[改定速報] 国際医療特区では、臨床研究中核病院等での先進医療特例認める

[中央社会保険医療協議会 総会(第273回 3/12)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2014年 03月 12日

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 厚生労働省は3月12日に、中医協総会を開催した。
 この日は、「国家戦略特区における先進医療制度の運用」や「被災地特例」を主な議題とした。
 
 
◆臨床研究中核病院等では、未承認薬を用いる保険外医療技術と保険との併用認める
 
 国家戦略特区とは、首相の主導により強力な規制改革を進める特別区域を定めるもので、これまでに「国際的ビジネス拠点」「医療等の国際イノベーション拠点」などを設置する方針が固まっている(p23〜p24参照)。
 この「医療等の国際イノベーション拠点」の一環として、『保険外併用療養の拡充』が掲げられている。
 具体的には、「医療水準の高い国で承認されている医薬品等について、臨床研究中核病院等と同水準の国際医療拠点において、国内未承認の医薬品等の保険外併用の希望がある場合に、速やかに評価を開始できる仕組みを構築する」というものだ(p24参照)。
 この仕組みは、先進医療制度の一部見直し(国家戦略特区における特例の創設)によって対応することになるため、中医協の了承を得る必要がある。
 
 厚労省が示した具体的な仕組み(特区における特例)は次のとおり(p18参照)。
(1)国内未承認薬を保険診療と併用できる実施医療機関は、「臨床研究中核病院」「早期・探索的臨床試験拠点」と同水準の国際医療拠点とする
(2)対象技術に特段の限定は行われないが、医療水準の高い国(イギリス、アメリカ、ドイツ、フランス、オーストラリアの6ヵ国)で承認されている医薬品等を用いる技術とする
(3)より迅速な審査等を行うため、「通常よりも手厚い事前相談(特別事前相談)」「先進医療技術審査部会と先進医療会議との合同審査」などの特例を設ける
(4)特区域指定については、「都道府県または一体となって広域的な都市圏を形成する区域指定(比較的広域的な指定)」を規定する(複数の小区域で同時並行的に事業を進める、いわゆる「バーチャル特区」ではない)(p35参照)
 
 
 (1)の実施医療機関については、先進医療会議で個別医療機関ごとに「臨床研究中間病院等の基準と同水準の体制等を敷いているか」を判断して決する。
 また、人材等を集中的に投入して成果を上げる必要があることから、「1特区内での実施医療機関数は厳選」される見込みだ。
 厚労省当局は、「臨床研究中核病院等であれば基本的に問題ない」とするが、その他の医療機関については「個別に十分な確認が必要」との考え方を示している。
 
 ちなみに、臨床研究中核病院には「出口戦略を見据えた適切な研究計画を企画・立案し、ICH-GCP(国際的な治験の基準)に準拠して臨床研究を実施できる」「質の高い多施設共同臨床計画を企画・立案し、他の医療機関と共同で実施できる」ことなどの機能が必要とされ、現在、北大病院や京大病院、九大病院など10病院が選定されている(p20〜p22参照)。
 また、早期・探索的臨床試験拠点には「特定機能病院、国立高度専門医療研究センター等である」「がん、脳・心血管疾患等の重点疾患分野において、治験、臨床研究に精通する医師がいる」などの要件が設定されており、現在、国立がん研究センターや東大病院など5病院が選定されている(p21参照)。
 
 
 (3)の迅速な審査については、上記の特例を設けることで、現在「概ね6ヵ月」かかっている先進医療の審査期間が、「概ね3ヵ月」に短縮される見込みだ(p19参照)。
 厚労省保険局医療課の佐々木企画官は、「先進医療の申請がなされてから、事務当局と医療機関とのやりとり(資料の修正や追加提出など)、先進医療会議メンバーと医療機関とのやりとりが頻繁になされているのが実際だ。これを、『特別事前相談』を催すことなどで、企画段階から相談を受け、効率化を図れるのではないか」と見通している。
 さらに、佐々木企画官は「通常のケースに比べて安全性が劣ることのないよう運用したい」とも付言している。
 
 
 この仕組み(先進医療制度の国家戦略特区における特例)は承認され、近く関係通知等の改正が行われる模様だ。
 
 
◆東日本大震災に係る診療報酬関係の特例、26年9月30日まで延長
 
 この日は、東日本大震災の被災地特例も議題となった。
 震災の被災地では、医療従事者の不足や、1医療機関あたり患者数の増加(医療機関や介護施設等の減少)などが続いており、診療報酬上の特例措置が必要となる。たとえば、看護配置の特例や平均在院日数要件の特例などだ。厚労省は26の特例を設けている(p12〜p16参照)。
 
 厚労省の調査によれば、平成26年1月時点で36の医療機関(岩手12(うち歯科5)件、宮城10件、福島12件、山形1件、群馬1件)で特例が活用されており、うち31の医療機関が特例の継続を要望している(p12参照)。
 厚労省当局は、こうした要望を受止め、次のような対応をとることを提案。診療、支払双方ともこの提案を了承している(p17参照)。
(1)福島県の保険医療機関については、地方厚生局に届出のうえ特例措置を平成26年9月30日まで利用できる(必要になれば新たな特例措置を活用することも可能)
(2)その他の都道府県の保険医療機関については、現に利用している特例措置についてのみ、地方厚生局に届出のうえ平成26年9月30日まで利用できる。ただし、岩手県・宮城県では状況に変化があり、必要があればその際に対応を検討する。
(3)特例措置を利用する保険医療機関は、利用状況、今後の取組み等を報告する
 
 
◆回復期リハ1の【体制強化加算】、専従医師等は「病棟」業務に専念を
 
 なお、平成26年度診療報酬改定について、厚労省保険局医療課の担当者からコメントをいただいたのでご参考になさっていただきたい。
 
●回復期リハビリテーション病棟1における【体制強化加算】について
 【体制強化加算】は、専従医師(3年以上のリハ医療経験・リハ医療研修修了)1名以上と専従社会福祉士(3年以上の退院調整経験)1名以上を配置した場合に、1日につき200点を算定できる。
 この専従要件については、「病棟に張り付いていただく必要がある。仮にわずかでも外来業務を行った場合には、加算を全額返還していただくことになる」と強調している。
 医療現場等からは「【体制強化加算】はたいへんな増収になる」との声も出ているが、上記の点、ご留意いただきたい。
 
●病室面積について
 平成27年4月1日以降の新規届出については、病室面積は「壁芯」でなく「内法」で計算することが明確化された。
 この点、「病室面積を満たせない場合には、病床数を減らすなどして対応していただく必要がある。患者さんの療養環境を向上させるためであり、ご理解いただきたい」とコメントしている。
 
●時間外等の手術・処置で加算が強化された点について
 手術・処置の休日・時間外・深夜加算について、勤務医の負担軽減策をとっていることを条件とした高い加算が新設されたが、麻酔については加算の強化はなされておらず、現場の麻酔科医等からは不満が出ている。
 この点については、「麻酔管理料(I)に、腫瘍脊椎骨全摘術などの手術にあたり、マスクまたは気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔の実施時間が8時間を超えた場合の【長時間麻酔管理加算】(7500点)を新設している」と述べ、理解を求めている。

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