[改定速報] 消費増税対応、医科の初診12点・再診3点増で公益代表が裁定

[中央社会保険医療協議会 総会(第271回 2/5)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2014年 02月 05日

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 厚生労働省は2月5日に、中医協総会を開催した。
 この日は平成26年度診療報酬改定に向けた「短冊」の修正版が示され、これに基づいた議論を行った。懸案となっていた「消費増税対応」については、「医科の初診料を12点、再診料を3点引上げる」ことなどが決まっている。
 改定内容については今回で議論を終えており、次回総会で答申が行われる見込みだ。
 
 
◆消費増税対応、公益裁定で「医科の初診料12点、再診料3点引上げ」に
 
 まず消費増税対応について見てみよう。
 これまでに厚労省当局は2つの対応案を示していた。
1つ(対応案1)は「基本診療料と個別項目で対応する」という考え方。医科診療所では「初診料を8点、再診料を2点、有床診の入院基本料を2%程度」引上げ、さらに個別項目の点数引上げを行うというものだ。
 もう1つ(対応案2)は「原則として基本診療料のみで対応する」という考え方。医科診療所では「初診料を12点、再診料を3点、有床診の入院基本料を2%程度」引上げることになる。
 
 このうち案2に対し支払側委員は猛反発。健保連専務理事の白川委員は、「医科診療所の再診では3%をはるかに超える引上げとなり、患者や国民に説明がつかない。消費増税対応を論議する下部組織(診療報酬調査専門組織・医療機関等における消費税負担に関する分科会)でも『基本診療料と個別項目の組合せで対応する』という方針を確認しており、これを無視した提案はいかがなものか」と批判していた。
 
 一方、診療側委員は案2を歓迎している。その理由として「個別項目での対応では、どれほど細かくしても不公平感が残る」「消費税8%は過渡的(平成27年9月までとされている)なものであり、その後の抜本的対策が複雑にならないようにシンプルな対応が必要である」などをあげている。
 
 中医協総会の議論でも両者の主張は変わらず、前回(1月29日)会合では「公益裁定とする」ことが決まっていた。
 中医協では支払側と診療側が議論のうえで改定に向けた一定の方向を探るが、すべての項目で意見を集約できるわけではない。その際、時間的な制約もあることから、公益代表が両側の意見を斟酌して一定の結論を導き出し、これに両側が従うこととなっている(公益裁定)。
 
 この日は、公益代表が「案2を採用する」旨の裁定を行っている。ポイントは次のとおりだ(p327〜p361参照)。
●消費増税対応については「基本料への上乗せによる対応を中心としつつ、個別項目への上乗せを組合わせる形で対応することを基本とする」とされた
●しかし高額な投資への配慮の観点で、どの項目にどの程度上乗せすればよいかと判断することはデータの制約上、困難である
●高額な投資が行われた時点が消費税引上げの前か後かによって、消費税負担と診療報酬による補填との間に不整合が生じる
●このような中で、特定の個別項目を選定し上乗せを行うことは、新たな不公平感を惹起させ、患者の理解も得られないおそれもあり、すべての人から納得を得られるような個別項目への上乗せは現実的に不可能である
●結論として、「基本料への上乗せを中心に対応し、基本料との関係で上乗せをしなければ不合理になる項目に補完的に上乗せする」こととする
 
 基本料への上乗せ点数の詳細は資料をご覧いただきたいが、医科の主要部分をあげると次のようになっている(p328〜p361参照)。
●初診料:12点(同一日2科目の場合は6点)
●再診料:3点(同一日2科目の場合は2点)
●外来診療料:3点(同一日2科目の場合は2点)
●小児外来診療料:初診時は12点、再診時は3点(処方せんを交付する場合)
 入院料への上乗せは2%程度とされているが、具体的な点数は答申を待つ必要がある。
 
 また、基本料との関係で上乗せをしなければ不合理になる項目として、医科では「外来リハビリテーション診療料」「外来放射線照射診療料」「在宅患者訪問診療料」がある。
 
 
 なお、この裁定内容について白川委員(健保連専務理事)は「診療側の主張のみが受入れられた形で、支払側と診療側の妥協点を探っていない。不満である」とコメントしている。
 
 
◆抗不安薬等の多剤投与是正に向け、減額・減算規定を整備
 
 短冊に関しては、前回(1月29日)会合で委員から出された意見を踏まえて、次のような点について修正が行われている。
 修正内容について異論は出されておらず、森田会長(学習院大法学部教授)は議論の収束を宣言。次回会合で平成26年度診療報酬改定について答申がなされる見込みだ。つまり、点数等が明らかになる。
 
●有床診療所における【入院栄養食事指導料】について、自院の管理栄養士が指導を行う場合の【入院栄養食事指導料1】(点数は130点で据置き)と、栄養ケア・ステーションや他医療機関の管理栄養士が指導を行う場合の【入院栄養食事指導料2】(点数は130点より低くなる見込み)に細分化する(p89〜p90参照)。
 
●新設される、主治医機能を評価するための【地域包括診療料】の算定要件について、以下の修正を行う。
・病院において院外処方を認める規定を明記する(院外処方を行える場合や、病院で院外処方を行う場合には「薬局に患者がかかっている医療機関リストをわたす」「医師はカルテにお薬手帳のコピーを貼付する(電子レセへの貼付が難しいケースがあるため)」などを規定する)(p92参照)
・「当該医療機関で検査(外部委託を含む)を行い、その旨を院内に掲示する」ことを別個で規定する(p93参照)
 
●新設される、主治医機能を評価するための【地域包括診療加算】の算定要件のうち「お薬手帳をレセ、カルテに貼付する」旨の規定について、「カルテに貼付する(レセへの貼付は不要)」と修正する(p96参照)。上記と同様に、電子レセへの貼付が困難なケースがあるためだ。
 
●新設される【在宅療養実績加算】(常勤医師3名以上の要件を満たさないが緊急往診・看取りの実績が一定以上あり、かつ連携して機能強化型となっていない在支診・病を評価する)について、在宅時医学総合管理料・特定施設入居時等医学総合管理料への加算の場合には「同一日・同一建物居住者の場合」と「それ以外の場合」に細分化する(p101参照)。
 「同一日・同一建物居住者の場合」には、点数が低く設定される見込みだ。
 
●精神科医療におけるクリティカルパス使用を評価するための【院内標準診療計画加算】を算定できる患者について、「精神科救急入院料、精神科救急・合併症入院料、精神科急性期治療病棟入院料(精神科急性期医師配置加算を算定するものに限る)を算定している患者のうち、統合失調症および気分障害の患者」であることを明確化する(p148〜p149参照)。
 
●【精神療養病棟入院料】における精神保健指定医の配置要件の柔軟化に関し、1月29日時点では「常勤の精神科医が1名以上」とされていたところを、担当者を明確にするために「専任の常勤の精神科医が1名以上」と修正する(p149参照)。
 あわせて、現在の「標欠医療機関」でも算定を可能とする規定を削除し、同時に、新たに「全入院患者に対して入院後一定期間以内に退院後生活環境相談員を選任すること」などの施設基準を追加する。
 
●【通院・在宅精神療法】について点数の見直しを行うこととする(据置きとされていた)(p155〜p156参照)。
 
●【精神科身体合併症管理加算】の算定要件について、「8日以上(ただし一定の上限を設ける)」の点数設定を新たに行う。つまり、同加算は(1)7日以内(450点で据置き)(2)8日以上○日以内(点数は低く設定される見込み)―に区分されることになる(p159〜p160参照)。
 
●『適切な向精神薬使用の推進』に向けて、次のような見直しを行う(p161〜p163参照)。
(1)精神科救急入院料、精神科急性期治療病棟入院料、精神科救急・合併症入院料、精神療養病棟入院料の【非定型抗精神病薬加算2】を削除する。つまり非定型抗精神病薬を3種類以上使用した場合には加算が算定できなくなる。
(2)抗不安薬等を多剤処方した場合の、次のような減算規定を設ける(抗不安薬・睡眠薬、抗うつ薬、抗精神病薬が対象)。
・【精神科継続外来支援・指導料】について、抗不安薬等を一定剤数以上投与した場合には算定できなくする(現在は、3剤以上の抗不安薬等を投与する場合には80%の減算規定がある)
・処方料、処方せん料について、抗不安薬等を一定剤数以上投与した場合の低い点数設定類型を設ける(現在の7種類以上の内服薬投与における処方料29点、処方せん料40点よりも低くなる見込み)
・薬剤料について、抗不安薬等を一定剤数以上投与した場合の減算規定を設ける
 
 「抗不安薬等の一定数以上の投与」では、「7種類以上の内服薬の投与」の減算よりも厳しく設定される見込みだ。
 なお、抗不安薬等の多剤処方による減算については「他院で多剤処方された患者が受診した場合の一定期間」「薬剤を切替える際の一定期間」などは除外対象となる。
 
●【胃瘻造設術】の見直し(点数の引下げや施設基準による厳格化など)に関し、経過措置を設定する(p219〜p220参照)。
 
●「うがい薬のみを処方する場合に保険から除外する(算定できなくなる)点数項目」について、処方料、調剤料、処方せん料に加えて「調剤技術基本料」が含まれることを明確にする(p273参照)。
 
 
◆7対1の見直しや地域包括診療料の状況など検証するよう求める附帯意見
 
 なお、この日は答申における附帯意見についての案が厚労省当局から示された。附帯意見には、「今回(26年度)改定項目のうち影響調査がとくに必要な項目の明示」と「次回(28年度)改定に向けた宿題」という2つの意味がある。
 附帯意見は次のような項目(全部で15項目)で構成されている(p314〜p315参照)。
(1)外来医療について引続き検討する(初・再診料、時間外対応加算等、主治医機能を評価する地域包括診療料等、大病院の紹介率・逆紹介率など)
(2)入院医療について引続き検討する(7対1・10対1一般病棟、ICU、総合入院体制加算、有床診入院基本料、地域包括ケア病棟(現、亜急性期)など)
(3)慢性期入院医療について検討する(療養病棟、障害者病棟、特殊疾患病棟などにおける長期入院も含めて)
(4)在宅医療の推進と介護保険との連携について検討する(機能強化型在支診、在宅不適切事例、歯科訪問診療の診療時間、機能強化型訪問看護ステーションなど)
(5)適切な向精神薬使用の推進を含めた精神医療の実態を調査し、精神医療の推進について検討する
(6)救急医療管理加算の見直し、廃用症候群に対するリハの適正化、維持期リハの介護保険への移行などについて検討する
(7)新薬創出等加算について、真に医療の質向上に貢献する医薬品の研究・開発状況や財政影響について確認・検証し、後発品の薬価のあり方を検討する
(8)残薬確認の徹底と外来医療の機能分化・連携の推進等のため、処方医やかかりつけ医との連携を含めた分割調剤について検討する
(9)医薬品や医療機器等の保険適用の際の「費用対効果評価」の導入について、データ収集や評価対象の範囲、評価の実施体制等を含め、平成28年度改定における試行的導入も視野にいれて検討する
 
 この点、支払側の白川委員から「消費税が10%に引上げられることを想定した検討を行う旨を追記すべき」との提案が行われた。しかし、診療側委員から「仮定の話を附帯意見に盛込むべきだろうか」「消費増税対応を診療報酬改定で行うということにつながってしまわないか」との反対意見が相次ぎ、追記は見送られ、原案通りとすることに決定した。
 
 
 なお、厚労省当局からはパブリックコメント(1月16〜24日に募集)(p3〜p32参照)と公聴会(1月24日に仙台市で開催)(p33〜p45参照)の報告も行われている。

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