[改定速報] 26年度改定に向けて公聴会、災害時には小回りきく有床診が重要

[中央社会保険医療協議会 総会(公聴会)(第269回 1/24)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2014年 01月 24日

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 厚生労働省は1月24日に、宮城県仙台市で中医協総会を開催した。
 この日は「公聴会」という位置づけで、平成26年度診療報酬改定に向けて一般市民からの意見を聴取した。
 
 公聴会は、中医協委員と厚生労働省保険局医療課の担当者が地方に赴き、直接、一般市民の意見を聞くものだ。厚労省では1月16日〜24日にかけてパブリックコメントも募集しており、公聴会で発表された意見と合わせて、審議の参考にする考えだ。
 
 意見陳述に立ったのは10名。中医協でいう診療側に近い立場から5名、支払側に近い立場として5名が意見を発表している。
 
 
◆支払・患者サイドからは「病床機能分化推進」などを求める意見
 
 支払側に近い立場からは、「病床機能分化の推進」「明細書の無料発行推進」「消費増税対応」についての意見陳述が目立った。
 
●経営者の立場から発言したS氏(中小企業経営者)は、リーマンショックや震災による影響で経営状況が依然として低迷している状況を訴えると同時に、厳しい経済状況の中で平成26年度は診療報酬プラス改定が行われる(p32参照)ことを捉えて「医療の効率化・適正化を行い、保険料を納得して納められる環境を整備すべき」と強調した。
 具体的には(1)7対1が多すぎる入院医療提供体制のアンバランス是正(2)平均在院日数の短縮(3)後発医薬品の使用推進(4)外来における機能分担―を行うべきと要望している(p8〜p16参照)(p28〜p29参照)。
 
●被保険者の立場から発言した連合宮城のK氏は、2025年(平成37年)の地域包括ケアシステム構築を目指した改革を進める必要があるとし、次のような見解を表明している。
(1)医療の機能分化を進めると同時に、病院・診療所および医療・介護の連携を進め、質の高い効率的な医療提供体制を構築すべき。入院中のADL低下や褥瘡発生がないようにしてほしい(p14〜p16参照)(p25参照)。
(2)看護師の労働環境を守るために、厚労省が提案している「13対1・15対1における、夜勤72時間要件のみを満たせない場合の特別入院基本料」(p26参照)には反対する。将来的には「夜勤は月8回、64時間以内」とすべきである。
(3)医療の透明化を進めるために、全病院・全診療所での明細書無料発行義務化の期限を定めるべき(p25参照)。
(4)消費増税対応のプラス改定について、「初・再診料においてプラス3%を超える引上げ」(p30参照)には反対である。
 
●健保組合の立場から意見発表したO氏は、「宮城県内の健保組合はすべて赤字である。その一方で医療機関等の経営は比較的安定しており、今回のプラス改定決定(p32参照)は残念である」とコメント。
 具体的な改定内容については、次のような要望を行っている。
(1)7対1病床数を減らし、受け皿となる亜急性期等の拡大を行うなど、超高齢社会にふさわしい医療提供体制を構築すべきである(p8〜p11参照)。
(2)主治医機能については、(1患者に対し)「1医療機関」のみが算定できることを前提に、指導管理等の包括的な評価を行うべきである(p11参照)。
(3)消費増税対応については、患者や支払者が納得できるようにすべき。初・再診料のみの対応では、消費増税以上の負担をすることになり患者等は納得できない。個別項目への配分を行うべきである(p30参照)。
 
●患者の立場から意見を述べたM氏は、自身の薬害体験をもとに次の2点に絞ったコメントを行っている。
(1)明細書無料発行を徹底すべき。これ以上の猶予期間延長には意味がない(p25参照)。
(2)難病患者等に優れた医薬品を提供するためにイノベーション評価は行うべきだが、産業振興のために保険診療が使われることは好ましくない(安全性を軽んじた拙速は避けるべき)。
 
●自治体立医療福祉センターのS氏は、支払・診療双方の立場から発言。S氏は、「病床機能分化と連携強化では、患者情報の共有が不可欠となる。情報の共有にあたってはICT化が必要だ。病床機能分化・連携強化とICT化はセットで行う必要がある」としたうえで、「ICT化のための助成(診療報酬や補助金)」についても要望している(p14〜p16参照)。
 
 
◆診療サイドからは「有床診」「機能強化型訪問看護」などの評価要望出される
 
 診療側に近い立場からは、「有床診」「機能強化型訪問看護」などの機能を十分に評価すべきという意見や、歯科診療における不合理の是正、薬剤師の業務評価を行うべきという要望が出されている。
 
●有床診療所の立場から発言したM氏は、「災害時には、小回りがきき、かつ入院機能を持つ有床診療所の役割が非常に重要であることが、今回の大震災で証明された」旨を強調。一方で有床診への評価は極めて低い。M氏は「非常にやりがいはあるが、後輩医師には有床診の経営を薦めることはできない。外来で出たわずかな利益も、入院医療の維持のためにほとんど消滅してしまう」とし、点数引上げを強く要望している(p11参照)。
 
●中小病院の立場から意見を述べたT氏は、「医政局で検討されている病床機能報告制度と、保険局で所管する診療報酬とで整合性を図る必要がある」とコメント。そのうえで具体的な診療報酬改定内容について次のような要望を行っている。
(1)7対1における特定除外廃止など診療報酬上の機能分化策が行き過ぎないようにすべきである。平成26年度から病床機能報告制度が始まる。機能分化は第1に病院の自主性に任せ、診療報酬でこれをサポートする形とすべきである(p8〜p11参照)。
(2)亜急性期には「在宅患者の急変時」の対応を求めるとしているが、救急医療に対応できるだけの人員配置が必要になる。診療報酬上も相応の評価を行うべきである(p10参照)。
(3)地域包括ケアシステムでは中小病院・診療所が中心的な役割を担うと考えており、システム構築に向けて、いわゆる主治医機能について診療報酬での十分な評価を行うべきである(p11参照)。
(4)厚労省は「連携型の機能強化型在支診等」に新たな要件を設定する考えを示している。しかし、高齢化が進展する中で、在宅医療の重要性はますます高まる。在支診等について量の確保も考慮した対応をすべきである(p12〜p13参照)。
(5)救急医療管理加算について算定要件の厳格化は慎重に検討すべきである(p18参照)。
 
●訪問看護師のU氏は、厚労省が提案する機能強化型訪問看護ステーションを皮切りに、ステーションの大規模化を進めるべきと主張(p13参照)。
 高齢化の進展や平均在院日数の短縮などで、医療・看護必要度の高い在宅患者が増加する中では、訪問看護ステーションに(1)24時間・365日対応(2)看取り(3)重症の患者対応―という機能が求められている。
 しかし小規模なステーションでは夜間や緊急時の対応が困難なことから、訪問看護ステーションの大規模化が必要となる。またU氏は「大規模ステーションが小規模ステーションに入職する訪問看護師の教育・研修を行うことで、地域全体の医療・看護水準が向上する」ことにも期待を寄せている。
 
●歯科診療所の立場からコメントしたS氏は、歯科のみで(1)初・再診料が低く設定されている(2)20分未満の訪問診療が診療報酬上評価されない―ことなどの不合理性を指摘。
 特に(2)については、臨床上まったく合理性がなく、かつ在宅歯科診療を行う歯科医師の意欲を阻害していると強調し、現場目線での診療報酬点数等設定、解釈通知作成を要望している(p13〜p14参照)(p21〜p22参照)。
 
●薬剤師のK氏は、次の2点についてコメントした。
(1)「お薬手帳」の意義・重要性が東日本大震災で再認識された。さらなる定着化に向けて、薬剤師の業務として評価を継続すべきである(p22参照)。
(2)療養病棟・精神病棟における薬剤師の業務について、現在の上限である「4週間」以降も評価を継続すべきである(p26参照)。

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