[改定速報] 厚労省が「新薬創出等加算の制度化」を提案、委員は消極的
[中央社会保険医療協議会 薬価専門部会(第96回 11/27)《厚生労働省》]
平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 11月 27日
厚生労働省は11月27日に、中医協の薬価専門部会を開催した。
この日は、これまでの議論をまとめた「論点整理案」が厚労省当局から示された。次回会合では、この案に対する意見を医薬品関係者から聴取することになる。
論点整理案で示された平成26年度の薬価制度見直し項目を並べると、次のとおりとなる。
(1)製剤上の工夫をすることなく単に投与期間を延長(たとえば週に1回を月に1回に)するためだけに含有量を増やした医薬品に規格間調整が適用される場合には、規格間比の上限を0.5850とする(p5参照)
(2)薬価基準に収載されていない「新規性のない成分」を含む配合剤(たとえば市販薬の有効成分を配合)については、収載されている単剤のみの薬価とする(p6参照)
(3)ラセミ体医薬品光学分割ルールについて、薬価収載期間の長短、製造販売業者の異同の条件を削除する(「光学分割を行ったことにより当該ラセミ体に比し高い有効性または安全性を有することが客観的に示されている」ことのみを要件とする)(p7参照)
(4)外国価格平均調整において、引上げ調整と引下げ調整の幅をともに整合させ、25%とする(外国平均価格の4分の5に相当する額を上回った場合には引下げ調整を行い、4分の3に相当する額を下回った場合に引上げ調整を行う)(p8参照)
(5)外国価格平均調整において、最高価格が最低価格の5倍ではなく、3倍でも大きな格差と考えられることから、外国価格が2ヵ国以上あり、そのうち最高価格が最低価格の3倍を上回る場合は、当該最高価格を除いて相加平均した外国平均価格を用いて調整する(p9参照)
(6)国内で原薬や製剤の製造が行われている場合であって、製造原価について詳細なデータが提出されている場合には、外国平均価格調整の対象から除外する(p10参照)
この提案に対しては支払側の白川委員(健保連専務理事)が、「根拠が不明である。納得できない」と反対姿勢を崩していない。
(7)類似薬が存在しないために原価計算方式で算定されるようなイノベーションについては、定量的な評価指標を導入することを前提に、平均的な営業利益率の上限の範囲拡大を検討する(p15参照)
(8)革新的な新薬の保険適用の評価に際し、費用対効果の観点を導入することや、導入する場合の考え方について、費用対効果評価専門部会の議論の推移を見つつ、具体的な評価の方法等について検討する(p15参照)
(9)新規作用機序を有する新薬について、「世界に先駆けて、日本で承認を取得した場合」(欧米諸国での開発計画が進行している等が確認されており、ローカルドラッグではない場合に限る)であって、かつ「画期性加算、有用性加算を受けた」品目についてイノベーションを評価するための新たな加算制度として創設する(加算の程度は市場性加算(I)と同様の10%とする)(p16参照)
これまでにも「世界に先駆けて日本で承認する」ことについて、成長戦略(日本再興戦略)のもとで進める考えを厚労省は提案していたが、今回は「画期性あるいは有用性のある品目」に限定した点が目立つ。
ただし、白川委員は「有用性加算2まで対象にするのはいかがなものか。最低限、有用性加算1を受けていることを要件とすべき」と主張している。
(10)初めて収載される場合の後発品の価格について、0.6(後発品が10品目を超える場合には0.5)、また0.5掛けとする(p17参照)
(11)後発品の価格について、(i)収載品については、先発品薬価の30%以下の後発品については統一名収載(ii)先発品の薬価の30%を超える後発品については、市場実勢価格に基づく加重平均値―とし、どこまで価格帯を削減できるか検討する(p18参照)
(12)長期収載品から後発品への置換えを図るために、一定期間(5年間)、適切な置換えが図られない場合には、特例的な引下げを行うこととし、今後、具体的なルールを定める(p19参照)
(13)新薬創出等加算について、(12)の特例引下げ導入に鑑みて、制度化する。ただし、「改定毎に研究開発の促進が適正に図られているか」をチェックすることが前提となる(p20参照)。なお、加算対象については「真に医療の質の向上に貢献する医薬品の国内研究・開発」(p21参照)を行う希望を有する企業の品目のみとしてはどうかと提案された。
この提案に対しては、多くの委員から「時期尚早である」との見解が披露されている。
(14)新薬創出等加算の評価について、(i)真に医療の質の向上に貢献する医薬品の国内研究・開発費(小児、オーファン領域を対象とした医薬品、難病、アンメットニーズへの対応など)(ii)適応外薬等の解消のための研究・開発費―を合算した額が、加算総額以上であるか否かを基準とする(p21参照)
(15)医療上必要性の高い医薬品の継続的な安定供給のために、最低薬価のうち、注射剤については「容量に応じた最低薬価」を設定する方向で検討する(p22〜p23参照)
この提案には、診療・支払双方とも納得している。リンゲル等の基礎的医薬品の安定供給が一歩前進する格好だ。