[精神医療]職場のパワハラ、病院受診などのメンタルケア対応は極僅か
[平成24年度 厚生労働省委託事業「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」-厚生労働省(H24.12.12)]
精神科医療行政ニュース - 2012年 12月 21日
厚生労働省は12月12日に、国としては初めてとなる「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表しました。調査にあたっては、2012年の7月から9月にアンケート調査を行い、企業調査は計4,580社から、従業員調査は計9,000名から回答を得ています。
従業員からの相談等を受ける「相談窓口」の設置状況では、企業全体の73.4%は設置しており、従業員1,000人以上の企業では96.6%なのに対し、従業員99人以下の企業では37.1%と低い水準にとどまっていることが分かりました。相談窓口で受付けている相談テーマを見ると、「セクシャルハラスメント」「パワーハラスメント」「メンタルヘルスの不調」「コンプライアンス」の順で多くなっています。
実際に過去3年間にパワーハラスメントに関する相談を1件以上受けたことがある企業は45.2%で、うち実際にパワーハラスメントに該当する事案のあった企業は32.0%となっています。一方、従業員に関しては、過去3年間にパワーハラスメントを受けたことがあると回答した者は25.3%で、4人に1人はパワーハラスメントの被害にあっていることが分かりました。パワーハラスメントの内容については、企業調査・従業員調査ともに「精神的な攻撃」が際立って多いことが報告されています。
従業員調査から「パワーハラスメントがあった」と認めた企業は11.6%でした。このうち、パワーハラスメントを受けていると認めた後の勤務先の対応では、「会社として謝罪」「パワハラを行った人を配置転換した」「パワハラを行った人に謝罪させた」「パワハラを行った人を処分した」などが相対的に高くなっている(いずれも10%台)一方で、「何もしなかった」という勤務先が20%に至るという結果があかるみになりました。もっとも、パワハラを受けた人に対して、「病院の受診、休職、復職支援等のメンタルケアをした」「カウンセリングを受診するように指示した/薦めた」という発展的な対応をした勤務先は、極僅かでした。
パワーハラスメントの予防・解決への取り組みは、企業全体の80.8%が「パワハラの予防・解決を経営上の課題として重要」と認識しているものの、実際に実施している企業は45.4%に留まっており、中でも、従業員99人以下の企業においては18.2%と少ないことが分かりました。具体的な取り組みには、「管理職を対象に講演や研修会を実施」「就業規則などの社内規定に盛り込む」「ポスター・リーフレット等の啓発資料を配布または掲示」といった取り組みが行われています。もっとも、パワーハラスメントの相談がある職場の特徴として「上司と部下のコミュニケーションの少ない職場」が最も多くあがっていることから、パワーハラスメントの予防・解決のための取り組みの効果を高めることと、職場のコミュニケーションの改善は表裏一体の関係にあると分析しています。
実態調査では、パワーハラスメントの予防・解決のための取り組みを進めるためには、(1) 企業全体の制度整備(相談窓口の設置と活用の推進、パワーハラスメントの理解を促進するための研修制度の充実等)(2)職場環境の改善(3)職場におけるパワーハラスメントへの理解促進、の3 点を意識して進めていくことが重要として、その詳細が示されています。