[改定情報] 介護医療院への転換で行政対応への問題提起も 入院分科会
[診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会(令和元年度第4回 7/3)《厚生労働省》]
2020年度診療報酬改定ニュース - 2019年 07月 03日
診療報酬調査専門組織の入院医療等の調査・評価分科会は7月3日、【療養病棟入院基本料】や入退院支援などについて議論した。分科会では、【療養病棟入院基本料】の届出施設の一定数が地域包括ケア病棟や介護医療院などへの転換意向を持っていることが厚生労働省の分析データで明らかになり、委員からは介護医療院への転換について、さらなる促進を求める意見や、医療療養からの転換に待ったがかかるケースがあるとして行政側の対応改善を求める意見が出た。
厚労省のデータによると、【療養病棟入院基本料】を届け出ている施設のうち、【入院料1】届け出施設の7.5%、【入院料2】では26.2%、【経過措置1】(看護職員配置20対1または、医療区分2・3患者割合50%を満たさない)は60.6%が、他病棟などへの転換意向を持っていた。各入院料の転換先で最も多かったのは、【入院料1】が地域包括ケア病棟、【入院料2】と【経過措置1】は介護医療院だった。
また、患者の在院期間は、【経過措置2】(看護配置25対1を満たさない)を含む、全ての入院料で700日以上が最も多く、その割合は【入院料1】30.6%、【入院料2】23.6%、【経過措置1・2】25.8%(参照)。入院患者に占める医療区分2・3患者の割合は、【入院料1】は約9割(基準8割以上)、【入院料2】は約7割(同5割以上)で、1、2とも基準以上の重症患者を受け入れていた。
各医療区分に該当した患者の3カ月経過後の変化をみると、いずれの医療区分も3カ月前と同じ区分の患者の割合が高かったが、死亡退院の割合は医療区分が重くなるほど高くなり、区分3では約8割を占めた。
議論では、松本義幸委員(健康保険組合連合会参与)が介護医療院への転換について、「経過措置の延長はせずに決断を促してほしい」と要請。池端幸彦委員(医療法人池慶会理事長)は、「行政側が、介護療養型医療施設を優先し、医療療養からの移行に待ったをかけているところが多いと聞く。介護と医療を合わせたら(介護医療院に転換したほうが)コストダウンになるのだということを行政側に周知するべきではないか」と問題提起した。
◆地域包括ケア病棟の医師配置の議論求める意見も
神野正博委員(社会医療法人財団董仙会理事長)は、【入院料1】の届出病棟の医療区分2・3患者割合が9割を占めることや、在院期間の長期化や死亡退院の多さから、医師の負担の増加が推察されるとして、【入院料1】の主な転換先となる【地域包括ケア病棟入院料】の医師配置についての検討を求めた。
同入院料は一般病床、療養病床のいずれからも届出可能であるため、16対1と48対1の実質2つの医師配置基準が存在する。神野委員は、「療養病床の医師がこれだけ忙しいのに、これまで医師配置について議論してこなかったのは問題だ」としたが、これに池端委員は反論。地域包括ケア病棟は、急性期治療後の患者と急性増悪した在宅療養患者の受入れという2つの役割を担っていることから、医師の基準が2つあっても問題ないとの認識を示した。
◆病棟への入退院支援職員の配置、専従、専任で効果に差はなし
一方、入退院支援の関係では、病棟への入退院支援担当職員の配置による効果を、職員が専従の施設と専任の施設で比較したところ、どの入院料種別においても大きな違いはなかったとするデータが示された。【入退院支援加算1】では、「各病棟に入退院支援等の業務に専従として従事する専任の看護師または社会福祉士を配置」を要件として求めているが、委員は「このデータをもってやめるというのは性急すぎる」(神野委員)、「数年は今のままとするべきではないか」(松本委員)などとして、検討を深めるためにより詳細なデータの提出を厚労省に求める声が相次いだ。