[精神医療]認知症精神科医療、医療と介護の垣根をはらい地域での認知症ケアを

[認知症精神科医療のこれから−地域の中で支える認知症ケアに向けて―ニッセイ基礎研究所 生活研究部門 准主任研究員 山梨 恵子 氏(H24.10.9)]

精神科医療行政ニュース - 2012年 10月 18日

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 109日、ニッセイ基礎研究所は高齢社会研究の一環として、「認知症精神科医療のこれから−地域の中で支える認知症ケアに向けて」と題したレポートを公表しました。

 レポートは、大きく(1)ケアの質の格差(2)増加が懸念される認知症の人の「社会的入院」(3)地域支援体制の鍵は、医療と介護の一体的なケア、の3部構成。

 

 (1)では、認知症ケアにおける現状の課題を整理した図表が示されています。これは、同研究所が平成23年度の老人保健健康増進等事業により実施した「認知症サービス提供の現場からみたケアモデル研究会」においてまとめられたもの。認知症ケアの現場、本人・家族の両面から課題が整理されています。そのうえで、『今、考えていかなければならない課題は、介護業者間や個別専門職間の対応力格差、医療と介護の連携力格差、地域支援力の格差など、様々な場面での「格差」の解消である』と分析しています。

 

 (2)では、厚生労働省の調査分析結果から、『統合失調症の入院患者が減少した分、その空床を認知症患者の受け皿として利用するようなことがあってはならないとの警鐘と読み取ることができる』と述べています。また、『精神科医療が認知症の人の地域生活支援に目を向け、自宅や介護施設等へのアウトリーチ(訪問支援)や外来機能の充実を図っていこうとする今こそ、医療と介護とが双方から歩み寄れるチャンスと捉えることもできる』など分析しています。

 

 (3)では、認知症ケア全般に対する精神科病院の役割と機能が明確になった一方で、退院支援や在宅介護支援に取り組むために、地域づくりにも全力で取り組む必要があることを指摘。BPSD(粗暴行動などの周辺症状)への対応力向上という視点からも、『認知症ケアを担う専門人材の育成や、精神科医療のアウトリーチをいかに認知症地域支援体制に活かしていくかが「鍵」になると考えられる』としています。

 

 最後に、『今度は、(医療と介護の)領域を超えた専門職同士が互いの知識と技術を持ち寄って取り組んでいくことが望まれる』としたうえで、『これまで医療の領域と介護の領域がバラバラの視点で提供してきた認知症ケアを、目的を同じにしながら一体化していく作業でもあるだろう』とまとめています。

 

ニッセイ基礎研究所 生活研究部門 准主任研究員 山梨 恵子

「認知症精神科医療のこれから−地域の中で支える認知症ケアに向けて」

http://www.nli-research.co.jp/report/gerontology_journal/2012/gero12_002.html

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