[改定速報] 薬価引下と本体部分を差引く「ネット改定率」廃止せよ 財政審
[平成26年度予算の編成等に関する建議(11/29)《財務省》]
平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 12月 02日
財務省の財政制度等審議会は11月29日に、麻生財務大臣に宛てて「平成26年度予算の編成等に関する建議」を提出した。
26年度予算は「2015年度の赤字半減目標、2020年度の黒字化目標の達成」に向けて、中期財政計画の枠組みのもとで収支改善に取組む最初の予算編成である。また、26年4月には消費増税が控えており、「各分野の予算が膨張すれば、国民の政府に対する信頼を失いかねない」として、「これまで以上に厳しく、聖域を設けずに歳出削減に努めなければならない」と強調している(p6〜p18参照)。
中でも社会保障については、一体改革を推進していくことに加え、26年度診療報酬改定について「最大の焦点」に位置づけている(p23参照)。
建議では、「医療費の増加は、医療機関等の収入は増加するものの、患者側にもメリットが及ぶものでは必ずしもない」とし、「負担増に見合う国民のメリットが得られるかという観点からの検証が欠かせない」とコメント(p23参照)。
さらに具体的に次のような見解を明らかにしている。
(1)概算要求時点で、自然増分として「プラス3.2%」が要求されているが、医療費の引上げは企業・家計の負担増をもたらすものである(p23参照)(p66〜p67参照)
(2)(1)のうち薬価部分については、市場実勢価格を上回る過大要求があり、この修正(時点修正)分は「歳出としていまだ実現しない段階で要求を下方修正するもの」であり、『財源が捻出される』と考える余地はない。この修正分を診療報酬本体部分に流用することに合理性はない(p23参照)(p67〜p68参照)
(3)「薬価改定率」(薬価部分の下方修正の金額を医療費ベースに置換え、医療費総額に対する比率を算出したもの)と診療報酬本体部分の改定率を差引きする『ネット改定率』の概念は、薬価部分の「マイナス改定」で何らかの財源を生み出し、それを診療報酬本体等に使い回すことが可能かのような誤解を助長しており、この際なくすべきである(p24参照)(p68〜p69参照)
(4)26年度改定においては、薬価部分について「長期収載品の薬価引下げ」「新薬創出等加算の見直し(価値の高い新薬の価格維持という本来の趣旨に沿って見直し、規模を大幅に縮小する)」「市販品類似薬の保険適用除外」などによる合理化・適正化の必要がある(p24参照)(p69〜p70参照)
(5)診療報酬本体部分については、医療経済実態調査等を踏まえて「自然増要求からのマイナス」(つまりマイナス改定)とすべき(p24参照)(p71〜p74参照)
(6)診療報酬本体部分がマイナス改定であっても、引続き、高齢化に伴う患者増があり、医療従事者の賃金上昇を含む人件費等を賄う医療機関等の収入が増加基調で手当てされる改定内容を確保できる(p24参照)(p71〜p74参照)
(7)「消費増税分を活用した、医療提供体制改革のためのプラス改定」という考え方については、「足元の医療提供体制の歪み(7対1病床がもっとも多い状況など)と、それに伴う高コスト構造を是正する」のであれば、プラス改定という方向にはなりえない(p24参照)(p71〜p74参照)
(8)医療提供体制改革では、(i)地域ごとに(ii)病床数のコントロール―が不可欠だが、両面において診療報酬体系は有効ではない可能性が高く、財政支援を検討するにしても「診療報酬以外の財政支援の手法」の検討が必要(p24〜p25参照)(p74〜p75参照)
(9)消費増税に伴う診療報酬プラス改定が必要であるが、(5)の自然増からのマイナスとあわせて水準を決すべきであり、「トータルでの診療報酬本体部分のプラス改定」を前提とすべきでない(p25参照)
(10)後発品使用促進のために、参照価格制(保険償還価格を後発品価格に基づいて設定し、それを上回る部分は患者自己負担とする仕組み)の導入を検討すべき(p25参照)
また、介護費用についても「医療費を上回る高い伸び」が見られることなどを踏まえ、社会保障・税一体改革の一環である介護保険法改正案をしっかりと構築するよう要求している(p25〜p27参照)。