[診療報酬] 入院医療分科会が中間取りまとめ、7対1等の特定除外廃止を提案

[診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会(平成25年度 第8回 8/7)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 08月 27日

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 厚生労働省は8月7日に、診療報酬調査専門組織の「入院医療等の調査・評価分科会」を開催した。 この日は、中間取りまとめに向けた議論を行い、分科会長一任という形で決着した。近く武藤分科会長(国際医療福祉大大学院教授)が、中医協総会に中間取りまとめの内容を報告する。

 分科会では、前回(7月31日)にも中間取りまとめ案について議論を行っており、そこでの意見・提案を踏まえて、厚労省当局から修正版が提示された。
 議論は、大きく(1)一般病棟入院基本料(p8〜p14参照)(2)亜急性期入院医療(p15〜p16参照)(3)医療提供体制が十分でなく、医療機関の機能分化を進めることが困難な地域に配慮した評価(p17〜p18参照)(4)特殊疾患病棟や障害者施設等から療養病棟に転換した場合の経過措置(p19〜p20参照)(5)診療報酬点数表の簡素化(p21〜p22参照)(6)医療機関における褥瘡対策(p23〜p24参照)―の6テーマについて、現状と課題を分析したうえで、今後の方向性を示している。

 (1)の一般病棟入院基本料では、主に「7対1」について機能と役割を明確にし、その機能・役割を果たすにふさわしい要件(施設基準)について検討している。
 分科会が提示した「7対1の機能・役割」は、主に『複雑な病態をもつ急性期の患者に対し、高度な医療を提供すること』というもの(p9参照)。
 ここでは、(i)特定の領域に特化し標準化された短期間の医療を提供すること(ii)症状の安定した病態の患者に対して長期療養を提供すること―は、7対1に期待される役割・機能でないことを明確にしている。
 この機能を果たすにふさわしい要件を設定するため、分科会では、(i)から「短期滞在手術基本料の対象となる患者を平均在院日数の計算対象から外す」、(ii)から「いわゆる特定除外制度を廃止する」ことを導いている(p9〜p10参照)。

 分科会の議論では、この方向を是とする意見が多かったが、診療現場を預かる委員からは「慎重に考えるべき」との意見もあった。
 そのため、中間取りまとめでは、「一律に制度を見直すのではなく、個別の手術・検査・特定除外項目について検討する必要がある」、「13対1等と、7対1等とで特定除外患者の病態は異なるため、同様の取扱いとするかは慎重に判断するべき」といった意見があったことを紹介している(p9〜p10参照)。

 ところで、平成22年7月時点で、13対1病床は3万3668床、15対1は6万6822床にとどまるのに対して、7対1病床は32万8518床、10対1は24万8606床もある(7対1・10対1は、13対1・15対1のおよそ5.7倍)(p42参照)。このため特定除外制度廃止等が医療全体に与えるインパクトも大きいことなどから、「一定期間の経過措置を設けるべき」との意見があったことも紹介している(p10参照)。

 経過措置については、この日の議論で、複数の委員から「期間を限定すべき」との意見が出されている。
 高智委員(健保連理事)は、「24年度改定で、13対1等において特定除外を廃止した。その際には、半年間の経過措置を設けている。7対1等についても、これを参考に経過措置を設定するべき」と提案した。
 嶋森委員(東京都看護協会会長)も、「経過措置は一定期間で区切り、かつ長期にならないようにすべき」とコメント。
 さらに、武久委員(日本慢性期医療協会会長)は、「療養病棟に包括評価を導入した際には、3ヵ月しか経過措置が設けられなかった(18年度改定)。急性期の経過措置が延び延びになっては困る」との意見を述べている。

 この点、厚労省保険局医療課の担当者は、「(上記のように)7対1病床は多く、13対1等と同じ程度の経過措置で十分かどうかは慎重に判断する必要がある」と述べている。


 また「7対1の役割・機能」にある、「複雑な病態をもつ急性期の患者」を診るにあたり、現在は「重症度・看護必要度の基準を満たす患者を15%以上入院させること」との施設基準が設けられている(p44参照)。
 しかし、医療現場や識者からは「重症度・看護必要度を判定する項目が、急性期患者をピックアップするにふさわしくないのではないか」との指摘があり、分科会では項目の見直し(追加を含める)に向けた議論を行ってきた。
 その結果、中間取りまとめでは、次の4つの提案を行っている(p11〜p12参照)。
(a)時間尿測定および血圧測定を削除する
(b)創傷処置について、褥瘡の発生状況を把握するためにも、「褥瘡の処置」と「それ以外の手術等の縫合部等の処置」を分けた項目とする
(c)呼吸ケアについては、喀痰吸引を定義から外す
(d)「計画に基づいた10分間以上の指導」「計画に基づいた10分間以上の意思決定支援」「抗悪性腫瘍剤の内服」「麻薬の内服・貼付」「抗血栓塞栓薬の持続点滴」をA項目(モニタリングや処置の有無)に追加する

 もちろん、この4つの見直しすべてが26年度改定で実現するかどうかは明らかではない。中医協総会に場をうつい、この提案のうちどれを採用するのかを議論することになる。

 この日の分科会では、石川委員(千葉県勤労者医療協会理事長)は、「『10分間以上の指導』などについて、分科会では充実した議論をしていない。指導の具体的内容などを含め、中医協総会で十分に議論してほしい」と注文をつけている。
 また、安藤委員(西福岡病院理事長)は、「看護必要度の項目を変えた場合、現在の重症患者判定基準となっている『A項目2点以上、B項目(患者のADL等)3点以上』も見直す必要が出てくるのではないか」とコメントした。この点も、中医協総会で議論されることになろう。


 「7対1の役割・機能」としては、このほかにも「高度な医療の提供」が期待されている。
 そのため中間取りまとめでは、(ア)DPCデータの提出(イ)亜急性期等への転院・転棟も含めた在宅復帰率(ウ)早期からのリハ等による介入―を新たに施設基準として盛込んではどうかと提案している(p13〜p14参照)。

 このうち(ウ)について厚労省保険局医療課の担当者は、「早期リハの目的は、入院中のADL低下を防止することにある。この目的を実現するために、『リハ専門職を一定数配置すること』や『ADLを低下させないこと』などの施設基準を設定していく。手法はさまざまで、具体的な議論は中医協総会で行うことになろう」とコメントしている。

 なお、前回会合では、高智委員や神野委員(社会医療法人財団董仙会理事長)から「日本医療機能評価機構やJCI(Joint Commission International)の認定・認証を求めてはどうか」との提案が行われていた。
 中間取りまとめでは、この提案に対し「医療機関は自らの質を向上させる努力をしており、必ずしも第3者評価を受ける必要はない」「評価を受けるコスト等の問題をどうクリアするのか」といった慎重意見があったことを付記している(p14参照)。


 ところで、(ii)の特定除外見直し論議の中で、一部委員からは「7対1の長期入院患者は病態が重い。療養病棟等で適切な医療を提供できるのだろうか」との指摘がなされていた。この点について、武久委員は、日本慢性期医療協会の役員病院(70施設)を対象とした調査結果(p126〜p146参照)をベースに、「多くの療養病棟では、医療区分2・3の重症者を診ている。30%程度の療養病棟では医師・看護師の加配(施設基準より手厚い配置)を行っており、一般病棟と変わらない状態だ」と述べ、療養病棟でも適切な医療提供を行える準備が整っていることを強調している。



 (1)で示したように、7対1病棟等のいわば「絞込み」を行った場合、7対1の算定ができなくなる病棟や、「もう少し入院医療が必要だが、退院しなければいけない」患者が数多く出ることが予想される。
 この受け皿として分科会は、「亜急性期病床」に着目した。

 現時点で、亜急性期病床については「機能・役割が不明確である」「患者の病態は重くないが、高点数を算定している」などの批判がある。
 そこで分科会は、亜急性期の機能として(i)急性期病床からの患者の受入れ(ii)在宅等にいる患者の緊急時の受入れ(iii)在宅への復帰支援―の3点が重要であることを確認(p15参照)。
 そのうえで、この3つの機能を果たすために必要な要件等を、次のように整理している(p16参照)。
●病棟単位の届出とする(現在は病室単位)ことや、病床種別にかかわらず届出を認めることとする
●施設基準としては、「人員配置」「重症度・看護必要度((i)の機能と強く関連)」「二次救急病院の指定や、在宅療養支援病院の届出((ii)の機能と強く関連)」「在宅復帰率((iii)の機能と強く関連)」などを設定する
●DPCデータ提出を求める

 このうち「二次救急指定」を施設基準とすることに石川委員は強く反対していたが、武藤分科会長の「例示であり、いくつかの基準の中から選択することになるのではないか」とのコメントを受け、一応の納得を示している。

 またDPCデータ提出に関しては、「褥瘡や認知症の発生状況も把握する必要があろう。一定のカスタマイズをしてはどうか(池田委員:国際医療福祉大教授)」、「DPCデータをすべて準備するのは負担が大きい。簡易版を検討してはどうか(藤森委員:北大病院地域医療指導医支援センター長)」などの提案がなされている。



 (3)は「医療資源の乏しい地域における中小病院の評価」という問題だ。
 24年度改定では、診療側委員の強い要望を受け、(i)自己完結している(患者流出率20%未満)(ii)小規模である(人口密度が1キロ平方メートルあたり300人未満)(iii)医療機関が少ない(病院・病床密度が一定以下)―などの30医療圏において、「病棟単位の入院基本料届出を認める」などの特例措置が設けられた(p89〜p93参照)。

 分科会では、この特例措置を存続させるとともに、こうした地域の中小病院では「急性期から慢性期までのさまざまな医療を提供しており、その機能は、新たに亜急性期に期待されるものと類似している」ことから、「亜急性期の今後の評価体系に準じた評価」を導入してはどうかと提案している(p17〜p18参照)。
 30の医療圏では、「24年度に設けられた特例」と、「新たな亜急性期に準じた評価」のいずれかを選択するというイメージだ。



 (4)の特殊疾患病棟等については、「療養病棟に転換した場合の経過措置(患者の医療区分を重く評価できる)」が設けられている(p97〜p98参照)が、利用実態がほとんどない(p99〜p103参照)ため廃止する方向が示された(p19参照)。

 なお、この点に関連し、中間取りまとめでは、「特殊疾患病棟等の対象とする患者像や、病床の機能について見直すことが必要」との見解も示している(p19〜p20参照)が、武久委員は、「特殊疾患病棟等には重い病態の患者が入院しており、継続が必要」との意見を述べている。
 厚労省当局は、経過措置廃止後に特殊疾患病棟等の患者実態等について把握・検証を行う考えだ。



 (6)の褥瘡対策については、急性期病棟においても「褥瘡の定義を明確にし、有病率や発生率等の基礎データを収集する」方向を中間取りまとめは示している(p23参照)。
 この点について、厚労省医療課の担当者は、「療養病棟のように、毎日、全患者について褥瘡状態をチェックする手法もあれば、DPCの様式1に項目を追加するといった手法もあろう」と述べ、具体的なデータ収集方法は中医協総会での議論に委ねることを示唆している。



 なお、中間取りまとめは、『おわりに』という章が新たに設けられた。ここでは、「高齢化の進行に伴い、7対1病院のみで患者の必要とする医療を完結することは難しい」実態を指摘し、「病床機能の分化を進める必要がある」旨の記述で提言を締めくくっている(p24参照)。
 この点、安藤委員は「7対1病棟から亜急性期等へ誘導していくには、診療報酬上のインセンティブと、病院の従事者への明確なメッセージが必要である」と述べ、『おわりに』の記述を充実するよう求めている。
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