[改定速報] 新薬創出等加算の制度化は見送り、26年度以降も試行継続に

[中央社会保険医療協議会 薬価専門部会(第98回 12/18)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 12月 18日

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 厚生労働省は12月18日に、中医協の薬価専門部会を開催した。
 この日は、平成26年度薬価制度改革の骨子(たたき台)が厚労省当局から示され、これに基づいて議論を行った。骨子は一部を除き概ね了承されており、次回会合で薬価制度改革案を固めたい考えだ。
 
 平成26年度薬価制度改革のポイントは、『特許期間中の革新的新薬の適切な評価』と『特許の切れた新薬の後発品への置換え』の大きく2点。
 前者は「新薬創出・適応外薬解消等促進加算の制度化」という形で、後者は「後発品への置換えが進まない長期収載品の価格引下げルールの創設」という形で提案されている。
 
 両者は製薬メーカーの経営にとって陰と陽の関係にあり、セットで考える必要がある。
 まず、後者の長期収載品価格引下げルールから見てみよう。
 
 
◆後発品への置換えが進まない長期収載品、置換え率に応じて価格引下げ
 
 長期収載品については、通常の薬価改正(市場実勢価格に基づいた価格引下げ)とは別に、初めて後発品が出現した場合の特例引下げ(厚労省はZと表記)が行われる。さらに、平成22年度、24年度には、長期収載品の後発品への置換えが計画どおりに進んでいないことを受けた特別の引下げ(いわゆる追加引下げ)が行われた。
 厚労省はこうした特例・特別の引下げを整理し、「後発品への置換えが進まない長期収載品について、価格を引下げる新たなルール(厚労省はZ2と表記)」を提案している。
 具体的には、「後発品が薬価収載されてから5年間を経過した最初の改定以降に、後発品への置換え率が一定水準に到達していない長期収載品について、個々に価格を引下げる」というものだ。
 
 この提案に対しては、「後発品への置換え率をどの程度に設定するのか?」「価格引下げ幅はどの程度にするのか?」「従前の特例引下げ(初めて後発品が出現した場合の価格引下げ)ルールは、残すべきか否か」という点で意見の集約が図られていない状況だ。
 
 この日は、厚労省当局から次のような詳細な追加提案がなされた(p4参照)(p15参照)。
(1)引下げ幅については、たとえば「置換え率20%未満、20%以上40%未満、40%以上60%未満」という具合に、未達の程度に応じて設定する(当然のことながら、達成度合いの低いグループで引下げ幅が大きくなる)
(2)Z2(新引下げルール)とZ(後発品出現時の特例引下げ)の一本化を行うにあたり、Zによる引下げ額を上回る引下げ額となるようにZ2の引下げ幅を設定する
 
 (1)について厚労省保険局医療課の近澤薬剤管理官は、「近年、後発品が出現した長期収載品については後発品への置換えが比較的進んでいる。置換えの達成度に着目して、価格引下げを行うことが妥当であろう」と説明している。
 
 これまでの議論では、支払側を中心に「後発品出現時の特例引下げ(Z)の廃止は好ましくない」という意見があった。しかし、厚労省による「新たな置換え率に着目したルール(Z2)では、後発品出現時の引下げ(Z)額を上回る引下げ額を達成する」との提案から、「財政効果は少なくとも現状を維持する」ことが明らかになり、支払・診療両側ともに厚労省提案を了承している。
 ただし、支払側の白川委員(健保連専務理事)は「後発品出現時の特例引下げ(Z)と、平成22年度、24年度の追加引下げを加えた額を上回るような引下げ額を新ルールで実現するよう努力してほしい」と要望している。「引下げ幅を可能な限り大きくせよ」との注文だ。
 
 ちなみに、新ルールのイメージは次のようになる(p12〜p14参照)。
(i)平成26年4月時点で、「後発品出現後5年を経過しながら、置換え率が一定水準に届かない」品目(約1100品目)について、薬価を引下げる(Z2ルール)
(ii)平成28年4月には、「26年時点でZ2の対象となった品目(つまり(1)の約1100品目)」と「新たに後発品出現後5年を経過した長期収載品目のうち、置換え率が一定水準に届かない品目(改定ごとに約100品目出現する見込み)」を対象に、後発品への置換え率を調査し、Z2ルールに基づく薬価引下げを行う
(iii)平成30年4月には、「28年時点でZ2の対象となった品目(つまり(2)の引下げ対象品目)」と「新たに後発品出現後5年を経過した長期収載品目のうち、置換え率が一定水準に届かない品目(改定ごとに約100品目出現する見込み)」を対象に、後発品への置換え率を調査し、Z2ルールに基づく薬価引下げを行う
 
 厚労省では、「一度後発品シェアが60%以下になった長期収載品が、その後にシェアを回復するという事態は想定していない」ため、上記のイメージを描いている。しかし、シェアを回復する長期収載品が多発するような事態になれば、新たな運用ルールが検討されることになろう。
 
 
◆新薬創出等加算、制度化は見送られ「26年度以降も試行継続」に
 
 次に、新薬創出・適応外薬解消等促進加算について、製薬メーカーにおける研究開発を促進するために「加算を制度化」することや、対象メーカーの限定などを行ってはどうかと厚労省は提案している。
 平成22年度から試行的に導入された新薬創出等加算であるが、メーカーサイドからは「制度が不安定なままでは、研究開発への安定的な資源投入が困難である」とし、恒久化を求める声が強く出されていた。
 一方で、中医協委員からは「新薬創出等加算を受けながら、未承認薬等の開発を行っていない企業がある(いわゆるミスマッチ)。こうした事態を放置して恒久化することは好ましくない」との指摘もあった。
 
 こうした状況を受け、厚労省当局は新薬創出等加算について次のような見直しを行ったうえで制度化することを提案している(p4〜p5参照)(p8〜p9参照)。
(1)「適応外薬・未承認薬の開発要請品目および公募品目の研究・開発」を行う、あるいは「真に医療の質の向上に貢献する研究・開発」を行っている企業の新薬に限定して適用する
(2)「適応外薬・未承認薬の開発要請品目および公募品目の研究・開発」および「真に医療の質の向上に貢献する研究・開発」のいずれも行わなくなった場合には、新薬の薬価は「これまでの猶予された分(加算額の期間累積分)を、市場実勢価格に基づく算定値から追加して引下げた薬価」とする
 
 ただし、支払側・診療側ともに制度化には難色を示している。
 支払側の白川委員は「この提案では、企業に着目したミスマッチは解消できそうだが、個別医薬品に着目したミスマッチは解消できないようだ。こうした点を解決しないままに制度化することは了承できない」とコメント。
 
 さらに白川委員は、「『未承認薬等の開発要請を受けている』『未承認薬等の開発に公募申請している』ことは明確だが、『真に医療の質の向上に貢献する研究・開発を行っている』ことは曖昧である。研究内容などを登録し、事後に評価できる仕組みを導入してはどうか」とも提案している。
 厚労省保険局医療課の担当者は、この点に関連し「今後の、新薬創出等加算の制度化にあたっては、『真に医療の質の向上に貢献する研究・開発』などの定義をより精緻化したり、データの提出をメーカーに求めるなどして、中医協委員の信頼を確保する必要があると感じている」とコメントしている。
 ちなみに、「真に医療の質の向上に貢献する研究・開発」とは、「小児」「オーファン(希少疾病)」「アンメットメディカルニーズ(未だ満たされていない医療ニーズ)」を意味することが確認されている。
 
 厚労省当局では、こうした意見を踏まえて、制度化を「試行の継続」に修正する考えだ。
 
 
◆既収載の後発品価格は、3価格帯に集約する
 
 このほかの改正内容は、次のようになっている。
●既収載の後発品価格は、次の3価格帯とする(p3参照)
(1)最高価格の30%未満のものは、その加重平均を算定額とし、統一名収載する
(2)最高価格の30%以上50%未満のものは、その加重平均を算定額とするが、銘柄別収載とする
(3)最高価格の50%以上のものは、その加重平均を算定額とするが、銘柄別収載とする
 
●最低薬価のうち、注射剤については容量に応じた最低薬価を設定する(p4参照)
 
●製剤上の工夫をすることなく単に投与期間を延長するためだけに含有量を増やした医薬品に規格間調整が適用される場合には、規格間比の上限を0.5850とする(p5参照)
 
●薬価基準に収載されていない「新規性のない成分」を含む配合剤(たとえば市販薬の有効成分を配合)については、薬価収載されている単剤のみの薬価とする(p6参照)
 
●ラセミ体医薬品光学分割ルールについて、薬価収載期間の長短、製造販売業者の異同の条件を削除する(「光学分割を行ったことにより当該ラセミ体に比し高い有効性または安全性を有することが客観的に示されている」ことのみを要件とする)(p6参照)
 
●外国平均価格調整において、外国平均価格の4分の5(現行では2分の3)に相当する額を上回った場合には引下げ調整を行う(p6参照)
 
●外国平均価格調整において、外国価格が2ヵ国以上あり、その最高価格が最低価格の3倍(現行では5倍)を上回る場合は、当該最高価格を除いて相加平均した外国平均価格を用いて調整する(p6参照)
 
●類似薬が存在しないために原価計算方式で算定されるようなイノベーションについては、定量的な評価指標を導入することを前提に、平均的な営業利益率の上限の範囲を拡大する(現在のプラス50%からプラス100%に引上げる)(原価計算方式においては、営業利益率の中で画期性などを評価しており、今回の見直しでイノベーション評価を一定程度行うことが可能になる)(p6〜p7参照)
 
●新規作用機序を有する新薬について、「世界に先駆けて、日本で承認を取得した場合」(欧米諸国での開発計画が進行している等が確認されており、ローカルドラッグではない場合に限る)であって、かつ「画期性加算、有用性加算(I)を受けた」品目について、イノベーションを評価するための新たな加算制度として創設する(加算の程度は市場性加算(I)と同様の10%とする)(p7参照)
 
●新規後発品の価格について、原則6掛け(先発品価格の60%)、後発品が10品目を超える場合には5掛け(同50%)とする(p7参照)(p19参照)
 
●消費増税に伴い、既収載品目の薬価算定式を次のとおりとする(p7参照)(p21参照)
新薬価=[医療機関・薬局への販売価格の加重平均値(税抜の市場実勢価格)]×[1+消費税率(0.08)(地方消費税分を含む)]+調整幅
 ただし、改定前薬価(税込み)÷1.05×1.08を上限とする

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