[改定速報] 「うがい薬のみ処方された場合」の保険適用除外案、委員は反論

[中央社会保険医療協議会 総会(第266回 12/25)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 12月 25日

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 厚生労働省は12月25日に、中医協総会を開催した。
 この日は、これまでの宿題事項等について議論したほか、各側からの見解発表、DPC評価分科会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会からの報告受領など、非常に幅広い内容について検討を行った。
 今回で年内の中医協開催は最終となり、ほぼすべての改定内容が出揃ったことになる。年明けからは、いわゆる「短冊」(点数部分を空欄にした項目ごとの新点数表)が五月雨式に出され、それに基づいた議論を行う。
 新点数表の確定は2月上旬となる見込みだが、それに先立つ1月24日に宮城県仙台市で公聴会が開かれることが決まっている(p293参照)。
 
 
◆「うがい薬のみ処方された場合」の保険適用除外案、委員からは反論
 
 これまでの宿題事項等として議題にあがったのは、実に14項目にのぼる(p178参照)。
 単なる「こういった資料を出して欲しい」という委員の要望にこたえたものから、「新たな提案」にいたるまでバラエティに富んだ内容だ。本紙では、「新たな提案」を中心に見ていこう。
 
 まず、(1)平成24年度改定で新設された【糖尿病透析予防指導管理料】について、一定の効果(血圧で69.1%、HbA1cで66.0%、腎機能で60.5%の「改善または維持」)があるとし、厚労省は「評価の継続」を提案している(p188〜p193参照)。
 この提案については、支払側委員から「6〜7割の改善と『維持』が効果といえるのか疑問」との指摘もあったが、診療側の鈴木委員は「現場では点数設定によって大きな効果を感じている。対象は『糖尿病性腎症第2期以上の患者』と限定されており、透析移行を予防するチームの指導管理等を評価するもので、非常に重要だ」と主張。
 結果として評価の継続は了承された格好だ。
 
 次に(2)平成24年度改定で新設された【患者サポート体制充実加算】について、一定の効果(患者の9割程度が満足している)があるとし厚労省は「評価の継続」を提案した(p194〜p202参照)。
 この提案は異論なく了承されている。
 
 また(3)「がん専門病院7対1」(専門病院入院基本料7対1を届出る病院のうち、悪性腫瘍患者を一般病棟に7割以上入院させている)については、現在、看護必要度の高い患者割合は「10%以上」とされているが、新たな基準(重症度、医療・看護必要度)の導入に伴い「15%以上」に厳格化してはどうかと厚労省が提案している(p211〜p214参照)。
 この提案も特段の注文なく了承された。
 
 (4)精神科の訪問診療においては、1回あたりの診療時間が著しく長い(30分以上が76.4%、60分以上が36.6%)が、【通院・在宅精神療法】は「30分以上」と「30分未満」の区分しかない。そこで、厚労省は「在宅での診療時に長時間の精神療法を行った場合を評価してはどうか」と提案している。【通院・在宅精神療法】により長時間の区分を設けるイメージであろう(p227〜p235参照)。
 この提案について、診療側の長瀬委員(日精協会長)は歓迎の意を表した。一方、支払側の白川委員は「精神科の訪問診療を行う医師が少ないことが大きな課題として存在するが、今回の見直し案は決定打とは考えられない。今後も引続き検討すべき」との要望を行ったうえで本提案を了承している。
 
 (5)同じく精神科において【精神科身体合併症管理加算】は、現在1回について7日までしか算定できないが、「精神疾患患者においては、呼吸器系疾患や感染症などの身体合併症治療に長期間を有する」ことが知られている。このため厚労省当局は「本加算について、1回あたりの算定可能日数を伸ばしてはどうか」と提案している(p236〜p243参照)。
 具体的な日数は今後の検討を待つ必要があるが、厚労省保険局の宇都宮医療課長は「10日、あるいは15日」という例示を行っており、参考にすることができよう。
 この提案に対しては、白川委員から「全快まで加算を算定すべきという提案であろうか。そうであれば納得できない。より精緻なデータ(急性期を脱するまでに必要な日数など)を提示してほしい」との注文がついており、保留状態だ。
 
 (6)医療機関や薬局において、医薬品卸との間で価格交渉が成立していない(未妥結)状態が少なくないという指摘がある。厚労省調査によれば、妥結率は200床以上の病院で50.2%、20店舗以上のチェーン薬局で51.9%など、低いところも目立つ。
 このため厚労省当局は、(i)妥結率を地方厚生局に届出させる(ii)低い妥結率となっている場合には、診療報酬上の基本料の引下げなどの対応を検討する―という提案を行っている(p244〜p250参照)。
 この提案には、方向性に異論は出なかったものの、「基本料減算は厳しいのではないか(鈴木委員)」「医薬品卸による法外な高価格維持が生じる可能性がある(三浦委員:日薬理事)」などの異論も出ている。
 また、厚労省医政局の城経済課長は「妥結率が低い医療機関では、単品単価にしようという方向にある」ことも説明している。
 この点、もう少し調整が必要な状況のようだ。
 
 (7)改定率決定時にも言及された「うがい薬のみを処方する場合」を保険の対象から除外してはどうかという提案が行われている(p251〜p252参照)。
 一般用薬と類似した医療用医薬品を保険適用から除外する方策の1つで、行政刷新会議などから強い要望が出されているものだ。
 この提案に対しては、診療側委員がこぞって反対。また、支払側委員も「提案内容の是非は別として唐突である。保険から除外すべきという根拠データなどを示して提案すべきである」とコメント。
 今後、改めて検討することとなった。
 
 (8)【基準調剤加算】について、在宅療養を支援する薬局が算定するものとの方向に進むことを期待し、要件に「24時間調剤可能な体制」「在支診・病、訪問看護ステーションとの連携体制」「ケアマネとの連携体制」を加えてはどうかと厚労省が提案(p253〜p257参照)。
 この提案については、診療側の安達委員(京都府医師会副会長)から「調剤報酬における加算等については、より根本的な見直しが必要と考える。医科・歯科・調剤の診療報酬について一覧表をつくり、時間をかけて(次回改定に向けて)整合性などの議論をすることを求める」との要望が出されている。
 もっとも提案内容自体は否定されていないと考えられる。
 
 さらに(9)【薬剤服用歴管理指導料】について、平成24年度改定で「お薬手帳を持参しなかった患者に対するシール交付」を認めるなどの見直しが行われた。
 しかし、この対応への批判(後にシール貼付を確認していないなど)も強く、厚労省当局は(i)お薬手帳による情報提供不要患者には、新たな薬剤服用歴管理指導料(低額)を設定する(ii)【薬剤服用歴管理指導料】においてシール交付を認めない―という見直しを行うことを提案している(p258〜p267参照)。
 この点、白川委員からは「(i)などお薬手帳を交付しない場合は、加算算定を認めるべきではない」などのコメントが出されている。
 
 
 このほか、「総合入院体制加算については、大阪でもっとも届出病院が多く29病院、次いで福岡16病院、広島14病院という状況。また、厚労省の提案するスーパー急性期病院(人工心肺手術件数など望ましい条件をすべて満たす)は、大阪3病院、千葉・富山・長野・岐阜・広島・高知・福岡・長崎の各1病院(合計11病院)」(p187参照)などの資料が厚労省当局から提示されている(p179〜p267参照)。
 
 
◆年明けの集中討議に向け、支払・診療各側から意見発表
 
 この日は、今後の議論(年明けの、より具体的な点数改定論議)に向けて、支払・診療各側から意見提示がなされている。
 各側の意見の中で目立つ部分をピックアップすると、次のように整理できる。
 
【支払側(1号側)意見】(p268〜p275参照)
●限りある財源を効率的かつ効果的に配分することを主眼とし、高度急性期から急性期、亜急性期、慢性期に至る病床の役割を明確化したうえで機能に応じた評価を行うとともに、一般病床における長期入院の是正による入院期間の短縮、社会的入院の解消、主治医機能の強化による外来受診の合理化・効率化、後発医薬品の使用促進等、全体としての医療費適正化を図るべき
●慢性期医療については、社会的入院を是正する観点からも療養病棟の評価は在宅復帰率を要件に組込む必要がある
●7剤ルール(7剤以上の医薬品を処方等した場合の減額)は堅持すべき
●在支診・病については、対象となるすべての医療機関(連携型も)に対し、体制整備にとどまらず緊急往診や看取りの件数といった実績を十分に上げることを求めるべき
●治療または検査方法が標準化されている短期間の入院については、1入院包括とすべき
●病棟薬剤師の評価について、療養病棟・精神病棟の加算期間の延長は慎重に検討すべき
●13対1、15対1一般病棟などにおいて、看護師の月平均夜勤時間のみを満たせない場合の減額措置創設は行うべきではない
●調剤基本料と各種加算の包括化を推進すべき
 
【診療側(2号側)意見】(p276〜p287参照)
●診療所や中小病院に対する十分な財源配分をすべき
●診療所・中小病院の再診料の水準を平成22年度改定前の水準に戻すべき
●外来診療料を再診料と同一にして、検査・処置等の包括化をやめるべき
●入院基本料について、看護職員配置数により格差がつく評価体系を改め、医療機関の設備投資・維持管理費用について明確に評価し、多種の医療従事者の人件費についても適切に評価すべき
●入院患者の他医療機関受診の取扱い(減額方式)を撤廃すべき
●介護報酬よりも低い有床診療所の入院基本料の引上げを行い、不合理を是正すべき
●看護職員の確保、医療・看護の質確保のために、夜勤72時間ルールを加算に変更すべき
●亜急性期において、在宅患者・施設入所者等の急性増悪患者を受入れる場合、急性期対応の評価を行うべき
●がん登録推進法に伴う診療報酬上の評価を行うべき
●7種類以上の内服薬投与時の処方料等の減算を廃止すべき
●手術、処置において使用された医療材料等は別途算定可能とし、「もの」と「技術」の分離を明確にすべき
●歯科においてのみ低い初・再診料の引上げを行うべき
●煩雑な留意事項通知について、臨床医の裁量を確保する方向で整理すべき
●地域に根ざしたかかりつけ薬剤師、かかりつけ薬局機能の評価を行うべき
 
 
◆DPC、薬価、材料価格の見直し案について了承
 
 この日は、下部組織であるDPC評価分科会、薬価専門部会、材料専門部会からの報告も行われた。
 薬価(p171〜p176参照)と材料価格(p166〜p170参照)については、別途、専門部会の状況をお伝えしているので、そちらをご覧いただきたい。
 
 DPC制度改革については、12月13日の総会でも報告が行われたが「後発医薬品指数の評価方法について、後発品割合60%を超える病院を高く評価してはどうか」「再入院ルール(いわゆる3日ルール)の見直しにあたり不都合がないか再検証してはどうか」という注文がついていた。
 DPC評価分科会では、この点を検証し「原案が妥当」との結論を導いている。この日は、小山分科会長(東邦大医学部特任教授)から改めて報告が行われ、細部の文言を除き了承されている(p36〜p165参照)。
 
 
◆体外診断薬の保険適用ルールを一部修正、利便性アップはE3評価に
 
 この日は、体外診断用医薬品の保険適用ルールについての見直し提案も行われた(p30〜p35参照)。
 現在、体外診断用薬の保険適用では、(1)測定項目、方法ともに既存の品目であるE1(既存)については、「既存項目と同じ点数」(2)測定方法が新たなE2(新方法)については、「既存項目を準用して保険適用するが、改定時に新たな点数設定はしない」(3)測定項目が新たなE3(新項目)については、「既存項目を準用して保険適用し、改定時に新たな点数設定をする」―という3区分としている(p32参照)。
 
 しかし「新項目ではないが、感度・特異度が向上したり、検査時間が大幅に短縮するなど、利便性がアップした場合には、E3と同様に、改定時に新点数を設定することが好ましいのではないか」との指摘がある(p33参照)。
 このため、厚労省は上記のE3を「新項目、改良項目」とし、(i)測定項目が新しい項目(ii)技術改良等により臨床的意義、利便性の向上等を伴う既存検査項目―を対象としてはどうかと提案(p34〜p35参照)。
 
 これに対し、鈴木委員(日医常任理事)から「利便性の向上などは定量的基準を設けるべき」との注文がついたが、これを将来的な検討課題とすることを前提に提案は了承されている。
 
 
 なお、新たな臨床検査(平成26年1月収載予定、いずれも新項目)として、次の3件が承認されている(p23〜p29参照)。
●血漿または全血中のプレセプシンの測定(敗血症(細菌性)の診断補助)のための、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)による『プレセプシン定量検査』(320点)
●鼻咽頭拭い液または鼻腔吸引液中のヒトメタニューモウイルス抗原の検出(ヒトメタニューモウイルス感染の診断の補助)のための、免疫クロマト法による『ヒトメタニューモウイルス抗原定性検査』(150点)
●血清中の抗ARS抗体の検出(多発性筋炎・皮膚筋炎の診断の補助)のための、ELISA法による『抗ARS抗体検査』(190点)
 
 
 
 一方、新たに保険適用とすることが認められた医療機器(平成26年4月に保険収載予定)は次のとおりである(p3〜p22参照)。
【区分C1(新機能)】
●肩関節の関節面を全置換するための全人工肩関節である『エクリス・リバース人工肩関節』(バイオジェネシス社)
 
【区分C2(新機能・新技術)】
●連続グルコースモニタリングシステムに用いられるセンサである『メドトロニックiPro 2』と、センサに接続して使用するトランスミッタである『メドトロニック ミニメド 600シリーズ』(いずれも日本メドトロニック社)
●歯科矯正治療において、矯正力付与のための固定源として使用するチタン合金製ミニスクリューである『イミディエート・サージカル・アンカーAdvance』(プラントジャパン社)
●尿失禁を伴う過活動膀胱患者の症状改善を目的として、骨盤底領域の神経に磁気刺激を与える装置である『磁気刺激装置TMU-1100』(日本光電社)

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