[改定速報] 周術期の口腔機能管理推進に向け、医科でも歯科との連携評価へ

[中央社会保険医療協議会 総会(第259回 11/22)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 11月 22日

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 厚生労働省は11月22日に、中医協総会を開催した。
 この日は、歯科医療について議論したほか、新たな医療機器の保険適用の了承、24年度改定(前回改定)結果検証調査結果報告を受けるなどした。
 
 
◆周術期の口腔機能管理を進めるため、医科報酬でも連携体制等を評価
 
 歯科については、7月31日の会合で自由討議が行われており、今回は2回目の集中討議となった。
 この日は、厚労省当局から(1)全身的な疾患を有する者への対応(2)各ライフステージの口腔機能の変化に着目した対応(3)歯の喪失リスク増加に伴う対応―の3分野について論点が提示された。
 
 (1)の全身的な疾患を有する者には、大きく(i)周術期等にある患者(ii)障害者など特別な対応を必要とする者―の2者がいる。
 (i)の周術期等にある患者、とくにがん患者については、口腔機能管理を行うことで予後等が大きく改善することが知られており、平成24年度の歯科診療報酬改定では【周術期口腔機能管理料】などが新設された(p35参照)。
 これによる医科・歯科連携の取組みが増加してはいるものの、数自体は決して多くない(p36参照)。
 連携が進まない理由について、歯科サイドは「医科からの要請がない」「連携体制の確保が難しい」と説明し(p38参照)、医科サイドは「【周術期口腔機能管理料】がどのようなものか知らない」「どの歯科医療機関が連携を実施しているのか分からない」と答えている(p39参照)。
 
 そこで厚労省当局は、医科における【周術期口腔機能管理料】等の周知を図るために、「医科診療報酬上での評価」等を行ってはどうかという論点を掲げている(p33参照)。
 医科・歯科連携を行った場合に、医科にも経済的なインセンティブを与えることになりそうだ。
 
 なお、丹沢専門委員(千葉大学医学部附属病院歯科・顎・口腔外科教授)から「口腔機能の管理による効果」に関する資料も提示されている(p101〜p108参照)。そこでは、口腔機能管理を十分に行うことでがん患者の回復が早まり、平均在院日数短縮などの効果が生じることなどが明らかになっている。
 これに対し公益代表の関原委員(日本対がん協会常務理事)や診療側の万代委員(日病常任理事)は、「入院患者に対する口腔管理について真剣に議論する必要がある」とのコメントを寄せている。
 
 
 (ii)の「特別な対応が必要な患者」は、歯科では「脳性麻痺等で身体の不随意運動等が強く体幹の安定が得られない状態」や「知的障害により治療の目的が理解できず治療に協力が得られない状態」などをさす(p44参照)。
 こうした患者に対する治療については、「全身状態での管理が必要」であったり、「診療に時間がかかる」「医療職の負担が大きく、採算が合わない」などの問題があり、歯科医療機関が敬遠しがちだ(p46参照)。
 そのため、診療報酬上では【歯科診療特別対応加算】などの評価を設けているが(p45参照)、現場からは「不十分」との指摘がある。
 
 そこで厚労省は26年度改定に向けて、現在、「特別対応加算の算定患者が月平均20人以上」などとされている施設基準の緩和(厚労省当局は月平均15人程度以上を想定)や、長時間診療の評価(60分を超える場合等)などを行ってはどうかとしている(p33参照)(p47〜p49参照)。
 
 この点について診療側の堀委員(日歯常務理事)は、「障害者への歯科診療は『患者さんの負担を考え、できるだけ短時間で済ます』のが一般的である。60分を超えるような長時間診療は極めて例外的なケースであろう。そこを重視して評価すべきだろうか」と疑問を投げかけている。
 レアケースよりも一般的な診療行為を評価することが、障害者への歯科診療提供の推進に結びつくという考え方に立つものだ。
 
 
 なお、このような「全身的な疾患を有する者への対応」を強化するために、財源とも相談したうえで「【歯科外来診療環境体制加算(初・再診料の加算)】の再診料加算を引上げる」「【歯科外来診療環境体制加算】の施設基準について、歯科医師臨床研修施設であることを考慮する」ことなどを検討してはどうかとも提案している(p33参照)(p51〜p56参照)。
 【歯科外来診療環境体制加算】は、総合的な環境整備を行っている歯科医療機関を評価するもので、24年度改定において再診料の加算が新設された。この加算を算定している歯科医療機関では「患者の安心感が高まる」というデータがあり、厚労省は、再診料の加算を引上げることで算定医療機関を増加させたい考えだ。
 この点、支払側の高智氏(白川委員の代理)は「算定医療機関は増加しており、現状維持でよいのではないか」とコメントしている。
 
 
◆小児期、成人期以降、それぞれに対応した口腔機能管理を
 
 (2)の各ライフステージの口腔機能の変化に着目した対応としては、次のような論点が提示された(p59〜p71参照)。
(i)小児期の正常な口腔機能の獲得・成長発育を促すために、乳歯を早期に喪失した場合の対応について評価対象を拡大してはどうか
(ii)成人期移行の口腔機能の維持・向上を図るために、舌接触補助床等に関する調整を含めた訓練の評価などを行ってはどうか
(iii)有床義歯の管理・調整など、口腔機能の維持・向上に着目した評価について、患者視点を踏まえて分かりやすい体系へと見直してはどうか
 
 このうち(ii)に関連して堀委員は、「たとえば義歯等を作成したが、患者の都合で来院しなくなった場合に、材料費や作成費については歯科医療機関の持出しを防ぐために『未来院請求』を行うことになるが、対象が不明瞭である。(ii)で提案された『舌接触補助床』などを含め、すべての製作物について『未来院請求』を認めるべきではないか」と指摘。
 これに対し、厚労省保険局医療課の田口歯科医療管理官は「歯科医療関係者と相談しながら、未来院請求の対象者について考えたい」とコメントするにとどめている。
 
 
◆歯周病安定期治療、歯数や顎単位の算定方法を検討へ
 
 (3)の「歯の喪失リスク増加に伴う対応」(歯の保存に資する技術等の評価)について、厚労省当局は次のような論点を提示している(p73〜p86参照)。
(i)歯周病安定期治療の評価体系の見直しを含め、歯周病治療の評価を見直してはどうか
(ii)根面う蝕に対する非侵襲的処置を含め、高齢者における歯の喪失リスクへの対応を評価してはどうか
(iii)根管治療に『4根管』の評価を新たに設定するなどを考えてはどうか
 
 (i)の歯周病安定期治療については、現在「1口腔につき300点を算定する」という評価が行われているが(p77参照)、SPT(歯周病安定期治療)を加味した歯周病治療の充実が、歯の喪失本数減少に大きな効果があるため(p76参照)、「歯数や顎単位を算定単位として評価する」方向で検討してはどうかと厚労省は考えている。
 この点について堀委員は、「方向は歓迎するが、細分化により現場が混乱しないようにしてほしい」との注文をつけている。
 
 また(iii)の根管治療については、現在「単根管」「2根管」「3根管以上」で評価されているところに、「4根管」という評価を追加してはどうかという提案だ(p85参照)。
 これについて堀委員は、「4根管のケースはそれほど多くない。レアケースの評価とセットで、厚労省は【根管貼薬処置】の回数の上限設定などを考えているようだが、そもそもの点数設定が低く、多数回治療は経営的に厳しいのが実情だ。こうした見直しはすべきではない」と指摘している。
 
 
◆着用型の自動除細動器などを新たに保険適用
 
 この日は、新たな医療機器の保険適用について了承している(p3〜p19参照)。
◇区分C1(新機能)
●各種疾患に伴う疼痛軽減を目的とした植込み型疼痛緩和用スティミュレータである『リストアセンサー Sure Scan MRI』(充電式)、『プライムアドバンスト Sure Scan MRI』(非充電式)(いずれも日本メドトロニック社)
●PTFE(テフロン)製のカバーを2つのステントで挟込んだ三層構造の胃十二指腸用ステントである『Niti-S 胃十二指腸用コンビステント』(センチュリーメディカル社)
 
◇区分C2(新機能・新技術)
●着用中、患者の心電図を監視し、異常心電図を検出した際に自動で除細動治療を実施することで患者を救命する『着用型自動除細動器LifeVest』(旭化成ゾールメディカル社)(材料価格は設定せず、技術料で評価する)
●原発性悪性脳腫瘍を対象疾患とし、光感受性物質タラポルフィンナトリウムを用いた光線力学的療法(PDT)に使用することを目的としたレーザ発生装置とレーザプローブからなる『PDレーザ BT』(パナソニックヘルスケア社)(材料価格は設定せず、技術料で評価する)
●多血性腫瘍・動静脈奇形を有する患者に対する動脈塞栓療法に用いる生体適合性・親水性・生体非吸収性を有する粒子である『エンボスフィア』(日本化薬社)(子宮筋腫への適応あり)
●子宮筋腫を除く多血性腫瘍・動静脈奇形を有する患者に対する動脈塞栓療法に用いる生体適合性・親水性・生体非吸収性・膨潤性・圧縮性・変形性を有する粒子である『ヘパスフィア』(日本化薬社)
 
 このほか継続審議となっていた、バルーン付き中心静脈カテーテルを介し、血管内で血液と熱交換を行って体温を制御する『サーモガードシステム』(区分C2、旭化成ゾールメディカル社)について、メーカーから「低体温療法には適応外である」「適応疾患は、頭部外傷、重症熱中症、くも膜下出血による急性重症脳障害に伴う発熱である(明確化)」ことなどが示され、この日の総会で保険収載が了承された(p20〜p27参照)。
 
 
◆精神病床の在院日数、25年6月には460.5日に(2年前比10.8日短縮)
 
 また、この日は、24年度改定(前回改定)の結果検証調査結果(25年度調査)の速報も報告された。今回報告されたのは『慢性期精神入院医療や地域の精神医療、若年認知症を含む認知症に係る医療の状況』調査結果である(p109〜p231参照)。
 
 速報の主なポイントをあげると、次のように整理できよう。
●精神科医療について、病床の種類を問わず平均在院日数は短縮している(精神病床全体で見ると、23年6月は471.3日であったが、25年6月には460.5日で10.8日短縮した)(p124参照)
●精神科の入院患者の疾患では、9割近くが「統合失調症、統合失調症型障害、妄想性障害」であり、在院期間は1年以上が圧倒的多数を占めている(p169参照)
●救急医療機関での治療を一定程度終え、状態が落ち着いた精神疾患患者の地域医療機関への移行を促進するための【精神科救急搬送患者地域連携紹介加算】(24年度改定で点数を2倍に引上げ)の届出は12.9%にとどまるが、【精神科救急搬送患者地域連携受入加算】(同)の届出は49.3%ある(p132〜p133参照)
●精神科医療機関を退院した後に、生活を継続するために必要な支援としては「看護師・ケースワーカー・ヘルパー等による援助指導(とくに24時間)(通院、訪問とも)」を期待する人が多い(p199〜p200参照)
●精神疾患患者が退院できない理由として、「家族の受入れ困難・介護者不在」(64.8%)、「入院を要する状態が続いている」(46.1%)などが多い(p201参照)

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