[改定速報] 高度な手術実績持ち、24時間救急行うスーパー急性期病院を評価

[中央社会保険医療協議会 総会(第256回 11/13)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 11月 13日

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 厚生労働省は11月13日に、中医協総会を開催した。
 この日は、入院医療について集中審議を行った。
 
 入院医療については、「病床機能の分化・強化と連携」を中心として幅広い議論が行われている。
 この日は、入院医療の中でも「高度急性期」を担う病床について議論した。
 具体的には、(1)集中治療室管理料を算定する病床(2)総合入院体制加算(旧、入院時医学管理加算)を算定する医療機関―の大きく2点について見直しを検討した。
 
 
◆集中治療室について、重篤患者受入れ実績等を勘案した見直し
 
 (1)の集中治療室管理料には、(i)特定集中治療室管理料(ICU)(ii)新生児集中治療室管理料(NICU)・総合周産期特定集中治療室管理料(iii)小児特定集中治療室管理料―などがある。
 
(i)特定集中治療室管理料(ICU)(p221〜p229参照)
 このうち(i)のICUについては、海外・国内の知見から「医師の複数配置」などを行うことで、患者の予後の改善や、ICU内在院日数の短縮という効果があることが分かっている。
 また、学会や医療現場からは「1床あたり20平方メートル以上の面積確保」「臨床工学技士の24時間配置」などを確保することが治療効果・安全性を向上させるという指摘がなされている。
 これらを踏まえ、厚労省当局は次のような見直し案を提示している。
●特定集中治療に精通した医師の複数配置、十分な病床面積の確保及び臨床工学技士の24時間勤務体制などにより、より診療密度の高い診療体制にある特定集中治療室に対し、充実した評価を行ってはどうか
 
 このうち「24時間の臨床工学技士配置」について、万代委員(日病常任理事)は「現場では、臨床工学技士の配置に苦労しており、有名無実化する可能性がある。一方で、臨床工学技士が24時間ずっと患者に張り付いている必要もない。方向性は納得できるが、当初は緩めの要件を設定し、段階を踏んで厳しくしていくべきではないか」とコメントしている。
 この点、厚労省の宇都宮医療課長は「人員配置だけではなく。別の要件なども検討する必要があるか考えたい」と答えている。
 
 
 
(ii)新生児集中治療室管理料(NICU)・総合周産期特定集中治療室管理料(p231〜p247参照)
 NICUは、専任の医師が常時NICU内にいるなど非常に厳しい要件をクリアする【新生児集中治療室管理料1】と、一定要件のクリア(もちろん要件そのものは厳しく設定されている)が求められる【新生児集中治療室管理料2】がある。
 この点、入院患者の状況をみると、「管理料1を算定しているがあまり重篤でない患者しか受入れていない医療機関と、管理料2しか算定していないが重篤な患者を積極的に受入れている医療機関がある」ことが分かる。
 この背景には、同管理料の施設基準に「受入れ実績」が設定されてないことがある。
 
 また、NICUでは主に低出生体重時(1500グラム未満)・超低出生体重児(1000グラム未満)の受入れが想定されているが、出生体重が1500グラム以上であっても長期間の入院が必要な患者も少なくない。具体的には先天性奇形がある場合には、密度の高い医療を比較的長期間提供する必要がある。
 
 こうした事態を踏まえて厚労省当局は、次のような論点を提示している。
●出生体重1500グラム以上であっても、先天奇形等を合併している一部の患者について新生児特定集中治療室管理料等の算定可能日数を引上げてはどうか(たとえば『筋骨格系の先天奇形及び変形』『染色体異常』『神経系の先天奇形』『消化器系のその他の先天奇形』『呼吸器系の先天奇形』の5疾患)
●【新生児特定集中治療室管理料1】【総合周産期特定集中治療室管理料(新生児)】について、新生児の急性期医療を担う医療機関の機能分化を推進するため、超低出生体重児や先天奇形の患者を一定程度受入れていることを要件としてはどうか
●【新生児特定集中治療室管理料2】においても、低出生体重児等の患者を一定程度受入れることを要件とした上で、評価を引上げてはどうか
 
 
(iii)小児特定集中治療室管理料(p249〜p259参照)
 【小児特定集中治療室管理料】は平成24年度改定で新設された新しい点数であるが、24年7月1日時点で「1医療機関・10床」の届出にとどまっている。
 この背景には、同管理料の施設基準の1つである「同病室に入院する患者のうち、転院日に他の医療機関において救命救急入院料、特定集中治療室管理料を算定していた患者を年間20名以上受入れていること」を満たすことが難しいという点があると見られている。
 
 ただし、個別病院の状況を詳しくみると、救命救急入院料を算定してはいないが「ICU患者の受入れは相当数ある」「救急搬送診療料算定患者の受入れ実績はきわめて高い」病院が複数あることが分かっている。
 
 こうした状況を踏まえ、厚労省当局は次のような論点を提示した。
●他院で救命救急入院料、特定集中治療室管理料を算定している患者の受入実績を満たしていない医療機関であっても、「救命救急入院料等の届出を行っている医療機関で診察をうけた後に転院してくる患者の受入実績」、「救急搬送診療料を算定した患者の受入実績」、「ドクターヘリを用いて広域搬送された患者の受入」、「入室患者のうち転院患者や救急車等を用いて直接当該治療室に入室した患者の割合」など一定の実績を有する医療機関については、小児特定集中治療室管理料の算定を認めてはどうか
 
 
◆【総合入院体制加算】の基準強化したスーパー急性期病院の評価新設
 
 (2)の【総合入院体制加算】は、いわば「特定機能病院なみの医療提供を行っている一般病院を評価する」ための加算だ。
 
 しかし、同加算を算定する医療機関の中にも診療実績にはバラつきがある(p264参照)。
 これは、「人工心肺を用いた手術」や「悪性腫瘍手術」などの実績が、施設基準としては設定されず、「望ましい」とされていることによるところが大きい(p263参照)。
 
 また、同加算を算定する病院には、「高度急性期医療を担う」ことが求められていると考えられるが、一部には【亜急性期入院医療管理料】の算定病床や【療養病棟入院基本料】の算定病棟も併設しているところもある(p267参照)。
 
 このため厚労省当局は、病床機能分化を進め、高い点数設定をしたいわば「超高度急性期病院(スーパー急性期病院)」を設けるために次のような考え方を提示している(p268参照)。
(i)救命救急医療(第三次救急医療)として24時間体制の救急を行い、精神病棟等の幅広い診療科の病床を有するとともに、人工心肺を用いた手術や悪性腫瘍手術、腹腔鏡下手術、放射線治療、化学療法および分娩件数等に係る一定の実績をすべて有する医療機関に対し、より充実した評価を行ってはどうか
(ii)これらの一定の実績を有する医療機関については、急性期医療を担う医療機能をより充実させる観点から、亜急性期入院医療管理料および療養病棟入院基本料等の届出は不可としてはどうか
 
 この(i)(ii)の両要件を満たす病院について、厚労省の宇都宮医療課長は「10病院程度」と説明している。
 厚労省保険局医療課の担当者は、「【総合入院体制加算】を『総合入院体制加算1』と『総合入院体制加算2』に分け、1の施設基準は提案のように厳しくするイメージである」旨のコメントをしている。
 
 いわば『スーパー急性期病院』を評価する加算を新設することになるが、宇都宮医療課長の説明ではわずか10病院にとどまり、算定可能な病院は極めて限定される形だ。
 将来展望について厚労省保険局医療課の担当者は、「現時点では『総合入院体制加算1』の施設基準を緩めて、対象病院・病床を広げることにはならないのではないだろうか。どちらかというと力のある『総合入院体制加算2』の病院が、『総合入院体制加算1』に上がってきていただきたい」と見通している。
 この点、万代委員は「現場では【総合入院体制加算】の施設基準等が厳しすぎるという声も強い。厚労省の提案する要件を満たす『高度急性期』病院と、【総合入院体制加算】の要件を少し緩和した病院の2タイプに分けていってはどうだろうか」と提案している。
 
 また、中川委員は「地域医療ビジョンの議論が進んでいる中で、『高度急性期は亜急性期や療養を併設してはいけない』と診療報酬が先行するのはいかがだろうか。柔軟な仕組みとしておき、後に整合性をとれるようにしておくべき」と要望。
 厚労省の宇都宮医療課長は「病床機能報告制度でいわれる『高度急性期』が、今回の厚労省提案(亜急性期等の併設不可)を満たさなければいけないわけではない。社会保障・税一体改革においては、高度急性期を18万床整備する考えを示しており、より広範な病院が対象になろう。病床機能報告制度との整合性がとれるように配慮して検討していきたい」とコメントしている。
 
 
◆25年度の後発品使用状況調査報告、患者は効き目・副作用を重視
 
 またこの日は、24年度改定の結果検証調査(25年度調査)のうち「後発医薬品の使用状況」について結果速報が提示された(p269〜p396参照)。
次のような点が目立つ。
●全処方せんにおける「すべてが後発品への変更不可」となっているものの割合は18.5%
●一般名で処方された医薬品における後発品の選択割合は59.6%
●後発品を積極的に調剤していない医薬品としては、「精神神経用剤、催眠鎮静剤、抗不安剤」等がもっとも多く40.7%
●薬局が後発品使用促進について医師に望むこととしては、「後発品の銘柄指定をしない」「患者が後発品使用を希望している場合に、処方せんに『変更不可』の署名を行わない」などが多い
●病院・診療所において後発品備蓄に当たって重視する点としては、「安定供給」「治療効果の同等性、副作用リスクの小ささ」などが多い
●病院・診療所において後発品使用促進のために必要なことしては、「厚労省による品質保証が十分であることの周知徹底」が圧倒的に多い
●診療所においては、63.5%が「一般名処方の経験あり」
●病院・診療所が後発品使用促進について望むこととしては、「厚労省による品質保証が十分であることの周知徹底」が圧倒的に多い
●患者が先発品から後発品への変更をしたきっかけとしては、「薬剤師からの説明」が圧倒的に多い
●患者の後発品に対する考え方を見ると、「こだわらない」がもっとも多く42.0%、次いで「できれば使いたい」32.2%が多いが、15.4%が「できれば使いたくない」と考えている。
●患者が「いくら安くても後発品は使用したくない」と考える理由としては、「効き目、副作用に不安がある」が圧倒的に多い
 
 
◆肥満症治療薬、委員から「保険収載すべきか」との疑問多数出される
 
 このほか、14成分24品目の新薬について薬価収載が審議された(p3〜p37参照)。
 
 このうち、食事療法・運動療法を実施しても体重減少が見られない2型糖尿病および脂質異常症を合併する肥満症(BMI25以上)治療薬の【セチリスタット】(武田薬品)(p7〜p9参照)については、効果が小さい(体重減少効果はマイナス1%)ことや最終目的である「心疾患のリスク減少」の効果が示されていないことなどから、委員から「保険収載すべきだろうか」との疑問が数多く出された。
 これを受け、厚労省保険局の宇都宮医療課長は「保険収載すべきか否かも含めて、一度厚労省内で整理し、改めて諮りたい」と述べ、一旦提案を取下げている。
 
 この点、厚労省保険局医療課の近澤薬剤管理官は、「有効性・安全性が確認され、医療上必要であると薬事承認において判断された場合には、原則として保険収載することになる(生活改善薬などや予防薬を除く)」と説明、ただし「保険収載するか否か、価格を設定するか否かは中医協で判断すべき事項である」とも付言している。
 これまでに新薬として薬事承認されたが保険収載されなかった医薬品はなく(生活改善薬などを除く)、保険制度の根幹に関わるテーマでもあり、厚労省の再提案が注目される。
 
 なお、肥満症治療薬【セチリスタット】以外の新薬は保険収載が承認されている。

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