[診療報酬] 医療保険部会が基本方針案を了承、医療部会とすり合わせ公表へ
[社会保障審議会 医療保険部会(第71回 11/29)《厚生労働省》]
精神科医療行政ニュース - 2013年 12月 06日
厚生労働省は11月29日に、社会保障審議会の「医療保険部会」を開催した。
この日は、厚労省当局から「平成26年度診療報酬改定の基本方針(案)」が提示され、若干の要望等を行ったうえで、概ね了承している。
◆急性期病床の機能を明確化するとともに、医療機関間等の連携を推進
基本方針案(p4〜p10参照)は、すでにお伝えしたとおり「重点課題」と「改定の視点」の2部構成となっている。
「重点課題」は、社会保障・税一体改革を診療報酬の面で誘導するために「医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実等」の1本に絞っている(p6〜p8参照)。
そこでは(1)入院医療(2)外来医療(3)在宅医療(4)医療機関相互の連携や医療・介護の連携によるネットワーク―のそれぞれについて改革の方向を指し示している。
(1)の入院医療では、「急性期病床の担う機能を明確化し、高度急性期・一般急性期を担う病床の機能強化」「患者の状態に応じた医療の提供」「急性期病床における長期入院患者の評価の適正化」などを行う方針を明確にしている。
また、急性期後の病床を充実させるために「亜急性期病床」の機能を(i)急性期病床からの患者受入れ(ii)在宅・生活復帰支援(iii)在宅患者の急変時の受入れ―として検討を行う必要があるとするものの、「亜急性期に急性期と回復期が含まれ非常に分かりにくいため、病床機能報告制度の区分に合わせて議論を整理すべき」との意見があったことを併記している。
さらに、地域包括ケアシステム構築を目指す中で「有床診の評価を行う必要がある」ことも指摘している。
(2)の外来では、「診療所・中小病院における主治医機能の評価」「大病院の紹介外来をさらに推進する方策」などを検討するよう要請している。
また(3)の在宅では、「在支診等、在支診等以外の医療機関による在宅医療の推進」や「機能に応じた訪問看護ステーションの評価」「訪問診療の適正化」などを改定項目として掲げている。
さらに(4)では、「病院、医科診療所、歯科診療所、薬局、訪問看護ステーション、介護事業所等のネットワークにおいて、協働して機能を発揮し、患者の状態に応じた質の高い医療を提供すること、病院から在宅への円滑な移行や、医療と介護の切れ目のない連携を図ること」を適切に評価するよう求めている。
◆がん、認知症、救急、リハビリなどの各分野を充実
26年度改定における「改定の視点」は、(1)充実が求められる分野を適切に評価していく視点(2)患者等から見て分かりやすく納得でき、安心・安全で質の高い医療を実現する視点(3)医療従事者の負担を軽減する視点(4)効率化余地があると思われる領域を適正化する視点―の4項目を掲げている(p8〜p9参照)。
(1)では、「がん医療」「精神疾患に対する医療」「認知症対策」「救急、小児、周産期医療」「リハビリテーション」「生活の質に配慮した歯科医療」「かかりつけ薬局機能」「手術等の医療技術」「医薬品、医療材料等におけるイノベーションの適切な評価」などを充実していく方針を強調している。
(2)では、これまでの「患者の生活の質に配慮した」という文言を「質の高い医療」に整理している。
具体的には、「医療安全対策」「患者に対する相談指導支援」「明細書無料発行」「診療報酬点数表の平易化・簡素化」「入院中のADL低下予防」「患者データの提出」といった項目を評価する意向を打出している。
さらに、26年4月からの消費税8%増税への対応として「基本診療料・調剤基本料への上乗せによる対応を中心としつつ、個別項目への上乗せを組合わせる形で対応する」ことを基本とすべきとしている(p9参照)。
◆医療部会の結論とすり合わせ、近く「基本方針」公表へ
この基本方針案に異を唱える意見は出されなかったが、いくつかの要望が出されている。目立つ項目をピックアップしてみよう。
「重点課題の【外来医療】に、『重症化予防に資する療養上の相談等の評価』を加えるべき」(菊池委員:日看協副会長)
「重点課題の【在宅医療】にも、『褥瘡対策』の重要性を明記すべき」(高橋委員:連合副事務局長)
「一体改革に盛込まれた『緩やかなフリーアクセスの制限』を実現するため、大病院の外来機能分化を明示すべき」(小林委員:全国健康保険協会理事長)
「【改定の視点3】の『医療従事者の負担軽減』は広すぎるので縛りを設けるべき」「チェーン薬局では、価格妥結をしないまま医薬品の納入、調剤を行うことで高い利益率を示しており、適正化すべき」(白川委員:健保連専務理事)
「病院だけでなく、診療所の医師・看護師も多忙であり、【改定の視点3】の『医療従事者の負担軽減』の文言は維持すべき」「民間医療機関への十分な配慮を行うべき」(鈴木委員:日医常任理事)
こうした意見を受けて遠藤部会長(学習院大経済学部長)は、「意見を精査して文言を修正したいが、内容は私に一任してほしい」と要請し、了承された。
今後は、社会保障審議会・医療部会の結論(11月22日に開催)とすり合わせ、近く『基本方針』を公表することになる。