[医療提供体制] 病棟機能分化推進のための新たな基金、26年9月に交付額内示

[全国医政関係主管課長会議(3/3)《厚生労働省》]

精神科医療行政ニュース - 2014年 03月 07日

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 厚生労働省は3月3日に、全国医政関係主管課長会議を開催した。
 これは、厚労省医政局が所管する事業について、平成26年度の重点項目や留意事項を都道府県の担当者に説明するもの。
 
 冒頭、原医政局長は「少子高齢化により医療需要は増大し、医療提供体制の再構築が求められている。2025年を見据えた医療構想が必要であり、26年度は財源に消費税を活用した新たな財政支援制度(基金)を創設する。公平な配分により地域の実情に応じた事業を実施してほしい。都道府県の果たす役割は大きい」と各都道府県に協力を求めた。
 この日は(1)医療法改正等(医療介護総合確保推進法案)(2)新たな財政支援制度(3)医療法人制度の見直し(4)医師臨床研修制度の見直し(5)特定行為に係る看護師の研修制度(6)医療勤務環境改善支援センター―などについて説明がなされた。
 
 
◆効率的・効果的な医療提供体制構築のための医療法改正に伴う各施策の施行期日を明示
 
 (1)の医療法改正については、「地域における効率的かつ効果的な医療提供体制確保のため、病床機能(高度急性期、急性期、回復期、長期療養)の報告制度を創設して、都道府県がそれをもとに地域医療構想(ビジョン)を医療計画において作成する」など多くの内容が盛込まれている(p9〜p11参照)。
 
 会議では、主な施策の施行期日も示されており、次のようになっている(p17参照)。
●平成26年4月1日または公布の日のいずれか遅い日:
・厚労大臣による総合確保方針(高度急性期から在宅医療・介護までの一連のサービス提供の一体的な確保、医療・介護の総合的な確保)の策定、基金による財政支援
・総合確保方針に即した医療計画の作成
●26年10月1日:
・病床機能報告制度の創設、在宅医療の推進、病院・有床診等の役割、勤務環境改善、地域医療支援センターの機能の位置づけ、社団と財団の医療法人の合併
・外国医師の臨床教授等の創設
・持分なし医療法人への移行促進
●27年4月1日:
・地域医療構想の策定と実現に必要な措置、臨床研究中核病院
●27年10月1日:
・医療事故調査に係る仕組み
・看護師免許保持者等の届出制度
・看護師の特定行為の研修制度
 
 
◆基金方式の新たな財政支援制度、4月からヒアリングし、9月に交付額内示
 
 (2)の新たな財政支援制度は、医療法等改正の制度面での対応に併せて、消費税を財源として活用し医療・介護サービスの提供体制改革を推進するための措置。各都道府県に消費税収分を財源とした基金をつくり、各都道府県が作成した整備計画に基づき「病床機能分化・連携」「在宅医療の推進・介護サービスの充実」「医療従事者等の確保・養成」に必要な事業を実施する(p10参照)(p70参照)。
 
 国と都道府県の負担割合は2:1。厚労省は交付条件として、(i)事業内容が対象事業に合致すること(ii)官民に公平な配分をすること(iii)官民を問わない幅広い地域の関係者から意見を聴取すること(iv)地域包括ケアの推進のため特に必要な事業・医療介護総合確保推進法案に位置付けられた事業の実施を必ず検討すること―の4点を示している(p70〜p72参照)(p208〜p212参照)。
 
 (ii)の官民への公平な分配については、都道府県計画において、「公・民間の割合と額を明示し、その割合とした経緯・理由について都道府県の見解を示す」こととしている。また(iii)の幅広い地域の関係者とは、市町村、医療を受ける立場の者、医療保険者、医療機関、学識経験者の団体、医師会・歯科医師会・薬剤師会等の医療関係団体を指す(p70参照)。
 
 平成26年4月中旬と5〜6月の2回、都道府県から個別にヒアリングを行い事業内容や規模を確認する。7月に国に協議会を設置して総合確保方針を提示し、これをもとに9月に都道府県計画を策定する。あわせて9月に国から都道府県へ交付額が内示され、10月に交付額が決定する予定だ。(p207参照)。
 なお、新基金の交付額決定は、年度途中になるが、都道府県が年度当初から実施する必要のある事業費は一旦、都道府県が立替え、基金設置後に基金から立替え分を支出することが可能である。新たな財政支援制度は26年度は医療を対象とし、27年度から介護についても対象に追加される(p71参照)。
 なお、資料には、「新たな財政支援制度(基金)」で対応可能となる事業の一覧(p214参照)を付した。
 
 
◆持分なし医療法人への移行、出資持分払戻が生じた際に福祉医療機構の融資制度を検討
 
 (3)の医療法人については、持分あり医療法人から持分なし医療法人への移行支援などに重点が置かれる(p98参照)。
 医療法人の経営者が死亡するなどして相続が発生する際に、相続税の支払いにより出資持分払戻などせざるを得ず、医業の継続が困難になる場合が生じている。そこで、継続して地域医療の担い手として住民に医療を提供できるようにするため、医療法人の選択を前提として、持分なし医療法人への移行支援が行われている。
 
 具体的には、移行計画について計画的な取組を行う医療法人を国が認定する仕組み(認定医療法人)を導入する。認定制度は、「医療介護総合確保推進法案」で規定されおり、26年度10月運用開始の予定だ。
 また26年度税制改正大綱で「医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置」が創設された。持分なし医療法人に移行する医療法人は、移行期間内の相続税・贈与税の納税が猶予され、移行できた場合に猶予税額が免除される。
 さらに、持分なし医療法人への移行の際に、出資持分払戻が生じた場合の支援策として、福祉医療機構による経営安定化資金の融資制度を検討していることも示されている。
 
 
◆医師臨床研修制度、26年3月を目途に関係通知等を改正、26年度中に新制度での研修医募集開始
 
 (4)の医師臨床研修制度は、平成16年度に必修化された。
 今般の制度見直し(27年度適用予定)は医道審議会・医師分科会「医師臨床研修部会」が25年12月にまとめた報告書を踏まえたもの。研修の質の向上、地域医療の安定的確保などを目的としている(p115参照)。
 
 報告書は次のような内容が盛込まれている。
●到達目標・評価について、次回の32年度見直しに向け診療能力の評価の観点で別途検討の場を設置する
●臨床研修病院群は、病院群の地理的範囲を同一都道府県内、2次医療圏を基本とする
●必用な症例数は、基幹型病院の「年間入院患者数3000人以上」の基準を維持する
●なお、3000人に満たない新規申請病院も良質な研修が見込める場合は訪問調査により評価する。
●激変緩和措置(各都道府県の募集定員の上限)は予定通り平成26年3月末に終了する
●研修希望者に対する募集定員の割合を1.23倍から1.1倍へ縮小していく。
●都道府県上限の計算式を一部見直し、新たに高齢者人口、人口当たり医師数も考慮する●都道府県の役割強化として、都道府県が都道府県の上限の範囲内で各病院の定員を調整できる枠を追加する
 
 今後は、26年3月を目途に関係通知等が改正され、26年度中に、新制度での研修医募集を開始、27年度から新制度下で研修が開始される運びだ(p116参照)。
 
 
◆看護師の特定行為研修、制度導入後も手順書によらず特定行為行う場合は制限なし
 
 (5)の特定行為に係る看護師の研修制度については、前述したように2025年に向けてさらなる在宅医療の推進が必要とされる中、医師等の包括的な指示のもと手順書により一定の診療補助を行う看護師を養成・確保することが求められている(p141参照)。
 このため、特定行為(診療の補助であって看護師が手順書(医師・歯科医師が看護師に診療の補助を行わせるためにその指示として作成する文書)により行うには実践的な理解力・思考力・判断力および高度・専門的な知識・技能が必要とされるもの)について、手順書により実施する研修制度を創設し、内容を標準化することにより在宅医療などを支える看護師を計画的に養成することを目的に創設された。
 
 制度骨子案は、手順書により特定行為を行う看護師は厚労大臣の指定する研修機関において、一定基準に適合する研修を受けなければならないとしている。現行と同様、医師等の指示の下に手順書によらず特定行為にあたる行為を行う場合に制限はない。また制度導入後も、どのような指示により看護師に診療の補助を行わせるかの判断は医師等が行うものとするとしている。施行は27年10月1日の予定。
 
 
◆勤務環境改善へ都道府県に支援センター設置を促進、医業経営コンサル等を配置
 
 (6)の医療勤務環境改善支援センターについては、医師や看護職員など医療従事者の確保を図るため、労務管理面のほかワーク・ライフ・バランスなど幅広い観点を視野に入れた勤務環境改善の推進による「医療従事者の離職防止・定着対策」が求められている(p53参照)。
 そこで、医療法改正案では都道府県が医療従事者の勤務環境改善に関する拠点機能の確保に努める旨が規定されている。これは、各都道府県に対し医療勤務環境の改善を支援する中核的な拠点機関の「医療勤務環境改善支援センター」を設置することなどの努力義務を課すもの。施行は26年10月1日を予定している。
 
 具体的には、都道府県は医療機関の相談に応じ必用な情報提供・助言・援助・調査および啓発活動・支援を行う。また取組を実施するにあたり勤務環境の改善を促進する拠点「医療勤務環境改善支援センター」の設置に努める。
 
 支援センターは、(i)医業経営アドバイザーの配置(ii)医療労務管理アドバイザーの配置(iii)地域の関係機関との連携体制構築―などを実施することを柱とする組織だ(p56〜p57参照)。
 (i)の医業経営アドバイザーとして、勤務環境改善の支援にあたり経営面の助言が不可欠なため、診療報酬、医療制度・医事法制、組織マネジメント・経営管理などの医業経営に関する専門知識をもつ医業経営コンサルタントなどが配置される。所要の費用は新たな財政支援制度(基金)の対象となる。
 (ii)の医療労務管理アドバイザーとして、勤務シフトの見直し、労働時間管理、休暇取得促進、就業規則の策定・改廃、賃金制度の設計、福利厚生など労務管理全般にわたる相談支援も不可欠なため、社会保険労務士などの専門知識を有する者が配置される。労働局関連の助成金で運営される。

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