[精神医療] 病床削減等を前提に、精神病床を居住場所に活用するとりまとめ

[長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策の今後の方向性(7/14)《厚生労働省》]

精神科医療行政ニュース - 2014年 07月 18日

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 厚生労働省は7月14日に、「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策の今後の方向性」を公表した。
 
 精神障害者の長期入院については、「患者のQOLを高める必要がある」「医療費を適正化する必要がある」などの要請から、地域への移行が重視されている。
 厚労省では、平成26年3月に『長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会』を設置し、地域移行に向けた支援方策などについて議論を重ねてきた。
 7月1日に開かれた最終会合(第4回)では、報告書のとりまとめについて大筋で了承が得られ、細部を修正したうえで今般の公表となった。
 
 訂正部分の中から重要なところをピックアップしてみよう。
 まず、退院した精神障害者が地域生活を送るうえで必要なサービス(地域生活を支えるサービス)の内容について記述が拡充された。
 たとえば「アウトリーチ(多職種のチームによる訪問支援)の充実推進」「常時の連絡体制確保」「自治体や保健所、精神保健福祉センター等の連携研修」「医療ケアの必要な精神障害者の短期入所への受入れ推進に向けたモデル事業実施」などが打出されている(p9参照)。
 
 また、地域移行が進み、精神障害者の在院日数が短縮すると、必要な病床数も当然少なくなってくる(病床の余剰が生じる)。
 この余剰病床について、7月1日に示された報告書案では、「『病院資源を居住の場』とする考え方に賛否両論があったこと、「精神障害者が本来の居住の場でないところで暮らしているという現状を改善することが必要」との認識は委員間で一致していることを紹介したうえで、次の2点を「本検討会のとりまとめ」とするとの表現がなされていた。
(1)医療法人等として保有する敷地等の資源や、将来的に不必要となった建物設備等の居住の場としての活用のうち、当該居住の場が共同生活援助の指定を受ける選択肢を可能とするために、既存の地域移行型ホームに関する基準を参考としつつ、一定の条件を付したうえで、病床削減を行った場合に(居住の場としての活用を)認める
(2)グループホームの立地に係る規制(住宅地など、家族や地域住民との交流の機会が確保される地域にあり、かつ入所施設・病院の敷地外にあるようにしなければならない)などを見直し、また見直し後の運用状況を検証する
 
 この点(1)(2)の内容に変更はないものの、公表された報告書では「本検討会のとりまとめ」という表現から、「多くの構成員の一致した考え方」というマイルドな書きぶりに改められている(p14参照)。
 反対意見に配慮した格好だ。
 
 なお、これらを考える前提として「障害者権利条約に基づく精神障害者の権利擁護の観点を踏まえる」との一文が追加されている点にも留意が必要だ(p14参照)。

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