[調査] 障害基礎年金の不支給割合、地域差と傾向をヒアリング

[「障害基礎年金の障害認定の地域差に関する調査結果」を公表します―厚生労働省(H27.1.14)]

精神科医療行政ニュース - 2015年 01月 30日

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 厚生労働省は1月14日、「障害基礎年金の障害認定の地域差に関する調査結果」を公表しました。この調査は、都道府県によって障害基礎年金の不支給割合に地域差があることから、不支給割合の実態を平成23年1月〜3月と平成25年1月〜3月に決定したサンプル事例(1万1968件)から抽出し、平成26年9月から12月にかけて調べたものです。
 具体的には、不支給割合が低い10県のうち5県(新潟、長野、徳島、岩手、神奈川)、不支給割合が高い10県のうち5県(大分、茨城、佐賀、兵庫、広島)にヒアリングしています。

 主な調査事項は、(1)障害の種別ごとに等級非該当等の割合に差異があるのか、(2)診断書に記載されている内容が概ね同じような状態像であっても、認定結果に差異があるのか、(3)初診日の判定に差異があるのか、(4)近年厳しくなっている傾向があるのか。(2)では、主な問題意識として、精神障害・知的障害における(ア)日常生活能力の評価、(イ)就労状況の評価、の2点をあげています。

 調査結果から目立つところを見てみると、下記のようなことが分かりました。

■障害の種別ごとの等級非該当割合の地域差
・障害基礎年金の新規申請のうち、精神障害・知的障害が全体の66.9%を占めていました
・不支給割合の地域差と精神障害・知的障害の等級非該当割合は、概ね同じ傾向を示していました
・肢体障害・内部障害・外部障害では障害年金の都道府県格差はそれほど見られませんでした

■診断書の記載項目
 まず、精神障害・知的障害における「日常生活能力の程度」欄は、日常生活等の場面ごとに、どの程度援助を要するかを5段階で評価するものです。
(1)精神障害(知的障害)を認めるが、社会生活は普通にできる
(2)精神障害等を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には、援助が必要である
(3)精神障害等を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である
(4)精神障害等を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である
(5)精神障害等を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である
 判定を行う場面は、適切な食事、身辺の清潔保持、金銭管理を買い物、通院と服薬、他人との意思伝達および対人関係、身辺の安全保持および危機対応、社会性の7つ。

 今回の調査から、障害年金の不支給割合の低い10県においては、 (2)の「精神障害等を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には、援助が必要である」となっていることがひとつの目安としている一方、不支給割合の高い10県においては、(3)の「精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である」とされていることがひとつの目安となって、障害基礎年金の支給をしていることがわかりました。

 日常生活能力が(2)の場合、不支給割合が低い10県は75件中4件の5.3%、不支給割合が高い10県は65件中46件の70.8%が、等級非該当でした。
 日常生活能力が(3)の場合、不支給割合が低い10県は408件中9件の2.2%、不支給割合が高い10県は387件中140件の36.2%、が等級非該当でした。

 もっとも、「日常生活能力の程度」欄以外にも重要な項目(「日常生活能力の判定」における評価、具体的な症状、日常生活状況、就労状況等)があり、総合的に評価し判断しているため、「日常生活能力の程度」欄だけで判断することできないものの、「日常生活能力の程度」欄だけをとっても地域差が大きい結果は注目すべき点です。

 このほか、精神障害・知的障害の診断書に就労状況の記載有無による差異、初診日の判定にかかる差異について調査分析が示されています。

 今回の調査結果を受けて、厚生労働省は次のような取り組みを進めるとしています。
(a)調査結果について、日本年金機構の全国の障害認定医や事務担当者に周知を行う
(b)都道府県ごとの精神障害・知的障害の認定の全体的な傾向に差異があることが明らかになったことから、不公平が生じないよう、精神障害・知的障害における等級判定のガイドラインとなる客観的な指標や就労状況の評価のあり方について、専門家による会合を開催して検討する

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