[診療報酬] 7対1一般病棟や、亜急性期病床の見直し案に、診療側が猛反論

[中央社会保険医療協議会 総会(第247回 8/21)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 08月 27日

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 厚生労働省は8月21日に、中医協総会を開催した。
 この日は、下部組織である「入院医療等の調査・評価分科会」から報告を受けたほか、社会保障制度改革国民会議の状況確認、新たな医療機器・医薬品の承認などを行った。

 「入院医療等の調査・評価分科会」では、(1)7対1一般病棟(2)亜急性期病床(3)医療資源が不足する地域の診療報酬(4)診療報酬の簡素化―などについて集中的に議論を行い、先般中間とりまとめを行った。

 その概要をおさらいすると、次のようにまとめることができる(p118〜p140参照)(p141〜p243参照)。
(1)7対1一般病棟(p122〜p128参照)
●機能・役割を、主に『複雑な病態をもつ急性期の患者に対し、高度な医療を提供すること』と明確にする
●平均在院日数計算の対象から、短期滞在手術基本料の対象患者を除外する
●特定除外患者について、「療養病棟入院基本料1と同じ点数を算定する」「出来高点数の算定を認めるが、平均在院日数計算の対象とする」のいずれかとする(10対1一般病棟においても同様)
●看護必要度・重症度の項目について、「時間尿測定」「血圧測定」を削除するなどの見直しを行う(7対1に限らず)
●DPCデータ提出、亜急性期等への転院・転床を含めた在宅復帰率、早期リハ等の介入ができる体制、などを施設基準に加える

(2)亜急性期病床(p129〜p130参照)
●機能・役割を、(i)急性期病床からの患者の受入れ(ii)在宅等にいる患者の緊急時の受入れ(iii)在宅への復帰支援―の3点とする
●病床種別にかかわらず届出を認める
●施設基準としては、「人員配置」「重症度・看護必要度」「二次救急病院の指定や、在宅療養支援病院の届出」「在宅復帰率」などを設定する
●DPCデータ提出を求める

(3)医療資源が乏しい地域の診療報酬(p131〜p132参照)
●24年度改定で導入した特例は継続する
●「亜急性期の今後の評価体系に準じた評価」も導入する

(4)その他(p133〜p137参照)
●特殊疾患病棟等における「療養病棟に転換した場合の経過措置(患者の医療区分を重く評価できる)」について、利用実態がほとんどないため廃止する
●有床診療所について、入院基本料の施設要件から「管理栄養士配置」を除外する
●急性期病棟においても、褥瘡の定義を明確にし、有病率や発生率等の基礎データを収集する

 もちろん、分科会では上記提言に対する異論・反論も数多く出されており、中間まとめには、それらが随所に併記されている。


 この中間まとめをベースに行われた議論では、診療側の委員を中心に厳しい意見が相次いだ。

 まず、「7対1一般病棟の機能・役割」について、鈴木委員(日医常任理事)は「7対1の削減ありきでつくられた恣意的なものに見える。急性期の定義が『患者の病態が不安定な状態から、治療によりある程度安定した状態に至るまで』(p123参照)という点は納得できるが、7対1一般病棟が、急性期の中で、さらに『複雑な病態を持つ患者』を対象とし、『高度な医療を提供する』ものであるとの共通見解はあるのだろうか?」と指摘。
 鈴木委員は、会合終了後の記者会見にも同席し、「中等症、軽症の患者であっても数が多くなれば、治療や看護には相当の人手が必要になる。人員配置の薄い病院では、必要な医療は提供できず、残った数少ない7対1に患者が殺到することも考えられる。医療現場を混乱させてはいけない」と強調している。
 また西澤委員(全日病会長)も、「『複雑な病態』という点が気になる」と述べ、鈴木委員と同様に中医協総会で「一からの議論が必要」との見解を示している。
 
 
 「重症度・看護必要度の判定項目」に関して、中間まとめでは『10分間以上の指導・意思決定支援』を新たに追加してはどうかとの提案がなされている(p126参照)。
 この点、嘉山委員(国立がん研究センター名誉総長)からは、「説明者の力量によって、長時間の説明でも納得していただけない場合もあれば、数分の説明で理解を得られる場合もある。医療現場において10分間という基準を導入するのは好ましくない。かつて外来管理加算の5分ルールが廃止された経緯を思い出してほしい。『十分な説明』などの表現に改めるべきである」との指摘がなされた。
 これには、万代委員(日病常任理事)も同様の指摘を行っている。
 この点、厚労省保険局医療課の担当者は、「分科会でも『10分間以上の指導』等の内容が明確でないとの指摘をいただいている。今後、嘉山委員らの指摘も踏まえて、厚労省でどのような内容とするべきかを詰め、中医協総会に提案したい」とコメントしている。


 さらに、亜急性期病床の見直しについても、診療側の委員は「post acute(急性期後)が亜急性期の対象であることに疑いはないが、sub acute(軽度急性期)は急性期病床が対応すべきであろう。これを亜急性期に含めて考えることは好ましくないのではないか」との見解だ。
 西澤委員は、「在宅患者が急変した場合、まず急性期病院に入院し、回復を待って亜急性期病院に転院・転床するという、医療本来の流れに沿った姿で考えるべき」と指摘。
 鈴木委員は、会合後の記者会見の席で、「救急患者には若年者から高齢者までおり、高齢者は亜急性期で、若年者は急性期でなどという振分けはできない。今後、亜急性期の救急負担が重くなれば、救急から撤退する病院も出てこよう。すると、残った救急病院に患者が殺到し、現場が混乱するのではないかと危惧している。日医と四病院団体協議会は、先般、医療提供体制についての提言を行った。あれは、救急をはじめとする医療提供体制の崩壊を危惧しているからだ」と説明している。
 ただし鈴木委員のコメントに対し、厚労省医療課の担当者は「現在でも救急現場では、軽症者と重症者のトリアージをし、適切な救急病院に搬送している。我々は、救急医療提供体制を変えようとは考えていない」と述べ、中間まとめへの理解を求めている。

 また中間まとめでは、亜急性期の届出を療養病棟にも認めてはどうかと提案しており(p130参照)、この根拠として「特定除外患者の受入れ、緊急入院患者の受入れ、在宅復帰率について7対1一般病棟と同程度の機能をもつ療養病棟が一部存在していた」との調査結果があげられている(p129参照)(p198〜p200参照)。
 この点、鈴木委員や安達委員(京都府医師会副会長)は、「やや乱暴ではないか。厚労省が根拠としている調査結果では、7対1と同程度以上の緊急入院患者受入れなどをしている療養病棟は『ごくわずか』にすぎない(p198〜p200参照)。これをもって、療養病棟にも亜急性期の届出を認めるのはいかがなものだろうか」との疑問を投げかけている。


 一方、支払側の委員は、中間まとめに対し一定の評価をしている。
 白川委員(健保連専務理事)は、「データに基づいた議論を行い、方向性を示している。そこには論理的な整合性もとれている」とコメント。ただし、白川委員は「現実的な実現可能性にも配慮すべきであり、医療現場の混乱を招かないように、どのようにソフトランディングしていけるかを議論すべきであろう」とも付言している。

 また矢内委員(全国健康保険協会東京支部長)も白川委員と同様に、中間まとめの方向性を高く評価。そのうえで、「7対1や亜急性期の機能などは、一般的な感覚ともマッチしていると思う。これらの機能・役割などをはっきり詰めなければ議論が進まない」と述べ、診療側委員の中間まとめに対する批判を牽制している。


 ところで、上記(4)のうち「有床診療所における管理栄養士配置」に関連し、安達委員から「地方部では管理栄養士配置が難しい。病院でも、地域の実情に応じた柔軟な管理栄養士配置を認めてはどうか。たとえば、病院が献立をつくり、それを院外の管理栄養士に送付し、チェックを受けたうえで病院にフィードバックしていただき、献立を考え直すといった仕組みを考えてみてはどうか」と提案している。

 また、(3)の医療資源の乏しい地域に配慮した診療報酬については、鈴木委員や西澤委員から「24年度改定で設けた特例措置がほとんど利用されていない状況(p131参照)(p204〜p206参照)は深刻に受止めなければいけない。医療現場には、『このような要件が加われば、特例を利用できるのに』という思いもあろうかと思う。そのあたりをもう少し詳しく調べてほしい」との要望が出されている。
 一方、白川委員は「24年度の特例措置は『当然の措置』ではない」と述べている。このコメントの背景には、「医療資源が乏しいからといって『高かろう悪かろう』という医療を認めることはできず、特例措置そのものが、安易には採用できない仕組みとなっている」という点がある。このため、特例措置の採用を増加させるための要件緩和や対象地域拡大などは難しそうだ。


 このように見てくると、診療側と支払側で見解がかなり異なっているように思える。しかし、厚労省医療課の担当者は、「大きな方向についてバラつきはないのではないだろうか。ただし、26年度改定でどこまで踏み込むかなどの点では、委員間に意見の差があると思う。現場に混乱が出ないように、通知レベルあるいは疑義解釈レベルでどのような対応が必要になるのかを、今後の大きな論議をする中で探っていく必要があろう」とコメントしている。

 

 ところで、この日の総会では、DPC準備病院の募集等や、新たな医療機器の保険収載などについても了承している。

 DPCについては、「新規準備病院の募集期間を25年9月1日〜30日とする」「準備病院から対象病院への移行について『25年9月30日時点で要件を満たす』こととする」との見直しが了承された(p117参照)。

 また、新たに保険収載される医療機器は次のとおり(p3〜p27参照)。
●上腕骨に挿入された髄内釘を固定するための横止めスクリューである『MultiLoc ヒューメラルネイルシステム』(シンセス社、区分C1・新機能)
●下顎骨再建術に用いるチタン製の体内固定用プレートである『AO MatrixMANDIBLE Reconstructionシステム』(シンセス社、区分C1・新機能)
●自動植込み型除細動器である『イレスト 7 ICD Pro』『イレスト 7 ICD DF4 Pro』『イレスト7 CRT-D Pro』(バイオトロニックジャパン社、区分C1・新機能)
●経皮的心臓弁留置に用いるバルーン拡張型人工心臓弁システムである『サピエンXT』(エドワーズライフサイエンス社、区分C2・新機能・新技術)
●循環器用X線透視診断装置とともに使用し、磁力によって専用カテーテルの屈曲を制御する『マグネティックナビゲーションシステム ナイオビ』(シーメンス・ジャパン社、区分C2・新機能・新技術)
●骨盤部出血等の経カテーテル的止血術に用いる多孔性ゼラチンスポンジである『セレスキュー』(アステラス製薬社、区分C2・新機能・新技術)


 一方、新たに保険収載される医薬品は、抗てんかん剤である『イーケプラドライシロップ50%』など12成分25品目(p28〜p65参照)。


 さらに、保険診療との併用が認められる先進医療として、次の2技術が報告された(p68〜p116参照)。
●早期乳がん(長径1.5cm以下)に対するラジオ波熱焼灼療法
●成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)のくすぶり型と慢性型に対する、インターフェロンα/ジドブジン併用療法
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