[改定速報] 運動器等の維持期リハ、介護保険への移行は延期 中医協総会

[中央社会保険医療協議会 総会(第262回 12/4)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 12月 04日

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 厚生労働省は12月4日に、中医協総会を開催した。
 本日の議題は、大きく次の3点
●リハビリテーション
●有床診療所
●調剤報酬
 
 
◆運動器等の維持期リハ、介護保険への移行は延期
 
 リハは、疾患の種類に応じて(1)心大血管疾患リハ(2)脳血管疾患等リハ(3)運動器リハ(4)呼吸器リハ―のそれぞれに報酬が設定されている。
 これらの疾患別リハビリテーション料は、算定できる日数が制限されており、たとえば(1)の心大血管疾患リハでは150日、(2)の脳血管疾患等リハでは180日までとなっている。
 もっとも、この制限日数を超えた場合でも「状態の改善が期待できる」と医学的に判断される場合には、医療保険からのリハビリを継続して受けることができる(回復期リハ)。
 さらに、改善は期待できないまでも、状態の維持を目的としたリハビリについても医療保険からのリハビリを継続して受けることができる(維持期・生活期リハ)。
 
 この点、24年度改定において厚労省当局は「要介護被保険者における維持期リハは、医療保険ではなく、介護保険からの給付対象とすべき」との考え方を明確にし、次のような方針を示した(p70参照)。
●要介護被保険者における、脳血管疾患等リハと運動器リハのうち維持期リハについては、26年度以降は介護保険給付とする
 
 もっとも事務的手続きや介護事業所の整備などさまざまな課題があるため、「次回(26年度)改定時に介護サービスにおける充実状況等を確認する」という条件もつけられていた(p71参照)。
 
 厚労省当局が、この条件にそって現状を確認したところ、「医療機関におけるリハ患者の中で、要介護被保険者は、数も割合も増加している」「維持期リハ患者が介護保険に移行できない理由としては『患者の心理的抵抗』が大きい」「医療機関の半数超は、人員確保などが困難として、通所リハ(介護保険)開設に消極的である」などの状況が明らかになった(p72〜p78参照)。一言であらわせば「準備は必ずしも十分とは言えない」(厚労省老健局の迫井老人保健課長)状況である。
 このため厚労省当局は、「要介護被保険者における維持期リハ(脳血管疾患等リハと運動器リハ)の介護保険への移行」を延期する考えを示している(p68参照)。
 
 この考えについて診療側委員は賛意を示したが、支払側委員からは若干の異論も出ている。
 白川委員(健保連専務理事)は「24年度改定から2年たつ。介護体制の準備が進んでいないのは遺憾ではないか。『準備が整っていないから延長する』ことを繰り返していたのでは、いつか取り返しのつかないことになる。維持期リハの介護保険への移行に関するロードマップを示して欲しい」と要望している。
 これに対し厚労省の迫井老人保健課長は、「介護保険制度ではリハを、『身体機能の回復』にとどまらず、地域の居場所確保なども含めた総合的な概念に組み立てなおし、維持期・生活期リハの拡充を図っているところだ。準備が進んでいないという指摘は真摯に受け止めるが、現場の混乱を避けるためにも、状況を見ながら着実な移行を進めていく必要があると考えている」と説明し、理解を求めている。
 
 なお厚労省当局では、介護保険への円滑な移行を進めるために「ケアマネ等との連携や、介護事業所への紹介等を評価してはどうか」との提案もあわせて行っている(p68参照)。
 これは、【介護支援連携指導料】を外来にも拡大していくイメージである。
 
 
 このほか、外来リハにおいては次のような見直しも提案されている。
●初期加算(リハ開始後14日目まで、1単位あたり45点)、早期加算(リハ開始後30日目まで、1単位あたり30点)について、現在の「入院中の患者のみ」という縛りを緩和し、地域連携パスの対象となっている大腿骨頸部骨折・脳卒中(入院中と同等の医療提供が可能と考えられるため)について、外来でも算定可能とする(算定日数は入院と外来を通算)(p22〜p30参照)
●運動器リハ料(I)についても、他の疾患別リハ料と同じように外来患者でも算定可能とする(p32〜p38参照)
 
 
◆7対1・10対1でリハ専門職の配置等を新たに評価
 
 入院におけるリハは、一般病棟等におけるリハのほかに、急性期後の患者に集中的なリハを提供する回復期リハ病棟におけるリハなどに分けて考えることができよう。
 
 まず、前者の「一般病棟におけるリハ」に関して、厚労省当局は「急性期病棟において、患者のADL低下を防止するためのリハ提供を診療報酬で評価してはどうか」との考え方を示している。
 DPCデータに基づく分析によると、「入院時にADLが自立していても、在院日数が長くなるとADLが低下する」「入院中にADLが低下した患者は、7対1では約3.7%、10対1では約4.1%いる」ことなどが分かる(p10〜p13参照)。
 また、広島大学病院では「理学療法士の配置によって、入院患者のADL回復促進、入院日数の短縮という効果がある」というデータを発表している(p14参照)。
 
 こうしたデータを背景に厚労省当局は、次のような提案を行っている(p9参照)。
(1)リハの設備と人材を有する医療機関において、循環器系の疾患、新生物、消化器系の疾患等の患者が多く、65歳以上の患者が一定以上の急性期病棟(7対1、10対1)にリハ専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)を配置することを評価する
(2)リハ専門職を配置した病棟(7対1、10対1)では、たとえば「入院時に比べ退院時にADLが低下した者の割合が一定以下」等の具体的数値目標を評価の要件とする
 
 (1)と(2)はセットで、リハ配置加算を算定するための要件として(i)循環器系疾患等が多い(ii)65歳以上患者が一定以上(iii)リハ専門職の配置(iv)ADL低下者割合が一定以下―が盛込まれるイメージだ。
 (2)について厚労省保険局の宇都宮医療課長は、「診療報酬の他の実績要件と同様に、過去数ヵ月間の実績を評価することになろう」との見解を述べている。
 
 この提案に対しては、診療側委員から若干の異論が出されている。
 鈴木委員(日医常任理事)は、「脳卒中などでは急性期病棟における早期リハに効果のあることは理解できるが、他の疾患別リハ実施の効果は、厚労省の資料では明らかとはいえない。疾患を限定する必要がある。また、実績要件を導入する提案がなされているが、重症患者受入れ拒否などが生じることも考えられ、慎重に検討すべきである」とコメント。
 一方、支払側の矢内委員(全国健康保険協会東京支部長)は、「急性期病棟においても早期のリハは大事な視点である」と厚労省提案を高く評価している。
 
 
◆回復期リハ1で「専従の医師配置」などの評価を新設
 
 入院におけるリハでは「回復期リハ病棟」もきわめて重要だ。
 平成24年度改定では、従前よりも手厚い人員配置を行い、在宅復帰率等の実績要件を厳しくした【回復期リハビリテーション病棟入院料1】を新たに設定した(従前の入院料1は入院料2に、従前の入院料2は入院料3に変更)(p41参照)。
 厚労省が、新たな【回復期リハ入院料1】算定病棟の状況を分析すると、定められた施設基準より手厚い『専従の医師配置(施設基準は専任の医師配置)』『専従の社会福祉士配置(同、専任の社会福祉士配置)』を行っている病院があり、そこでは退棟時の日常生活機能(ADL)の改善や、平均在院日数の短縮などの効果があることが明らかになっている(p43〜p45参照)(p47〜p48参照)。
 
 厚労省当局はこの点を重視し、「【回復期リハビリテーション病棟入院料1】を算定する病棟において、病棟への専従の医師配置、病棟への専従の社会福祉士の配置を行った場合を評価してはどうか」との提案を行っている(p40参照)。
 厚労省保険局の宇都宮医療課長は、「手厚い人員配置をしている病棟を別途評価する(新たな加算の設定等)もの」と説明しており、【回復期リハ入院料1】の施設基準そのものが厳格化されるわけではない点には留意が必要だ。
 
 
 一方、【回復期リハ入院料1】を届出ている病棟では、「70.9%が、休日でも平日と同様のリハ提供を可能とする体制を評価する【休日リハビリテーション提供体制加算】を算定している」状況も明らかになっている(p50参照)。
 この加算は、休日でも、平日と同様のリハ提供を行うことで患者の機能回復が促進されることに注目して設けられたものである。
 厚労省当局は、本加算の目的と算定状況、効果に鑑みて、「【回復期リハビリテーション病棟入院料1】を算定する病棟において、【休日リハビリテーション提供体制加算】を包括し要件としてはどうか」との提案も行っている(p40参照)。
 つまり、【回復期リハ入院料1】の施設基準に、(1)休日を含め、すべての日においてリハを提供できる体制を備えている(曜日により著しい提供単位数の差がないような体制とする)(2)専従の常勤PTまたは専従の常勤OTのうち1名以上をいずれの日においても配置する(3)看護または看護補助を行う看護要員の配置が当該保険医療機関の休日においてもリハ提供する支障とならないよう配慮する―ことを追加し、点数を引上げるという内容だ(p49参照)。
 
 この提案に対しては診療側の万代委員(日病常任理事)が、「休日のリハ体制を充実している医療機関を評価すべきではないか」と要件化には慎重であるべきとの見解を述べている。
 
 
 なお、脳血管疾患等リハでは、廃用症候群(病床等で長期間寝たきりでいる場合などに生じる関節拘縮や心肺機能低下、知的活動低下などの身体機能低下をさす)の患者に特化した報酬が設けられている。通常の脳血管疾患等リハよりも若干低めだが、他の疾患別リハよりも高い水準に点数が設定されている(p64参照)。
 厚労省の調査では、脳血管疾患等リハを算定する新規患者のうち、廃用症候群の点数を算定する新規患者の割合が5割を超える医療機関が41.7%もあるという(p59参照)。
 厚労省では、本来、他の疾患別リハ(運動器リハ等)を算定すべき患者が、廃用症候群のリハ点数を算定しているのではないかと推定し、次のような提案を行っている(p54参照)。
●廃用症候群に対するリハを実施する場合には、それ以外のリハビリテーション料が適用にならない理由の記載欄を評価表や実績報告書に設け、その適用を厳格化する
 
 
◆多機能もつ有床診療所を新たに診療報酬上で評価
 
 有床診療所は、減少の一途を辿っており、1987年(昭和63年)には2万4975施設あったものが、平成25年(2013年)8月末には9257施設にまで減少している(p89参照)。
 この背景には、「診療報酬が低く、経営が成り立たない」ことがあると医療関係者から指摘される。
 厚労省もこの点を重視し、前回(平成24年度)改定では機能に着目した評価や、病床の柔軟な運用などの措置がとられた(p95参照)が、減少傾向に歯止めはかかっていない。
 
 今回改定において厚労省当局は、前回に続き「機能に応じた評価」を推進し、有床診の経営安定化を図りたい考えだ。
 具体的には、次のような提案を行っている(p102参照)。
(1)【有床診療所一般病床初期加算】(現在は100点)について、他の類似の加算(13対1一般病棟の【救急・在宅等支援病床初期加算】など)と同等の評価(150点)とする
(2)緊急時の入院について、より充実した体制(とくに看護補助者の配置)を評価する
(3)多機能をもつ有床診の入院基本料を評価する
 
 
 (1)の加算は、有床診における「急性期医療の後方病床」という機能を評価するものだが、他の同趣旨の加算とくらべて低い点数と短い算定日数が設定されており、これを引上げるとの提案だ。
 厚労省の宇都宮医療課長は、「要件についても、他の加算と整合性のとれたものにする必要がある」との見解を示しており、現在よりも厳しい方向に動きそうだ(p106参照)。
 
 (2)は、有床診の3分の1から4割程度が、地域における夜間救急や緊急入院の役割を担っている点を重視したもの(p107〜p108参照)。現在、看護補助者配置に対する加算が設定されていないことから、これを新設してはどうかという提案だ(p109参照)。
 ただし、単なる「看護補助加算」ではなく、緊急対応に備える体制を評価するものであると厚労省保険局医療課の担当者は説明している。
 この点について福井専門委員(日看協常任理事)は、「患者の安全を重視した場合、看護補助者よりも看護師配置を手厚くしている有床診を評価すべきではないか」とコメントしている。関連して福井専門委員は、「助産師配置をしている有床診も評価してほしい」と要望している。
 この提案には、鈴木委員や支払側の花井圭子委員(連合総合政策局長)も賛意を示している。
 
 また(3)は、在宅医療、救急における当番医、介護事業の併設、終末期医療などさまざまな役割を担っている点を評価してはどうかという提案だ(p111〜p116参照)。
 厚労省当局は「新たな入院基本料」の設定をイメージしていたが、委員からは「加算でよいのではないか」との意見も出されている。
 
 なお、診療側委員は有床診の経営が厳しい状況を憂い、「有床診の点数全体を底上げすべき」と訴えている。
 鈴木委員は、「有床診は地域医療の拠点であるが、人件費が高騰する一方で診療報酬は低く設定されており、老朽化した施設を建て直すこともままならない」と述べ、報酬の底上げと同時に「逓減制(入院期間が長くなると点数が下がる仕組み)の緩和」も要望している。
 この点、厚労省保険局医療課の担当者は「財源との兼ね合いもあるが、基本料や加算の引上げなどができないか考えていきたい」と前向きなコメントをしている。
 
 
◆有床診の管理栄養士配置を廃止、24年度改定前の「加算」に戻す?
 
 ところで、平成24年度改定では、入院料の施設基準に「管理栄養士の配置」が盛込まれた。
 これは「9割以上の病院では管理栄養士を配置している」という厚労省調査に基づいて実施された措置だが、有床診における配置状況調査は行われていなかった。
 後に厚労省が調査したところ、平成24年9月時点で管理栄養士の確保ができない有床診が約7割に上り、そのうち5割は「確保の目途はまったく立っていない」状況だ(p122参照)。
 
 こうした状況を受け、厚労省当局は次のような考え方を示している(p119参照)。
●平成24年度改定で、入院基本料等の要件に包括された【栄養管理実施加算】について、有床診療所に限り加算に戻す
●栄養管理が必要な患者もいることから、他医療機関等との連携で行うことを評価する
 
 診療側委員はこの提案を歓迎したものの、支払側委員からは注文もついている。
 矢内委員は「管理栄養士確保について相談をしていない有床診もある。体制が整わないのであれば、低い点数を設定するなどすべきではないか」と要望。
 
 なお、厚労省保険局医療課の担当者は、後者の連携体制の評価について「常勤で管理栄養士を確保することは困難だが、たとえば非常勤で、看護師等と一緒に栄養計画を作成したり、実際に患者を診たりする体制の評価を考えている」と説明している。非常勤といっても『週何回以上勤務』などの厳しい規定ではなく、柔軟な仕組みとしたいとも付言している。
 
 
◆調剤報酬めぐり、診療側・支払側委員がともに厳しい見解表明
 
 調剤報酬については、(1)後発品の使用促進(2)大型門前薬局と地域密着型薬局の区別(3)薬学的管理指導の充実(4)残薬に関する対応―という区分で見直し案が提示されている。
 
 (1)の後発品使用促進については、【後発医薬品調剤体制加算】を新指標(後発品/[後発品のある先発品+後発品])に基づいて設定しなおすほか、「漢方等に偏った調剤を行っている薬局を加算算定対象から除外する」などの見直しが提案されている(p131〜p143参照)。
 
 (2)は、大規模薬局チェーンで利益率が高いことなどに着目し、「同一法人の保険薬局の店舗数、処方せん枚数や特定の保険医療機関に係る処方せんによる調剤の割合等に着目し、門前薬局と地域において患者個々の薬歴を踏まえた的確な服薬管理・指導を行っている薬局の評価を区別する」ことを提案している(p145〜p149参照)。
 厚労省保険局医療課の担当者は、「調剤基本料で差をつけてはどうか」との考えを明らかにしている。
 
 (3)は、「服薬状況・残薬状況の確認および後発医薬品使用に関する患者の意向の確認のタイミングを処方せん受付時(調剤を行う前)とする」との見直しを、薬担や関係通知で行う構えだ(p151〜p155参照)。
 これにより疑義の発見や、後発品使用に関する意向確認が、薬剤師の実際の業務フローに合わせることが可能と考えられる。
 
 (4)は長期処方の弊害として「相当な残薬が発生している」事態を是正するもの。
 厚労省は、「特定機能病院および一般病床500床以上の地域医療支援病院から処方された場合に、処方医に連絡しつつ、処方された薬剤を原則分割して調剤し、2回目以降は、患者の主治医と連携し、必要量を調剤するといった対応の試行的導入」を提案している(p157〜p168参照)。
 現在でも可能な変更調剤について、特定機能病院等からの処方せんについては「原則、義務化」されることになる。
 この点、厚労省保険局医療課の近澤薬剤管理官は「加算を設定することは考えていない」と述べているが、分割に伴うコスト増などもあり「実費程度は賄う」ことが行われる模様だ。
 
 
 なお、調剤報酬の見直しに関連し、診療側の中川委員(日医副会長)からは「調剤報酬の伸びは大きく、大手のチェーン薬局の利益率は高い。営利企業である調剤薬局チェーンに医療費は偏っている。こういう状況を是正すべきではないか」との問題意識が示された。
 これに対し支払側の白川委員は、「医薬分業が進み患者負担は増加しているが、それに見合った効果は実感できない。後発品についても、国の政策に沿って自ら後発品使用を促進することが筋であろう。加算のあり方などを議論したい」とコメントしている。
 調剤薬局に対しては厳しい改定となりそうだ。

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