[改定情報] 地域医療構想の進捗で支払・診療側の認識に差 中医協・総会

[中央社会保険医療協議会 総会(第418回 7/10)《厚生労働省》]

2020年度診療報酬改定ニュース - 2019年 07月 10日

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 中央社会保険医療協議会・総会は7月10日、地域の状況を踏まえた入院医療のあり方や、医療資源の少ない地域への対応などを議論した。このなかで支払側委員は、2025年までの総病床の減少見込み数が3.3万床にとどまっている現状について、地域医療構想に沿った病床機能の分化・連携が進んでいるとは言い難いと不満を表明。診療側は、緩やかにではあるが着実に前進していると反論し、診療報酬で誘導する方法論は採るべきではないと牽制した。医療資源の少ない地域への対応では、要件を特例的に緩和しても算定されていない項目があることなどから、診療報酬上の評価を検討するにあたって、都市部と非都市部を分けて考える必要があるとの認識で、委員の意見が概ね一致した。
 
 日本の総人口はすでに減少局面に入り、このうち高齢者人口の急激な伸びは、団塊の世代が75歳以上になる25年を境に緩やかになるが、代わりに15歳〜64歳の生産年齢人口の減少は加速すると見られている。ただ、その状況は地域で異なり、15年から40年までの市区町村別人口動向の推計データによると、人口の減少率は10%から70%の間に大きくばらついている。例えば人口100万人以上の地域をみると、さいたま市、川崎市、福岡市は今後も人口が増加するが、仙台市と神戸市の人口は10〜20%減少。仙台市に関しては、人口区分が1つ下位の「50〜100万人」に移行することが見込まれている。
 
 
◆25年の総病床数の減少見込み、15年比で3.3万床
 
 「地域医療構想」は、こうした地域差を考慮し、地域の実情に応じた医療提供体制の再構築と、限りある医療資源の効率的な配分を目指すものだが、18年度の病床機能報告から集計した25年の総病床の見込み数は121.8万床で、15年と比較すると3.3万床の減少。病床機能別では、高度急性期と急性期が4.6万床減、回復期が6.2万床増、慢性期が4.9万床減の見込みで、特に急性期病床の転換が進んでいないことから、骨太方針2019には公的・公立病院の再編統合への梃入れを軸にした追加的施策の実施が盛り込まれた。
 
 総会の議論で、吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、「具体的対応方針の合意結果を見ても、実質的効果はまだ出ていないのではないか。診療報酬上の対応で地域医療構想に寄り添い、後押ししていくことが重要だ」と主張した。平川則男委員(日本労働組合総連合会総合政策局長)は、骨太方針に追加的施策が盛り込まれたことについて、「構想が進んでいないことへの政府の危機感が出たのではないか」と分析。そのうえで、厚労省が三位一体で進めると明言している医師の働き方改革、医師偏在対策とともに、「診療報酬で何ができるかを考え、検討していく必要がある」と述べた。
 こうした支払側の主張に城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、「地域医療構想は、地域の実情に応じた形で緩やかではあるが、しっかりと議論が進んでいる。診療報酬での誘導は、医療提供体制の様態が様々であることを考えると無理があるということを、ここで共有していただきたい」と反論した。
 
 
◆医療資源の少ない地域への対応、都市部と切り離して検討すべき
 
 一方、医療資源の少ない地域に対しては、一部の診療報酬項目の要件を緩和する措置が設けられ、算定回数は増加傾向にあるものの、算定実績が全くない項目があることなどが報告された。その理由で最も多かったのは、要件に定められた人員を確保できないこと。ICTを活用して地域連携やケア会議の運営を行っている施設があることも明らかになった。
 こうした実態を踏まえ、委員からは、「今の診療報酬は都市部を中心に考えられており、今後は非都市モデルの診療報酬も構築していく必要がある」(猪口雄二委員・全日本病院協会会長)、「ICTの活用は医療資源が少ない地域こそ活かせるし、必要だ。へき地医療のあり方についてはオンライン診療も含め、考え方を切り離して、どのような医療を提供していくかを考える必要がある」(松浦満晴委員・全日本海員組合組合長代行)といった意見が示された。

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