照)。
 
 
 ヒアリング調査実施も含めて、上記の調査結果は近く中医協総会に報告される。

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