[障害者支援]精神障害者の雇用増加、ジョブコーチ制度のあり方などを整理

[地域の就労支援の在り方に関する研究会報告書(第2次)―厚生労働省(H26.3.4)]

精神科医療行政ニュース - 2014年 03月 07日

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 3月4日、厚生労働省は、障害者の就労支援のため、「地域の就労支援の在り方に関する研究会報告書(第2次)」を公表しました。

 

 同研究会の第1次研究会では、地域において各就労支援機関等に求められる役割等がまとめられました。また、ジョブコーチ制度の見直しや精神障害者等の就労支援を担う人材育成などが今後の検討課題とされていました。
 第1次研究会後の障害者雇用状況は、引き続き増加しています。また、ハローワークの職業紹介による障害者別割合は、身体障害者が平成16年度には全体の65%を占めていましたが平成24年度には39%となり、精神障害者が10%から35%となり、全体の3分の1を占めるまでに伸びています。平成30年には、精神障害者が法定雇用率の算定基礎に追加されることもあり、企業が精神障害者を雇用しやすい環境の整備等が重要となっています。
 
 今回取りまとめられた第2次研究会の報告書は、今後、精神障害者の雇用が進むなかでの、ジョブコーチと障害者就業・生活支援センターの位置づけや両制度のあり方についてまとめられています。
 両制度のうちジョブコーチとは、直接職場に出向いて、障害者および事業主双方に対して、仕事の進め方やコミュニケーション等の職場で生じる様々な課題の改善を図るための支援を行うものです。
 他方、障害者就業・生活支援センターとは、職業生活における自立を図るために就業及びこれに伴う日常生活又は社会生活上の支援を必要とする障害者に、地域の関係機関と連携しながら、相談から就職準備、 職場定着に至るまで、個々の障害者に必要な支援を提供する機関のことです。


 報告書ではまず、精神障害者の雇用が伸びていることや、障害者の職場定着にあたって、障害者の変化に対する早期かつ確実な対応が重要であることなどから、地域の就労支援機関における精神障害者への支援能力の向上と定着支援の充実の必要性が高まっているとしています。
 ジョブコーチ、障害者就業・生活支援センターにおける、研究会の助言のうち、目立つところを見てみます。

■ジョブコーチ
 ジョブコーチ研修においては、精神障害に関する内容の充実・強化が求められ、精神障害者支援に関しては、医療機関を活用した支援も必要としています。また、医療機関に勤務する精神保健福祉士(PSW)等の専門家がジョブコーチとしての役割を果たすために必要な知識を取得しやすい仕組みの構築することや、PSWがジョブコーチとして活動することを容易にすることが必要と述べています。
 また、経験豊富なジョブコーチに、地域のジョブコーチへの指導・助言を行う機能を持たせることが効果的であるため、障害者就業・生活支援センターに経験豊富なジョブコーチを配置することが最も有効と助言しています。
 このジョブコーチの養成については、研修の受講機会の拡大(柔軟化)を検討する一方で、研修の質を担保することを留意しなければいけないとしています。養成促進の前提として、企業にジョブコーチ活用の有効性・重要性の理解を深め、啓発を進めていくことも必要と述べています。

■障害者就業・生活支援センター


 精神障害者の雇用が進んでおり、企業からの支援ニーズも高まっています。精神障害者の支援を実施するためには、障害者就業・生活支援センターの職員の研修の充実強化を図る必要があります。近年、発達障害・高次脳機能障害・難病等に、より支援が必要とする者が増えていることなどから、これらの障害にも対応できるよう研修を充実する必要があるとしています。精神障害について、精神科医などの外部専門家の活用促進を図ることも必要と助言しています。


 また、障害者就業・生活支援センターは、自ら定着支援を実施するほか、企業からの支援要請として、周囲の社会資源と連携を図るコーディネート機能や第一次的な相談窓口となることを示唆し、必要に応じて関係機関に紹介する機能も果たすことが重要と述べています。さらに、センターの実績の適正な評価と地域特性に応じた強化を図っていくための評価方法の検討や、センター間の情報共有、ネットワーク形成のための取組を充実させる必要があるとしています。
 このほか、未設置圏域をなくすことを基本として進めつつ、設置されるまでの間は、引き続き小規模センターの設置や、未設置圏域を臨時的にカバーしている近隣のセンターの体制整備が求められるとしています。

 

 ちなみに、現在、障害者(身体障害者・知的障害者)の法定雇用率は、民間企業が2.0%、国、地方公共団体等が2.3%、都道府県等の教育委員会が2.2%と定められています。精神障害者については、雇用義務はありませんが、雇用した場合には身体障害者・知的障害者を雇用したものとみなされます。


 なお、「障害者総合支援法」にも触れておきます。平成25年4月1日から、「障害者自立支援法」を「障害者総合支援法」とし、障害者の範囲に難病等の方々を加え、対象となる方々は、身体障害者手帳の所持の有無に関わらず、必要と認められた障害福祉サービス等の受給が可能となりました。また、この4月1日から、重度訪問介護の対象者の拡大(知的障害や精神障害者を追加)や、ケアホームのグループホームへの一元化などが実施されます。

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