[改定速報] DPC改革案の大枠固まる、DIC請求では診断根拠をレセに添付
[診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会(平成25年度 第11回 12/9)《厚生労働省》]
平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 12月 09日
厚生労働省は12月9日に、診療報酬調査専門組織の「DPC評価分科会」を開催した。
この日は、26年度におけるDPC制度改革に向けて詰めの議論を行った。
◆データ提出指数、適切な保険診療実施への取組み評価する「保険診療指数」に改組
26年度のDPC改革は、前回(24年度)に大きな見直しを行ったことなどから「小幅修正」にとどめることとされ、現在、次のような方向が固まっている。
●機能評価係数IIのうち「データ提出指数」「救急医療指数」「地域医療指数」を見直し、新たに「後発医薬品指数(仮称)」を加える
●DPC算定ルールのうち、いわゆる「3日ルール」を「7日ルール」に変更する
●持参薬の扱いを明確化する
●退院患者調査、様式1などの見直しを行う
この日は、これらの見直し内容のうち、積み残しになっている部分について議論を行った。具体的には、次の3点である。
(1)データ提出指数見直しの方向性
(2)地域医療指数における評価項目
(3)3日ルールの7日ルールへの変更に伴う修正
(1)はデータ提出指数について、これまでの「正確・適切なデータを期日までに提出することを評価する」という趣旨から、「データ提出を含めた適切な保険診療実施・普及のための取組みを評価する」というものに拡大していってはどうかという提案だ。
分科会では、データ提出指数を減算する規定を追加(これまでの部位不明コードの割合に加えて、矛盾するデータ、未コード化データの割合が一定以上の場合にも減算)する点については合意していた。
この日はこれに加えて、次の2点が厚労省当局から提案され、なんとか了承されている(p10〜p11参照)。
(i)(上記のように)指数の趣旨を拡大した点を踏まえ、名称を『保険診療指数』に改める
(ii)I群病院(大学病院本院)において、指導医療官(厚労省職員として保険者や保険医療機関等に保険診療に関する指導や監査を行う)を1年間派遣した場合、指数を加算する
このうち(ii)は、「大学病院では研修医数が多いにもかかわらず、保険診療に関する指摘事項(特定共同指導等)が多く、保険診療を熟知した医師を養成するために、一定期間保険行政に携わることが望ましい」という理由から提案されているものだ。
これには、一部委員(伏見委員:東京医科歯科大大学院教授、石川委員:千葉県勤労者医療協会理事長)が「保険診療の重要性はもっともだが、指導医療官として1年間派遣するだけでよいのだろうか。保険診療に関する教育などを重視すべき」といった旨を指摘し、厚労省提案に消極的であったが、小山分科会長(東邦大医学部特任教授)の説得もあり了承されている。
(2)の地域医療指数については、『脳卒中地域連携』や『がん診療連携拠点病院』などさまざまな評価項目があり、今般、『急性心筋梗塞治療の実績』と『精神科身体合併症の治療体制』が加わり12項目となる。
この日は、評価項目の1つである『災害時における医療』に、「新型インフルエンザ等対策にかかる指定地方公共機関の指定(p14〜p16参照)を加えることを検討する」旨が提案され、了承された(p12参照)。
もっとも、新型インフル対策にかかる指定は全都道府県で完了していないため「平成27年度以降に導入することを26年度以降検討する」とされている。
厚労省保険局医療課の担当者は、「27年度の係数(指数)見直し時点を目指して、中医協で議論していただくことになろう」と見通している。
(3)の「3日ルールから7日ルール」への見直しは、一度退院して入院期間をリセットし、再入院後に高いDPC点数を算定するという弊害を避けるためのものだ。
現在は、「3日以内の再入院において、前入院と再入院のDPCコードの上6桁が同じ」である場合に、「両者は同一の(継続した)入院であり、入院期間は通算する」というルールが設けられている。
これを、「7日以内の再入院において、前入院と再入院のDPCコードの上2桁が同じ」である場合を同一入院と考える、という具合に見直すものだ。
厚労省当局は、見直しによってどのような影響が出るのかを集計した資料を提示している(p13参照)。
この点、瀬戸委員(東大大学院医学系研究科消化管外科学教授)や相川委員(慶大名誉教授)は「厚労省の資料では、『大腸がん』と『ヘルニアの記載のない腸閉塞』を同一病名と扱っているが、たとえば大腸がんの手術をして2週間後に退院し、その後1週間(7日ルールの範囲内)に、癒着性の腸閉塞が生じるといったようなケースは少なくない。これを同一と扱うのはいかがだろうか」と指摘。
厚労省保険局医療課の佐々木企画官は、この指摘を踏まえ「法則が見出せるかどうかなどを省内で検討してみたい」と述べており、7日ルールの細部について更なる調整がなされる模様だ。
◆26年度DPC制度改革の大勢が固まる、近く中医協総会に報告
これまで見てきたような点も含め、DPC制度改革案は近く開かれる中医協総会に報告される。主な改革内容は次のとおりだ。
【基礎係数】
●II群(大学病院本院なみの医療を行っている病院)の要件のうち「診療密度」について、最新版の外保連試案(第8.2版)を活用する(p17参照)(p19〜p20参照)
●基礎係数(医療機関群のあり方)については、継続して検討していく(p4〜p5参照)
【機能評価係数I】
●機能評価係数I(出来高点数表の【総合入院体制加算】などの各種加算を係数化したもの)について、現行の評価方法を継続する(p6〜p9参照)
【機能評価係数II】(p31〜p35参照)
●データ提出指数について、上記のように減算規定の拡大を行うとともに、指数の趣旨を拡大して名称を『保険診療指数』に改める(p22〜p24参照)(p10〜p11参照)
●救急医療指数について、当該評価の対象となるような重症症例をより公平に評価する手法へと見直す(p24〜p25参照)
●地域医療指数の評価項目に、『急性心筋梗塞治療の実績』と『精神科身体合併症の治療体制』を加えて12項目とし、『災害時における医療』に「新型インフルエンザ等対策にかかる指定地方公共機関」の指定を検討することを加える(p25〜p28参照)(p12参照)
●後発医薬品の使用割合に着目した『後発医薬品指数(仮称)』を新設する(都合、機能評価係数IIは7項目の指数で評価することとなる)(p29〜p30参照)
【算定ルール】
◇3日ルール
●一度退院して入院期間をリセットし、高いDPC点数を算定するという弊害を是正するための『3日ルール』を、『7日ルール』と改める(p36〜p39参照)
●7日ルールにおいては、前回入院の「医療資源をもっとも投入した傷病名」と、再入院時の「入院の契機となった傷病名」のDPC上2桁コードが一致する場合には、一連の入院とみなす(入院期間は通算されるが、退院期間の日数は入院期間とはみなさない)
●悪性腫瘍にかかる化学療法を実施する症例については、当該ルールの適用を除外する(がんの手術療法を行った後に一旦退院し、直後に抗がん剤治療で再入院するケースが少なくないため)
●7日ルール等への変更に伴う影響等について、次回改定以降、退院患者調査等で重点的に検証する
●前回入院の「医療資源をもっとも投入した傷病名」と、再入院の「医療資源をもっとも投入した傷病名」が一致するにもかかわらず、再入院時の「入院の契機となった傷病名」が異なる場合には、その理由を摘要欄に記載することを義務付ける(p37参照)
◇持参薬の取扱い
●持参薬について、「DPC対象病院は、当該病院に入院することがあらかじめ決まっている患者に対し、当該入院の契機となった傷病を治療するために使用することを目的とする薬剤については、特段の理由がない限り、当該病院の外来で事前に処方すること等によって患者に持参させ入院中に『使用』してはならない」旨の規定を設ける(p40参照)
持参薬については、「外来で処方を行い、それを予定入院で使用する場合、『薬剤料の二重取り』が生じる(同一病院の場合)」、さらに「入院で持参薬を使用する病院と、持参薬を使用しない病院では、出来高実績にアンバランスが生じる(これはDPC点数設定に反映される)」などの諸問題がある。
厚労省の佐々木企画官は、この問題に関連し「入院の契機になった疾患に使用する薬剤だけではなく、常用薬についても議論が必要である」との見解を示しており、今後、さらなる調整が行われる模様だ。たとえば「高血圧の治療を受けている患者が、がんの手術で入院した」折に、高血圧の薬を持参し、それを使用することを是とするか否とするかという論点である。
なお、この持参薬規定違反をレセプト等から把握することは困難なため、厚労省保険局医療課の担当者は「指導・監査などで把握し、是正を促すことになるのではないか」と見通している。
【退院患者調査等】
●退院患者調査について項目の見直し、調査の制度化(告示等に位置づける)、様式3(施設情報)への「許可病床数」「休止病床」の記載、様式4(医科保険診療以外の診療情報)の様式1への統合(平成27年度以降)、III群における外来EFファイルの提出義務化(現在は、I群、II群のみで義務)などを行う(p42〜p48参照)
◆アップコーディング防止に向け、DIC請求では診断の根拠資料等をレセに添付
この日は、適切なコーディングの推進に向けた議論も行われた。
厚労省当局は、「DPC/PDPS傷病名コーディングテキスト」案が報告された(p101〜p144参照)。これは研究班で検討を重ねてきた「コーディングガイド」を一部修正したもの。
DPCの算定ルール(通知)において、このテキストを『年2回以上実施することとなっているコーディング委員会における参考資料』とすることを明示し、テキスト自体も広く周知される模様だ(p99参照)。
またコーディングテキストは、逐次見直していく必要があり、見直しのためのワーキンググループが設置される。
一方、コーディングに関連して「アップコーディング」対策もとられる。
アップコーディングとは、本来よりも点数の高いDPCコードを意図的に選択する事例などをさす。DPC点数の設定にも影響が出る(出来高実績が少ないことから、DPC点数が不適切に低くなってしまう)ため、DPC病院全体、ひいては保険診療全体に悪影響が及んでしまう。
とくにアップコーディングが目立つものとして、【130100 播種性血管内凝固症候群】(いわゆるDIC)が知られている。厚労省当局は「DICとして請求する際に、診断の明確な根拠について記載されたものをレセプトに添付する」ことを義務付けたい意向だ。