[改定速報] 消費増税対応、医科再診料は71点案と72点案を中医協で議論へ

[診療報酬調査専門組織 医療機関等における消費税負担に関する分科会(第10回 1/8)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2014年 01月 08日

» この記事を書いたメディアのページへ
 厚生労働省は1月8日に、診療報酬調査専門組織の「医療機関等における消費税負担に関する分科会」を開催した。
 この日は、平成26年度診療報酬改定率(消費税率引上げ対応分)を踏まえた財源配分等が議題となった。
 議論内容は近く中医協総会に報告され、診療報酬本体部分の改定内容とセットで議論される模様だ。
 
 年末の予算編成過程で、消費増税対応分の診療報酬プラス改定率として「プラス1.36%」が確保されたことはすでにお伝えしたとおりだ。内訳は、診療報酬本体がプラス0.63%(約2600億円)、薬価等がプラス0.73%(約3000億円)である(p3参照)。
 
 診療報酬本体をより細かくみると、医科がプラス0.71%(約2200億円)、歯科がプラス0.87%(約200億円)、調剤がプラス0.18%(約100億円)となっている(p3参照)(p13参照)。
 さらに、医科の約2200億円については、消費増税への影響を考慮し、医療費と課税経費率に応じて、診療所に約600億円、病院に約1600億円が配分される見通しだ(p4参照)。
 
 今後は、この財源をもとに具体的な診療報酬点数に配分していくことになるが、厚労省はこの日、配分にあたっての論点を提示している(p5〜p11参照)。
 もっとも具体的な点数設定は、最終的に中医協総会で議論することになるため、この日の分科会論議で「決着」したわけではないことに留意が必要だ。
 
 
 厚労省が提示した論点は8つあるが、本紙では次の3つにまとめて見ていくこととしよう。
1.診療所(医科、歯科)、保険薬局への対応
2.病院への対応
3.薬価・医療材料における消費増税対応分の表示
 
 
◆消費増税対応、基本診療料のみですべきか?個別項目と組合わせるべきか?
 
 1の「診療所等への対応」では、大きく(1)初・再診料のみならず個別診療報酬項目を組合わせて対応する(2)原則として初・再診料や調剤基本料のみで対応する―という2つの考え方が示された。
 両案をめぐっては、診療側委員と支払側委員の意見が大きく対立し、議論は紛糾している。
 
 まず、医科、歯科、調剤について示された案を整理してみよう。
●医科診療所(p6参照)
(1案)初診料を8点(278点にアップ)、再診料を2点(71点にアップ)、有床診入院基本料を2%程度、引上げる
(2案)初診料を12点(282点にアップ)、再診料を3点(72点にアップ)、有床診入院基本料を2%程度、引上げる
●歯科診療所(p10参照)
(1案)歯科初診料を10点(228点にアップ)、歯科再診料を2点(44点にアップ)引上げる
(2案)歯科初診料を16点(234点にアップ)、歯科再診料を3点(45点にアップ)引上げる
●調剤薬局(p10参照)
(案)調剤基本料(処方せん受付け回数等により40点または24点)を、それぞれ1点引上げる(それぞれ41点、25点にアップ)
 
 (1案)は、上記のように「基本診療料と個別点数項目(消費増税の影響が大きいと考えられる検査料など)」の組合せで対応しようというもの。基本診療料引上げに配分財源の3分の2程度(医科では約400億円)が投入され、残りの3分の1(同約200億円)を個別項目に充てるものである(p6参照)(p10参照)。
 一方、(2案)では、配分財源のほとんど(医科では約600億円)を基本診療料引上げに使うことになる(p6参照)(p10参照)。
 また、調剤における(案)でも、配分財源の大半が基本料引上げに充てられる(p10参照)。
 
 
 これに対し支払側委員は「平成25年9月に行った中間整理(p15〜p20参照)では『基本診療料等への上乗せによる対応を中心としつつ、個別項目への上乗せを組合わせる形で対応する』としていた(p17参照)が、(2案)では個別項目への対応は難しい。これまでの議論を無視するものである」と述べ、(2案)を示した厚労省当局を強く批判している。
 とくに白川委員(健保連専務理事)は、「(2案)では再診料が3点引上げられ、これは消費増税分を遥かに超える引上げ率となる。これでは患者サイドは納得できない。厚労省当局は、個別項目について本当に検討しているのだろうか」と主張。
 また、小林委員(全国健康保険協会理事長)は「医療現場の負担増に対し完全に公平には対応できず、一定の割り切りは必要だが、診療報酬引上げ・消費増税で負担が増える患者・国民の視点に立って、医療現場の実態に沿う(消費税負担の重いところに重点対応)ようにすべき」と要望している。
 
 一方、診療側委員はこぞって(2案)を推す。
 その論拠として今村委員(日医副会長)は、「消費増税により控除対象外消費税の負担が増加する医療機関には個別対応が必要である点は承知している。しかし、個別点数での対応は、過去の経緯からも分かるように、その後の診療報酬改定で引上げ項目が消滅しているものすらあり、事後の検証が困難になる。さらに個別項目での対応では、どれほど細かく行っても医療機関の不公平が生じてしまう。消費税率8%は過渡的とされており、シンプルに全医療機関等を救済するものとすべきであろう」と述べ、消滅が考えにくく、シンプルな「初・再診料の引上げ」が好ましいと主張している。
 また西澤委員(全日病会長)も、「さまざまな個別診療報酬項目への上乗せを検討したが、どうやっても不合理が出てしまう。基本診療料である初・再診料への上乗せが、もっとも医療現場の理解を得られる。白川委員の主張も理解できるが、そこは医療機関や厚労省が説明していくことで対応できるのではないか」とコメントしている。
 このほか、堀委員(日歯常務理事)や森昌平委員(日薬常務理事)も同旨の見解を述べている。
 
 また、公益代表という立場の関原委員(日本対がん協会常務理事)や石井委員(石井公認会計士事務所所長)は「全体としてみると(2案)も不合理なものではない」と述べ、診療側委員に近い見解のようだ。
 
 こうした議論を受け、田中分科会長(慶大大学院教授)は「診療側は現実論、支払側は筋論を展開していると感じる。ここで意見をまとめることはせず、中医協総会に『こういった意見が出ている』と報告することとしたい」と締めくくっている。
 
 
◆病院、有床診の入院料、平均で2%弱程度の引上げに
 
 次に2の「病院への対応」について見てみよう。
 平成25年9月の中間整理では「まず初診料・外来診療料を診療所と同様に引上げ、残った財源を入院料等の引上げに配分する」方針が打出されている(p17参照)。
 
 これに沿って厚労省当局は、次のような論点を示している。
(1)初診料・外来診療料を上記の(2案)と同様に引上げた場合、約1400億円が入院料引上げに配分され、入院料は平均的に見て2%弱程度引上げられる(p6参照)
(2)外来診療料の引上げについて、(2案)と同様に「3点引上げる」考え方と、「再診料と同額に揃えるため2点のみ引上げる」考え方がある(p7参照)
(3)データ収集が十分ではない入院料(専門病院、特殊疾患病棟、特定一般病棟など)については、一般病院全体の課税経費率を用いて引上げ幅を設定する(p7参照)(p12参照)
(4)DPCについては、点数に組込まれている入院料や医薬品等が異なるため、個別のDPC点数ごとに上乗せ額を計算する(p8参照)
(5)薬価が包括されている入院料については、医薬品費に関する消費税対応財源を配分財源に含めて計算する(p8参照)
 
 
 こうした考え方に大きな反論はでなかった。
 ただし(2)について、伊藤伸一委員(日本医療法人協会副会長)から「外来診療料は再診料と異なり、一部の検査・処置が包括されていることから、1点高い点数が設定されている。再診料と同点数に揃える意味はない」と述べ、上記(2案)と同じく3点の引上げを求めている。
 
 ところで入院料については、種類に応じて課税経費率が若干異なり、たとえば一般病棟では平均25.7%だが、特定機能病院では平均33.5%という具合だ(p12参照)。ちなみに、課税経費率が高いとは、消費増税による持出し(医療機関の負担)が増加することを意味する。
 したがって入院料の引上げ額は、種類ごとの課税経費率やシェア(財政影響)を考慮しながら、「一般病棟では○点、療養病棟では▲点、特定機能病院では■点」などといった具合に個別に設定されることになろう。
 
 
 なお、訪問看護管理療養費についても上記と同様の考え方に立った引上げが行われる見通しだ。具体的な引上げ額等は、今後計算されることになる(p9参照)。
 
 
◆明細書の欄外に「薬価等には消費税分が含まれている」旨の表示を
 
 3の「薬価等における消費増税対応分の表示」は、「診療報酬本体と異なり、医薬品等については薬価・材料価格の中に消費税分が加味されている」ことを医療関係者・患者・国民に周知することが議論の出発点だ。
 
 この点、厚労省当局は次の2つの対応を行ってはどうかと提案している(p11参照)(p14参照)。
(1)医療機関等が患者に発行する明細書の欄外に「薬価・医療材料価格には、消費税相当額が含まれている」旨を記載する
(2)用語が一般国民には分かりにくいことを踏まえ、「詳しくは厚労省ホームページで」といった旨もあわせて記載する
 
 診療側の今村委員や西澤委員は、厚労省提案の方向はよしとしたものの「さらなる工夫(文言の工夫や、領収書への記載など)をしてほしい」と要望。
 また、今村委員は「医療機関と医薬品・医療機器卸業者との取引で混乱が起きないような配慮もしてほしい」とコメントしている。
 
 こうした要望に対し、厚労省保険局医療課の竹林保険医療企画調査室長は「どのような対応ができるか検討してみる」とコメントするにとどめている。
 後者については、いわば「民間の取引に国が介入する」こととなる可能性もあり、慎重に検討されることになろう。

関連資料

※資料をご覧いただくためには、ログインが必要です。
mail   pass

mail
pass

医時通信について

よくある質問