[薬価] 外国平均価格調整の上限1.25倍提案等に、メーカーサイドは反発

[中央社会保険医療協議会 薬価専門部会(第90回 8/21)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 08月 31日

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厚生労働省は8月21日に、中医協の薬価専門部会を開催した。
 この日は、厚労省当局から、次期薬価制度見直しに向けて(1)外国平均価格調整(2)ラセミ体医薬品光学分割(3)医療用配合剤の特例(4)投与期間延長のためだけの製剤に係る規格間調整―について改正案が提示された。
 
 (1)の外国平均価格調整とは、「我が国の医薬品価格(薬価)が、外国と比べて極端に高く、あるいは極端に安くならないようにする」ことを目的としたもの。具体的には、外国価格の平均と比べて、「薬価が高い(1.5倍超)場合には、1.5倍にまで引下げる」、「薬価が安い(0.75倍未満)場合には、0.75倍にまで引上げる」というもの。
 この点、下部組織である薬価算定組織からは、より適正な国内価格を実現するために、「薬価が高い場合の基準を引下げてはどうか」等の提案が前回(7月31日)会合で行われていた。

 具体的には、次の2つの見直しが提案されている(p4〜p18参照)。
(i)現在の「薬価が外国価格平均の1.5倍を超える場合に調整する」という仕組みを、「1.25倍を超える場合に調整する」と改める
(ii)「外国価格平均」を算出するにあたり、現在は「最高価格が最低価格の5倍を超える場合には、その最高価格を除外する」としているところを、「3倍を超える場合には除外する」と改める

 (i)によって、現在は価格調整(引下げ)が行われない「外国価格平均の1.25倍超から1.5倍までの医薬品」についても価格引下げの対象となり、さらに、引下げ幅もこれまでより大きくなる。
 厚労省の調査によると、平成22年度〜25年5月に収載された新薬成分(170成分)のうち、現行ルールでは15成分が調整対象となっている(引下げ対象が6成分、引上げ対象が7成分)が(p7参照)、新ルールでは引下げ対象が9成分に拡大する見込みだ(p15参照)。

 また、(ii)は、たとえば「アメリカで3300円、ドイツで1000円、イギリスで2000円」であった場合に、最低価格はドイツの1000円、最高価格はアメリカの3300円である。すると現行ルールでは、「最高価格のアメリカは、最低価格のドイツの5倍(5000円)を超えていないので、外国価格平均は2100円」であるが、新ルールでは、「最高価格アメリカは、最低価格ドイツの3倍を超えるため、計算から除外され、外国価格平均は1500円」となる。
 したがって、(ii)によって外国価格平均が下がり、価格調整対象が拡大すると見込まれる。
 厚労省の調査によると、平成22年度〜25年5月に収載された新薬成分(170成分)のうち、現行ルール(5倍ルール)では7成分が対象となったが、新ルール(3倍ルール)では対象が25成分に拡大する見込みだ(p18参照)。

 その他の見直しについては、次のような方向性を厚労省が提示している。
●ラセミ体医薬品光学分割ルール(算定された薬価の80%に抑えられる)については、当該ルールの除外対象を限定する(「光学分割により、当該ラセミ体に比べて高い有効性・安全性を有することが客観的に示されている場合」に限定する)(p19〜p24参照)
●医療用配合剤特例については、「薬価収載されていない『新規性のない成分』を含む配合剤(たとえば、市販薬で使用されている有効成分の配合)については、収載されている単剤のみの薬価」とする(p25〜p27参照)
●投与間隔延長のためだけの製剤については、「通常最大用量を超える用量の規格」の算定に使用される算定式に準じて、規格間比の上限を0.5850とする(これにより、含量が2倍となった場合でも、薬価は1.5倍に抑えられる)(p28〜p31参照)


 こうした見直し提案について、中医協委員の多くは賛同する見解を述べている。
 たとえば安達委員(京都府医師会副会長)は、「提案理由は非常に明確だ。異論はない」と明確に賛意を表明している。

 これに対しメーカーサイドの専門委員は、「このままでは、見直しが固まってしまう」として反対意見を述べている。
 加茂谷専門委員(塩野義製薬株式会社常務執行役員)は、「いずれの見直し案も、薬価の引下げを行う、あるいは引下げ対象を拡大する内容だ。しかし、見直しにあたっては、例外事例の是正が根拠になっている。いずれも例外事例なのだから、実態を総合的に見て『限定的』な見直しとすべきではないだろうか」と要望している。
 また、土屋専門委員(エーザイ株式会社代表執行役専務)も「例外ケースをもってルールを変更するのはいかがだろうか。慎重に議論してほしい」とコメントしている。

 厚労省当局は、これらの意見を総合し、次回(9月開催予定)会合で、製薬メーカー等からのヒアリングを行う考えだ。



 なお、この日の会合では、厚労省当局から各種加算(画期性加算、有用性加算I、有用性加算II)の算定状況や、薬価算定における不服申立件数なども報告された(p32〜p38参照)。
 平成22年度〜25年5月までに、類似薬効比較方式では102成分が薬価収載され、うち48件についてメーカーから加算の申請が行われたが、実際に加算が認められたのは23件にとどまっている(p35参照)。
 また、同期間には16件の不服申立てがあったが、うち5件について何らかの対応がとられている(p38参照)。
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