[改定速報] 短期滞在手術3、対象範囲拡大し「5日間の全包括」を厚労省提案

[中央社会保険医療協議会 総会(第258回 11/20)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 11月 20日

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 厚生労働省は11月20日に、中医協総会を開催した。
 この日のメインテーマは「入院医療」、ほかに各団体から第19回医療経済実態調査結果に関する見解発表が行われた。
 
 
◆7対1等の特定除外廃止、診療側委員は「医療現場への配慮必要」と慎重意見
 
 入院医療については、平成26年度の最重要事項に位置づけられている7対1等の「一般病棟入院基本料」の見直しや、診療報酬の簡素化(加算の入院基本料等への包括化)などを議論した。
 
 前者の一般病棟入院基本料については、次の4点が議題となった。
(1)7対1に係る経過措置(24年度改定)の検証
(2)13対1・15対1における特定除外制度廃止(24年度改定)の検証
(3)7対1・10対1における特定除外制度廃止
(4)短期滞在手術の包括評価
 
 
 まず(3)の7対1・10対1の特定除外廃止について見てみよう。
 一般病棟では、入院基本料の逓減制(入院期間が長くなると報酬が下がる)が採用されており、90日を過ぎた入院患者については一部を包括した低い特定入院料を算定することになる。
 しかし、リハビリやがんなどで長期入院がやむを得ないと考えられる患者については、90日より前の入院基本料(出来高)を算定することができ、これを特定除外制度と呼ぶ。
 13対1・15対1では、後述のように24年度改定で特定除外制度が廃止され、90日を超える入院患者については次の2つの点数算定ルールのいずれかを病院自からが選択するという仕組みに改められた(p21〜p24参照)(p39参照)。
(i)療養病棟入院基本料を算定する
(ii)出来高の一般病棟入院基本料を算定するが、平均在院日数の計算に組込む
 
 厚労省当局では、7対1・10対1一般病棟でも上記と同じように特定除外制度の廃止を行ってはどうかと提案している。その論拠は次のとおりだ(p37参照)。
●病床機能分化を進める必要がある
●特定除外患者の割合は「7対1では3.7%、10対1では6.5%」であるが、分析の結果、「7対1病棟では1割、10対1では2割の入院患者が90日を超える入院であっても、残りの入院患者について7対1・10対1の実際の平均在院日数程度(少々長くてもよい)を維持すれば、平均在院日数にかかる施設基準は満たせる」ことがわかっており、病院経営への影響は小さいと推定される(p59〜p69参照)
 
 ただし、病院経営にまったく影響がでないわけでもないであろうから、厚労省は「一定の経過措置」をとる考えも示している。ちなみに13対1・15対1の特定除外廃止では6ヵ月間の経過措置を設けた(p37参照)。
 
 この項目については、診療側と支払側で意見が大きく対立している。
 
 支払側の白川委員(健保連専務理事)は、「病床機能分化は重要な視点である。医療現場の混乱を防ぐために経過措置も検討するとされており、厚労省当局の提案に賛成する」ことを明言。
 さらに「平均在院日数を実質的に(施設基準の日数を機械的に減らす手法ではない)減少させる方式は、医療現場の混乱を最小限に抑えるものである」と厚労省提案を高く評価している。
 
 一方、診療側の委員は、病床機能分化という方向には賛成するものの、より医療現場に配慮した慎重な対応をとるよう求めている。
 鈴木委員(日医常任理事)は、「7対1等では特定除外患者割合こそ少ないが、病床数が多い(p9参照)ことから、患者の絶対数は多い。現場への影響は前回改定よりも大きいのではないか。より慎重に『1年』程度の経過措置を設けるべきであろう」と提案している。
 
 また同じく診療側の中川委員(日医副会長)は、「7対1等と13対1等では、特定除外患者の状態が異なる(7対1等のほうが重い)(p60〜p61参照)。また、地域の事情によっては、7対1等から亜急性期や療養への転院が進まないケースも少なくない。医療現場、患者にとってやさしい改革をしなければ医療は崩壊してしまう。特定除外制度の完全廃止ではなく、『制限』を提案する」と強調。
 
 これに対して厚労省保険局の宇都宮医療課長は、「病床機能分化を進めても、一定程度、7対1病院に長期入院患者が残ることは仕方なく、ゼロにしてほしいなどと考えているわけではない。厚労省のシミュレーションによれば、長期入院患者が調査実態(7対1で3.7%)よりも多く入院している場合(7対1で10%)ですら、平均在院日数への算入に問題はない(p65〜p66参照)、つまり患者追い出しにつながらないと考えられる。一方で、療養病棟の点数を算定する選択肢も用意している。どちらを選択しても総体として病院経営に支障は生じないのではないだろうか」と述べ、相応の配慮をしている旨を説明している。
 
 なお、後述する(4)の短期滞在手術基本料見直しによっても「平均在院日数に大きな変動はない」ことが分かっており、厚労省の平均在院日数シミュレーションに影響はない模様だ。
 
 診療・支払両側の意見は大きく隔たっており、調整にはもう少し時間がかかりそうだ。
 
 
◆短期滞在手術基本料3、「対象拡大」「平均在院日数から除外」に組換え
 
 (4)の「短期滞在手術」については、次のような提案が厚労省当局から行われている(p79参照)。
●【短期滞在手術基本料1・2】のうち、17の手術と検査については【短期滞在手術基本料3】に移行する
●上記の17手術・検査、および現在の短期滞在手術基本料3の対象である2手術(15歳未満の鼠径ヘルニア手術および腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術(両側))について、『全包括点数』を設定する
 
 17の手術・検査は、K008【腋臭症手術2皮膚有毛部切除術】、K093-2【関節鏡下手根管開放手術】、K282【水晶体再建術1眼内レンズを挿入する場合 その他のもの】、K282【水晶体再建術2眼内レンズを挿入しない場合】、K474【乳腺腫瘍摘出術1長径5cm未満】、K721【内視鏡的結腸ポリープ・粘膜切除術1長径2cm未満】、K196-2【胸腔鏡下交感神経節切除術(両側)】、K617【下肢静脈瘤手術1抜去切除術】、K867【子宮頸部(膣部)切除術】、K873【子宮鏡下子宮筋腫摘出術】、K617【下肢静脈瘤手術2硬化療法(一連として)】、K617【下肢静脈瘤手術3高位結紮術】、K721【内視鏡的結腸ポリープ・粘膜切除術2長径2cm以上】、K743【痔核手術(脱肛を含む)2硬化療法(四段階注射法によるもの)】、D237【終夜睡眠ポリグラフィー】、D291-2【小児食物アレルギー負荷検査】、D413【前立腺針生検法】である(p88〜p102参照)。
 これらは、DPCデータを用いた分析で「入院5日未満で7〜9割の患者が退院している」ことなどが分かり、対象手術・検査にピックアップされた。
 
 短期滞在手術3の点数算定イメージは次のようになっている(p105参照)。
(i)入院5日目までに手術・検査が行われる場合
○入院5日間までは全患者について、『全包括』の短期滞在手術基本料を算定する
○入院6日目以降は、出来高点数を算定する
(ii)入院5日目までに手術・検査が行われなかった場合
○すべて出来高点数で算定する
 
 さらに厚労省当局は、「上記の短期滞在手術基本料を算定した患者については、平均在院日数から除外する」という見直しを提案している(p79参照)。
 これにより、「きわめて短期滞在手術基本料を多く算定している病院(厚労省調査では35病院)について、平均在院日数が約0.6日延びる」見込みだ(p87参照)(p104参照)。
 厚労省の宇都宮医療課長は、「きわめて短期滞在手術を多く算定している病院ですら0.6日しか平均在院日数が延びないのであるから、多くの病院への影響は小さいであろう」と見通している。
 
 この見直し案について診療側の鈴木委員は、「7対1の特定除外廃止よりも大きな問題かもしれない。今回、短期滞在手術基本料3に組込まれる17手術・検査にはバラつきがあるようだ。絞り込んで医療現場への影響を確認し、その後、拡大していく手法をとるべきではないだろうか」とコメントしている。
 
 
 このほか、(1)の7対1経過措置については、算定病棟が減少しており、かつ多くの病院で今後の動向(7対1にいくか、10対1にいくかなど)を決定していることから、診療側・支払側ともに「26年3月31日での廃止」を了承している(p11〜p18参照)。
 
 また(2)の13対1・15対1の特定除外廃止については、90日を超える長期入院患者は減少しており、また多くの患者は自宅や一般病棟以外の病棟に退棟していることなどから、診療側・支払側ともに「本措置の継続」を了承している(p19〜p34参照)。
 
 
◆病院における管理栄養士配置の義務など、26年度以降も継続
 
 前回(24年度)改定では、診療報酬点数表の簡素化に向けてA233【栄養管理実施加算】とA235【褥瘡患者管理加算】の2つの入院基本料等加算を入院基本料等に包括した。
 このため、入院施設(病院、有床診療所)では管理栄養士の配置が義務付けられることになったが、一部医療機関からは「管理栄養士の配置が困難であり、緩和してほしい」との強い要請があった。
 厚労省もこの要請を受け、「平成24年3月31日(改定前)時点で管理栄養士配置がない場合には、平成26年3月31日(次の改定)までは管理栄養士配置をしなくてもよい」「平成24年3月31日時点で管理栄養士配置があった場合で、途中で管理栄養士が不在になっても3ヵ月間は通常の入院基本料等を配置できる」などの経過措置を導入した。
 
 厚労省は、「『病院』の現場では、この経過措置によって大きな問題は生じていない」と判断し、26年度以降も栄養管理と褥瘡管理の包括化を継続してはどうかと提案している(p109〜p121参照)。
 
 委員からも、この点について特段の異論は出ていない。
 
 ただし、有床診療所においては大きな問題があるため、「別の機会」に議論されることとなっている(p121参照)。
 
 
 このほか、「算定率の低さのみに着目した加算の包括化・廃止については慎重に対応する」(p123〜p130参照)「特殊疾患病棟・障害者病棟から療養病棟へ移行した場合の特例措置(経過措置)は利用されていないため廃止する」(p132〜p161参照)方針が厚労省から提示されている。
 これらについては特段の異論が出されず、了承されたと考えてよいであろう。
 
 
◆24年度の医療機関経営、支払側は「黒字」を、診療側は「従前のマイナス改定影響」を強調
 
 この日は、支払・診療両側から第19回医療経済実態調査結果に対する見解が表明されている。11月後半から改定率をめぐる議論を行い、議論をまとめることができれば内閣に対し意見具申となる運びだ(24年度、22年度改定は一本化できず意見具申は断念)。
 
 支払側(p162〜p185参照)は「一部(公立病院)を除き、病院、診療所、薬局全体として黒字経営である」点を強調。
 また院長収入は病院、診療所ともに増加傾向、一般病院の医師給与は増加しているが、一般病院の看護職員、医療技術員の年収は減少している点を指摘している。
 
 一方、診療側(p186〜p287参照)は「過去2回(22年度、24年度)のプラス改定によって改善傾向が見られるが、それ以前の相次ぐマイナス改定に比べて僅かである。医療機関経営は総体として厳しい」と指摘している。

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