[DPC] 26年度からDPCIII群病院でも外来データ提出義務化へ

[診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会(平成25年度 第8回 10/30)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 10月 30日

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 厚生労働省は10月30日に、診療報酬調査専門組織の「DPC評価分科会」を開催した。
 この日は、退院患者調査の見直しに向けて議論を行ったほか、DPC対象病院からヒアリングを行った。
 
 
◆26年度からDPCIII群病院でも外来データ提出義務化へ
 
 DPC制度においては、「包括支払いによって粗診粗療が生じていないか」という危惧が常につきまとう。
 このため、厚労省ではDPC退院患者の状況を毎年調査するとともに、必要に応じて別途特別調査を行っており、今般、調査の精緻化と効率化を行うための見直し案が提示されたものだ(p18〜p47参照)。
 
 退院患者調査は、DPC病院から提出される(1)様式1(いわばカルテの要約版)(2)様式3(施設の情報)(3)様式4(医科保険診療以外の診療情報)(4)Dファイル(DPC点数表で算定した患者の診療報酬請求情報)(5)EF統合ファイル(出来高で請求した場合の点数情報)(6)外来EF統合ファイル(外来診療患者の医科点数表に基づく出来高点数情報)―といったデータをもとに行われる。
 
 (1)の様式1においては、次のような見直し案が提示されている(p19〜p23参照)。
(i)入退院の経路情報を、『患者調査』(3年に1度行われる厚労省の統計調査)に合わせて細分化する
(ii)「入院前後の在宅医療の有無」について、新たに記載を求める
(iii)認知症にかかる調査項目(『認知症高齢者の日常生活自立度判定基準』を活用)を追加する(調査対象の75歳以上への限定などが必要)
(iv)入退院時の褥瘡の有無に関する調査項目を追加する
 
 また、(2)の様式3については「稼動病床数」を調査項目に加えてはどうか、(3)の様式4は「(1)の様式1に統合」してはどうかとの提案も行われた(後者については移行期間が必要との指摘あり)(p23参照)。
 
 さらに、こうした調査結果の取扱いについて、次のような提案も行われている(p24〜p26参照)。
●DPC制度に経時的に特徴的な変化が起きていないかをモニタリングし、毎年、中医協総会に報告する(直近の5年分を定例報告)
●定例報告結果から、「重点的に評価すべき事項が生じ、追加集計が必要である」と判断された場合には、追加集計の前にDPC評価分科会で『仮説』を明確にする
●退院患者調査の集計で検証が難しい場合には、適宜、特別調査を行う(従前どおり)
 
 このほか、現在、I群、II群のみで義務化されている(6)の外来EFファイル提出が、III群病院にも義務化される方向が示されている。これは、すでに92%のIII群病院が外来EFファイル提出を行っていることによるもの(p27参照)。
 厚労省保険局医療課の担当者は、「EFファイルは、レセプトデータダウンロード形式であり、大きな負担はないであろう」と見通している。
 
 
 委員間の議論では、(1)の(i)入退院の経路情報細分化について「そこまでする必要があるのだろうか。仮に細分化したとして、データをどう活用するのか」という疑問が複数の委員から出された。
 これに対し美原委員(脳血管研究所附属美原記念病院院長)は「DPC病院であっても、慢性期医療や介護に関心を持つべきである。介護施設は、特養ホーム、老健施設、介護療養型医療施設の3施設でまったく異なる。また、同じ老健施設であっても在宅復帰型と特養のような終の棲家型に分かれるなどしている。自院を退院した患者がどうなったのかをしっかりとみる必要がある」と述べ、細分化の必要性を強調している。
 
 この点について厚労省医療課の担当者は、「美原委員のご指摘はもっともである。しかし、医療現場の負担にも配慮しなければならず、再度検討してご提案したい」とコメントするにとどめている。
 
 
◆持参薬の取扱いや、救急医療入院など現場の問題点浮かび上がる
 
 この日は、7つのDPC病院からヒアリングも行われた。
 これは、機能評価係数IIなどの見直しにあたり、「現場の声を踏まえることで、より良い見直し案が策定できる」との考え方によるものだ。
 
ヒアリング対象となったのは、以下の病院である(p57参照)。
(1)救急医療入院の割合が著しく高い病院
●医療法人社団 徳成会 八王子山王病院
●公益社団法人地域医療振興協会 東京ベイ・浦安市川医療センター
 
(2)後発品使用割合が著しく高い、あるいは低い病院
●国立病院機構 九州がんセンター(著しく高い)
●順天堂大学医学部附属静岡病院(著しく低い)
 
(3)持参薬の割合が著しく高い、あるいは低い病院
●医療法人 豊仁会 三井病院(著しく高い)
●国立病院機構 弘前病院(著しく高い)
●山梨大学医学部附属病院(著しく低い)
 
 
 (1)の救急医療入院割合の高さは、機能評価係数IIのうち「救急医療指数」などに結びつく(p49〜p51参照)。
 この点、2病院のヒアリングからは「『救急医療』と病院が解釈する入院には、とても大きな幅がある」といった点が明らかになったといえよう。
 委員からは、暗に「それが救急入院に該当するのか?」と質す意見が出され、若干、厳しい雰囲気となった。
 厚労省医療課の担当者は、「A205【救急医療管理加算】の算定にもあやふやな部分があり、場合によっては出来高点数の見直しも必要になるかもしれない」ともコメントしている。
 救急医療指数について、何らかの見直しが予想される。
 
 (2)の後発品については、中医協総会において「DPCの機能評価係数IIで、何らかの形で後発品使用割合を評価する」方向が了承されている(p4〜p17参照)。
 そこで、「どのような形で評価するかを検討する」ために、本ヒアリングが行われた面もある(p52〜p53参照)。
 この点、後発品割合の高い九州がんセンターでは、「国立病院機構本部で厳しい目標(後発品使用割合)が設定され、数字で評価されるようになった。当初は後発品割合が低かったが、薬剤科が少しずつ後発品使用を提案するなどの努力をし、現在の数値になっている」とコメントしている。
 一方、割合の低い順天堂大静岡病院では、「経営者としては後発品を使用したいが、現場の理解を十分に得る必要がある」と述べ、ゆっくりと後発品使用割合が高まっている点を強調している(p58〜p61参照)。
 
 なお、後発品使用割合の評価については、「DPCにおいては2重評価になる」との指摘もあり、包括部分に導入するのか、出来高部分(手術や退院時処方など)に導入するのかも含めて今後の議論が待たれるところだ。
 
 (3)の持参薬については、割合の高い病院では「病棟薬剤師がきちんとチェックしている」ことを強調(p54〜p55参照)(p62〜p68参照)。
 一方、割合の低い病院では「安全確保のために持ち物をすべてチェックし、原則として持参薬使用は認めていない」と説明している。
 持参薬を用いれば病院の負担は減るが、その管理が極めて難しい。
 この点、持参薬割合の低い山梨大病院では「年間8000万円の持出しが生じる計算だが、患者の安全には代えられない。もっとも、病棟薬剤師の配置が進めば別の対応も考えられよう」と述べている。
 
 この問題について厚労省医療課の担当者は「非常に難しい問題だ。持参薬を認めない場合には、安全管理が確保できるが、それは大病院でなければできない。診療科の少ない中小病院では、備蓄薬の種類も少なく、持参薬を一定程度認める必要があるかもしれない。ただし、その場合には『薬剤師による十分なチェック』などが求められるが、それをすべての病院に求めることも難しい」と述べ、問題の複雑さを強調している。
 
 持参薬の取扱いをどう考えるかについては、26年度改定よりも先を見据えた議論を待つ必要があろう。

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