[改定速報] 平成26年度改定に向け、7対1・亜急性期等見直す骨子案

[中央社会保険医療協議会 総会(第267回 1/15)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2014年 01月 15日

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 厚生労働省は1月15日に、中医協総会を開催した。
 この日は厚労省当局から、これまでの議論を整理した資料が提示された。幾分の修正を行ったうえでパブリックコメントに付すこととなっている。
 また、田村厚生労働大臣から平成26年度診療報酬改定について正式に諮問がなされている(p157〜p165参照)。
 
 
◆7対1等の特定除外制度、激変緩和などおき13対1と同様の見直しを
 
 「これまでの議論の整理(案)」(改定骨子)では、社会保障審議会の医療部会・医療保険部会がまとめた平成26年度改定基本方針(p159〜p165参照)の項目だてに沿って、中医協論議内容が整理されている(p166〜p190参照)。
 
 改定基本方針は、「重点課題(医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実等)」と「4つの視点」で構成される。
 
 前者の「重点課題」では、(1)入院医療(2)外来医療の機能分化・連携の推進(3)在宅医療を担う医療機関の確保と質の高い在宅医療の推進(4)医療機関相互の連携や医療・介護の連携の評価―という4つの柱が立てられている(p168〜p176参照)。
 主要な項目について眺めてみよう。
 
 (1)の「入院医療」では、病床機能分化・強化の実現に向けた大きな一歩が踏み出されている。平成24年度改定においても病床機能分化・強化に向けた平均在院日数の短縮等が行われた(「一体改革に向けた一里塚」と当時の鈴木医療課長がコメント)が、平成26年度改定は社会保障制度改革国民会議の報告書が取りまとめられてから初めての改定であり、より注目度が高まっているといえよう。
 
 病床機能分化・強化の実現にあたっては、まず「7対1・10対1一般病棟入院基本料等」の見直しが行われる。具体的には、次のような項目が掲げられている(p168〜p169参照)。
●特定除外制度について、13対1・15対1と同様の見直しを行う(療養病棟入院基本料の点数を算定するか、出来高算定かつ平均在院日数計算へ組入れるかを病院が選択)
●重症度・看護必要度について、名称を「重症度、医療・看護必要度」に変更し、評価内容を見直す(時間尿測定・血圧測定の削除や、A項目への「抗悪性腫瘍剤の内服」等の追加など)
●短期滞在手術基本料の対象手術を拡大し、一部検査を対象に加えるとともに、包括範囲を含む評価のあり方の見直しや、平均在院日数計算方法の見直しを行う
●総合的かつ専門的な急性期医療を担う医療機関について、一定の実績等のあるところの評価を充実させる
●特定集中治療室管理料や小児特定集中治療室管理料などについて見直しを行う(より診療密度の高い診療体制をもつ医療機関の評価など)
 
 特定除外制度の廃止については、中川委員(日医副会長)が「7対1等では13対1等と異なり、特定除外患者にはがんや脳卒中などの医療必要度の高い患者が多いことが、日医と四病院団体協議会の調査から明らかになっている。13対1等とまったく同様に見直すかどうかについては慎重に検討すべき」旨を主張。
 これに対し厚労省保険局の宇都宮医療課長は「基本的には13対1等と同様に見直す方向で検討が進んでいるが、激変緩和措置の必要性も指摘されている」とコメントするにとどめている。
 
 
 一方、こうした急性期入院医療の見直しによって、医療必要度が一定程度高い長期入院患者が7対1病棟等から退院を余儀なくされるケースも出てこよう。そのための受け皿整備として次のような見直しが検討される(p169〜p170参照)。
(i)療養病棟における「超重症児(者)・準超重症児(者)入院診療加算の算定対象患者拡大」や「在宅復帰率等の高い病棟の評価(加算)の新設」などを行う
(ii)亜急性期入院医療管理料について、評価体系全般の見直しを行う(一定の重症度・看護必要度基準を満たす患者の診療実績、在支病・2次救急病院等の届出等、診療内容に関するデータ提出などを施設基準に盛込むなど)
(iii)回復期リハビリテーション病棟入院料1について、「専従医師・専従社会福祉士配置の評価」「休日リハビリテーション提供体制加算の包括化」「重症度・看護必要度の項目等の見直しを踏まえた、評価のあり方の見直し」などを行う
 
 (ii)の亜急性期について、厚労省保険局医療課の担当者は「新たに、在宅医療機関と連携し、受入れ体制を十分にとるなどしている病院(p172参照)の類型を設けたいと考えている。この新類型病院も亜急性期の対象になるのではないか」と見通している。
 
 また(iii)では、重症度・看護必要度の見直し(p168参照)を行った場合、回復期リハ1の現行要件の1つである「A項目1点以上の患者が15%以上」を満たすことがこれまで以上に難しくなることが予想されるため、厚労省保険局医療課の担当者は「15%要件を緩和することも考えられる」とコメントしている。
 ちなみに亜急性期に関する論議の中で、回復期リハ1と同様に「重症度・看護必要度A項目1点以上の患者が一定以上」という要件を盛込んではどうかとの提案がなされていた。回復期リハ1の「A項目1点以上の患者が15%以上」要件が動けば、亜急性期論議にも影響が出てくることになろう。
 
 
 さらに、平成24年度改定で導入した「医療資源の乏しい地域の実情に配慮した評価」については、対象医療圏を維持したうえで、「亜急性期入院医療管理料の要件緩和」「チーム医療等に関する専従要件等の緩和」などを行う(p170〜p171参照)。
 
 また、有床診療所について、「緊急時の受入れに着目した看護配置加算等の評価の見直し」「複数の機能を担う場合の評価の見直し」などを行うとともに、管理栄養士配置の施設基準化を取りやめる(加算の再設定)ことや、他の医療機関等と連携した栄養管理指導を行った場合の評価新設などを行う(p171参照)。
 
 
◆中小病院・診療所における全人的医療を包括評価へ
 
 (2)の外来については、次のような見直しを行うことで機能分化を進めたい考えだ(p171〜p172参照)。
(i)中小病院・診療所の医師が、複数の慢性疾患を抱える患者に対し、適切な専門医療機関と連携することで、継続的かつ全人的な医療を行うことを評価する
(ii)特定機能病院・一般病床500床以上の地域医療支援病院の紹介率・逆紹介率要件を厳しくする(たとえば、いずれも50%以上でない場合には初診料・外来診療料を減額する)
(iii)(ii)以外の500床以上の病院についても、紹介率・逆紹介率要件を導入する
(iv)紹介率・逆紹介率の低い大病院について、長期投薬の適正化を検討する
 
 
 (3)の在宅医療の推進に向けては、次のような非常に幅広い見直しが行われる模様だ(p172〜p174参照)。
●機能強化型の在支診・病について、実績要件を見直す(連携型についても、個別医療機関の実績基準を新設する)
●機能強化型ではないが、十分な緊急往診・看取り実績をもつ在支診・病に対する評価を新設する
●急変時の対応を充実させるため、在宅医療を担う医療機関と連携し、緊急時に常時対応し、必要があれば入院を受入れる体制を敷き、共同して診察を行う病院に対する評価を新設する
●保険診療上不適切と考えられる在宅医療を行っている医療機関を是正するため、在宅時医学総合管理料等について、同一建物における同一日の複数訪問時の点数新設などを行う(適正化)とともに、保険医療機関等が経済的誘引により不適切に患者紹介を受けることを禁ずる(療養担当規則等の見直し)
●24時間対応、ターミナルケア、重症度の高い患者の受入れ、居宅介護支援事業所の設置などを行う機能の高い訪問看護ステーションを評価する
●在宅自己注射指導管理料について、実態を踏まえた評価の見直しを行う
●在宅を中心に訪問歯科診療を実施している歯科診療所の評価を行う
●在宅業務に十分に対応している薬局を評価するとともに、24時間調剤等の体制等を考慮した基準調剤加算の算定要件見直しなどを行う
 
 
 また(4)の連携推進においては、脳血管疾患等・運動器の維持期リハ(ただし要介護被保険者が対象)の介護保険への移行を進めるために「評価の適正化」を行うが、経過措置を「原則として次回改定までに限り延長する」ことが明確にされている(p174〜p176参照)。
 
 
◆急性期病棟においてもリハ専門職配置してADL低下を予防
 
 基本方針における「4つの視点」は、平成18年度改定から継続(もちろん内容は不変ではない)しているもので、いわば医療現場の課題を診療報酬による経済的誘導で解決するための方策といえる。
 26年度改定における「4つの視点」は、次のとおり(p176〜p190参照)。
(I)充実が求められる分野を適切に評価していく視点
(II)患者等から見て分かりやすく納得でき、安心・安全で質の高い医療を実現する視点
(III)医療従事者の負担を軽減する視点
(IV)効率化余地がある分野を適正化する視点
 
 
 それぞれについてポイントを絞って見ていこう。
 まず(I)の充実する分野については、(1)緩和ケアを含むがん医療(2)精神疾患に対する医療(3)認知症対策(4)救急医療、小児医療、周産期医療(5)リハビリテーション(6)歯科医療(7)的確な投薬管理・指導(8)手術等の医療技術(9)医薬品、医療機器、検査等におけるイノベーションの適切な評価(10)DPCに基づく急性期医療の適切な評価―という幅広い分野が対象になっている(p176〜p184参照)。
 
 このうち(2)の精神疾患については、次の見直し項目が目立つ(p176〜p178参照)。
●精神科急性期治療病棟入院料について、医師を重点的に配置した場合の評価新設(16対1の医師配置評価など)
●急性期の精神疾患患者に対するチーム医療を推進し、早期退院を促すため、統合失調症・気分障害の患者に対して計画(クリティカルパス)に基づいて医療を提供した場合の評価新設
●精神療養病棟入院料・精神病棟入院基本料について、精神保健福祉士を配置した場合の評価新設
●24時間体制の多職種による精神疾患患者への在宅医療の評価新設
●精神科救急・合併症入院料について、精神科単科病院からの受入れ患者でも算定可能とする
●通院・在宅精神療法等について、向精神薬を多剤処方した場合についての適正化
 
 
 また(3)の認知症対策では、「重度認知症加算の見直し(算定期間を1ヵ月程度に短縮)」「短期の集中的な認知症リハビリテーション評価の新設」などが行われる(p178参照)。
 
 
 (4)の救急医療については、「救急医療管理加算の評価」見直しが大きな項目となろう。これまでの議論では、対象患者のうち「(意識障害などに)準ずるような状態」について厳しい見直しを行ってはどうかとの意見が目立つ(p178〜p179参照)。
 
 
 (5)のリハビリについては、既に述べた「回復期リハビリテーション病棟入院料1」の見直し等のほか、次のような見直し項目が提案されている(p179〜p181参照)。
●急性期病棟において、リハビリスタッフの配置等評価を新設する
●疾患別リハの初期加算等について、一部の疾患(地域連携パスの評価対象である脳卒中と大腿骨頸部骨折を想定)に関する評価のあり方を見直す
●廃用症候群に対するリハの対象患者明確化等に向けた見直しを検討する
 
 
 このほか(6)の歯科では「著しく歯科診療が困難な者に対する歯科診療を評価するための歯科診療特別対応連携加算の施設基準見直し」「歯周病安定期治療の評価体系の歯数単位への見直し」「根管治療の実態にあわせた適正な評価」など(p181参照)を、(7)の投薬管理・指導では「お薬手帳を必要としない患者に対する薬剤服用歴管理指導料の評価見直し」など(p182参照)を行うことになる。
 
 なお(7)の投薬管理・指導において、厚労省当局は「特定機能病院等において、長期処方された場合の、あらかじめ定められた日数の分割調剤の試行的導入」を検討するとしていた(p182参照)。
 しかし、このテーマについては数多くの論点が含まれ、議論が十分になされていないことから、28年度改定以降のテーマとすることが確認されている。
 
 
 また(10)のDPCについては、「後発品の使用割合に基づく評価指数の導入」「算定ルール(3日ルール、持参薬)の見直し」などが検討される(p183〜p184参照)。
 
 
◆後発品使用をさらに促進し、保険医療の効率化を
 
 (II)の患者から見て分かりやすい医療等の実現に向けては、次の3分野について見直し案が提示されている(p184〜p185参照)。
(1)患者に対する相談指導、医療安全対策、明細書無料発行、患者データ提出等の推進
(2)診療報酬点数表の平易化・簡素化
(3)入院中のADL低下の予防と褥瘡対策
 
 このうち(3)では、褥瘡対策を進めるための基礎データ収集を行うために「医療機関に褥瘡の発生状況等報告を求める」ことなどが打出されている(p185参照)。
 
 
 (III)の医療従事者の負担軽減は、24年度改定では「重点課題」にあげられた重要項目だ。具体的には、次のような提案が行われている。
(1)救急外来の機能分化を含む医療従事者の負担を軽減する取組の評価(交代勤務制の実施などを行う場合等の評価充実や、夜間における看護補助者の評価充実、13対1・15対1における夜勤72時間要件のみ満たせない場合の特別入院基本料創設、医師事務作業補助者のさらなる評価など)(p185〜p186参照)
(2)チーム医療の推進(療養・精神病棟における病棟薬剤業務実施加算の算定制限4週間の見直しなど)(p186〜p187参照)
 
 (1)の「夜間における看護補助者の評価充実」に関連し、福井専門委員(日看協常任理事)は「より専門性の高い看護職の夜間配置評価について充実すべきではないか」と主張。これに対し厚労省の宇都宮医療課長は「第1段階として看護補助者の評価充実を行う」旨を説明したが、夜間における看護師の獲得競争発生を懸念していると捉える向きもある。
 
 
 (IV)の効率化については、「後発品の使用促進」「長期収載品薬価の特例引下げ」「大規模薬局の調剤報酬の適正化等」などが掲げられている(p188〜p189参照)。
 このうち大規模薬局については、24時間の調剤体制を敷いている薬局を除き「処方せん枚数、特定の保険医療機関に係る処方せんによる調剤の割合等に着目した評価の見直し」を推進していくもの。さらに、価格妥結率に着目した評価も検討される。
 
 
 このような骨子の内容については、委員から一部修正(項目の削除を含む)を求める意見が出され、修文のうえでパブリックコメントに付されることになる(p208〜p221参照)。
 
 
◆消費増税対応の改定内容、事後に検証・追跡できるような工夫を
 
 消費増税対応のプラス改定については、下部組織である「医療機関等における消費税負担に関する分科会」から報告が行われた(p191〜p207参照)。
 そこでは、たとえば医科診療所について「初診料・再診料をそれぞれ12点・3点引上げる」案1と「初診料・再診料をそれぞれ8点・2点引上げる」案2が提示されるなどし、委員からさまざまな意見が出されたことが報告されている。
 この点、診療所の初・再診料をどの程度引上げるかについて、支払・診療双方の意見は大きく隔たっており、今後の調整論議を待つ必要がある。
 
 なお、厚労省保険局医療課の竹林保険医療企画調査室長は「事後に消費増税対応部分の追跡・検証を行う点についての指摘もあり、通常改定部分と消費税対応部分とで点数の上げ下げが分かるように工夫することになるのではないか」と見通している。
 たとえば、●●入院料については、「通常改定によって●点引上げられ、さらに消費増税対応によって●点引上げられる」という具合に示されると考えられよう。
 
 
◆バセドウ病等に対する内視鏡下頸部両性腫瘍摘出術などを先進医療に
 
 このほか総会には、先進医療会議から、新たな先進医療(保険診療との併用を認める)7件が報告されている(p3〜p138参照)。このうち(1)〜(4)は比較的安全性の高い先進医療A、(5)〜(7)は比較的リスクの高い先進医療Bである。
(1)難治性ウイルス眼感染疾患(ヘルペス性角膜内皮炎など)に対する包括的迅速PCR診断
(2)難治性細菌・真菌眼感染疾患に対する包括的迅速PCR診断
(3)甲状腺皮膜浸潤を伴わず、画像上明らかなリンパ節腫大を伴わない甲状腺癌に対する「内視鏡下甲状腺悪性腫瘍手術」
(4)甲状腺良性腫瘍、バセドウ病及び副甲状腺機能亢進症に対する「内視鏡下頸部良性腫瘍摘出術」
(5)特発性肺線維症の急性増悪患者に対する「トレミキシンを用いた血液浄化療法の有効性及び安全性に関する探索的試験」
(6)早期胃癌(術前診断T1NOMO、腫瘍長径4cm以下、単発性)に対する「センチネルリンパ節を指標としたリンパ節転移診断と個別化手術の有用性に関する臨床試験」
(7)ジアゾキサイド不応性先天性高インスリン血症(高インスリン血性低血糖症)に対するオクトレオチド持続皮下注射療法
 
 
 なお、成長戦略(日本再興戦略)等の一環として打出された「医療上必要性の高い抗がん剤に関する、先進医療としての評価の特例」について報告がなされている(p139〜p151参照)。
 これは、ドラッグ・ラグの解消に向け、医療上必要性の高い抗がん剤について外部評価機関(国立がん研究センター)で先進医療の技術評価を行うというもの。

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