[精神医療] 医療観察法の施行状況の検討結果が公表される

[心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律の施行の状況についての検討結果(平成24年7月)−法務省・厚生労働省(H.24.7.31)]

精神科医療行政ニュース - 2012年 08月 24日

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731日に厚生労働省は、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(以下、医療観察法)」の施行状況について、検討結果を公表しました。

医療観察法は、平成177月に施行されたもので、心神喪失または心神耗弱の状態(精神障害のために善悪の区別がつかないなど、刑事責任を問えない状態)で、重大な他害行為(殺人、放火、強盗、強姦、強制わいせつ、傷害)を行った者に対して、適切な医療を提供し、社会復帰を促進することを目的としたものです。

医療観察法は、平成2211月、医療観察法附則第4条の規定に基づき、施行日から平成22731日までの間における施行の状況が国会に報告されており、今般、厚労省は法務省とともに、同条の規定に基づき、医療観察法の施行の状況について検討を実施。その結果を取りまとめています。

 検討結果を見てみると、医療観察法の施行後平成227月末までの約5年間に、当初審判において、入院決定がされた者は合計1078人、通院決定がされた者は合計324人、不処遇決定がされた者は合計303人、と報告されています。一方、申立ての却下決定がされた者は合計60人。総決定者1765人に占める割合では、入院決定者が約61%、通院決定者が約18%、不処遇決定者が約17%、却下決定者が約3%という状況だそうです。

 次に、同期間における入院処遇の決定を受けた者は1088人で、平成227月末現在、入院による医療を受けている者は480人で、その入院決定時における主病名は統合失調症圏が84.4%と大部分を占める結果だったといいます。

 検討結果では、地域社会における処遇についてもまとめられています。医療観察法の施行後平成227月末までの約5年間に、地域社会における処遇が実施された者は799人で、このうち通院決定を受けた者は324人、退院許可決定を受けた者は475人と報告されています。地域社会における処遇は、「多くの機関、団体等が関与しており、処遇の実施計画に基づいて適正かつ円滑に実施されるよう保護観察所長は、都道府県ごとに運営要領を作成して運営連絡協議会を開催するなどして、平素から、本制度の処遇に関与する関係機関の緊密な連携の確保に努めている」、と評価しています。

 巻末のまとめでは、入院医療について、指定入院医療機関では、多職種チームが対象者ごとに治療計画を作成した上で、(1)各対象者に応じた適切な医療を提供していること(2)病棟内で定期的に治療評価会議および運営会議を開催して、治療方針の確認・決定(3)適切な治療法を選択することにより、医療の質確保(4)外部委員を加えた倫理会議や外部評価会議の開催で、医療の客観性、透明性を確保するよう努めている、と分析しています。そのうえで、医療観察法の施行状況はおおむね良好であり、総じて、医療観察制度は有効に機能している、と考察し、現時点で早急に医療観察法を改正すべきものではないとの認識を示しています。ただ、同法にはいくつかの課題も指摘されていることから、この検討結果を踏まえ、引き続き必要な取組を進めていく、としています。

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