[診療報酬] 亜急性期は評価充実し「原則として」病棟単位届出に 中医協

[中央社会保険医療協議会 総会(第260回 11/27)《厚生労働省》]

精神科医療行政ニュース - 2013年 11月 29日

» この記事を書いたメディアのページへ
 厚生労働省は11月27日に、中医協総会を開催した。
 この日は、入院医療について議論をしたほか、消費税分科会や先進医療会議からの報告を受けるなどした。さらに、支払・診療両側から診療報酬改定に関する基本的な見解が発表されている。
 
 
◆重症度・看護必要度の基準、「10分以上の指導」は盛込まず
 
 入院医療については、次の4点を議題とした。
(1)一般病棟入院基本料における「重症度・看護必要度」等(p23〜p80参照)
(2)亜急性期入院医療管理料等(p81〜p115参照)
(3)医療提供体制が十分ではないものの、地域において自己完結する医療を提供している医療機関に配慮した評価(p116〜p131参照)
(4)入院医療や外来診療の機能分化の推進や適正化(p132〜p183参照)
 
 (1)の「重症度・看護必要度」については、「現在の基準は、急性期患者をピックアップするうえでふさわしくないのではないか」との指摘がある(p34〜p35参照)。このため、中医協の下部組織である「入院医療等の調査・評価分科会」で見直しに向けた検討を進め、次の4つの見直し案をまとめている(p39〜p48参照)。
(i)時間尿測定および血圧測定を削除する
(ii)創傷処置について、褥瘡の発生状況を把握するためにも、「褥瘡の処置」と「それ以外の手術等の縫合部等の処置」を分けた項目とする
(iii)ケアについては、喀痰吸引を定義から外す
(iv)「計画に基づいた10分間以上の指導」「計画に基づいた10分間以上の意思決定支援」「抗悪性腫瘍剤の内服」「麻薬の内服・貼付」「抗血栓塞栓薬の持続点滴」をA項目(モニタリングや処置の有無)に追加する
 
 これを受け、厚労省当局は次のような論点を提示している。
(a)分科会の提案のうち「計画に基づいた10分間以上の指導・意思決定支援」を除いた項目に見直してはどうか
(b)救命救急入院料を算定する治療室を有する医療機関の7対1入院基本料において、一般病棟用の重症度・看護必要度の基準該当患者割合(15%以上)を導入してはどうか
(c)名称を「重症度、医療・看護必要度」としてはどうか
 
 (a)は「10分間という時間の縛りは、医療現場に混乱をもたらし、本質を見失わせる」という診療側の強い批判を踏まえた提案だ(p49〜p50参照)。
 この見直しが医療現場にどのような影響を与えるのだろうか。厚労省の試算によれば、見直し案に基づく「重症度・看護必要度の高い患者割合15%以上」の要件を満たせる病院は、全体の56.5%(現在の基準による場合と比べて25.9ポイント減)となる。また、「3ヵ月を超えず1割以内に変動の範囲内にある病院(点数算定が認められる)」を含めると70.6%(現在の基準による場合と比べて16.5ポイント減)となる(p52〜p56参照)。
 
 また(b)は、現在「重症度・看護必要度の高い患者割合15%」要件が免除されている救命救急入院料を算定する7対1病棟にも、15%要件を導入してはどうかという提案だ。
 こちらでは、見直し後の15%要件を満たせる病院は42.9%、「3ヵ月を超えず1割以内の変動範囲内にある病院」を含めると71.4%となるという試算結果が示されている(p58〜p59参照)。
 
 こうした提案について委員からは目立った反論は出されなかったが、診療側の万代委員(日病常任理事)から「新たな重症度・看護必要度の基準では、3割程度の病院が15%要件を満たせないようだ。現場が混乱しないような対応を考えてほしい」との注文がついている。
 
 
 このほか、7対1病棟について、以下の指標を導入(要件化)してはどうかという提案も行われている(p63参照)。
●「自宅」「亜急性期・回復期病床」「在宅復帰機能に一定の実績のある老健施設」への退院患者割合(パーセンテージは未定)(p64〜p67参照)
●DPCデータ提出(提出データをもとに、「診療実績」の要件化について引続き検討する)
 後者については、「一定の経過措置を設ける」「28年度以降のDPC制度への参加を検討する」などの留意事項も付記されている(p69〜p74参照)。
 
 後者からは、「7対1病院はすべてDPC/PDPSに移行する」方向が読み取れる。もっとも、病床機能分化・強化の流れの中で、7対1病院そのものが限定されていくことから、「現在7対1を届出ている病院のすべてがDPC/PDPSに移行しなければならない」というものではない点に留意が必要だ。
 
 この点、支払側の矢内委員(全国健康保険協会東京支部長)らから「DPCデータによって医療の実態がかなり明らかになってきた。この方向を支持する」という意見が示されている。
 
 
 また、厚労省は「A245【データ提出加算】の算定対象を、すべての一般病床、療養病床、精神病床に拡大する(現在は、一般病棟と精神病棟の一部のみ)」「データ提出への参加機会を年複数回とする(現在は、年1回)」ことも提案している(p63参照)。
 
 
 さらに、新たな項目として「療養病棟における在宅復帰率の評価」が浮上している(p76〜p80参照)。
 この点について厚労省保険局の宇都宮医療課長は、「療養病棟では、急性期に比べて死亡退院が多い。在宅復帰率の計算式をどうするか、また名称を『在宅復帰率』とするか否かなど、検討していただきたい」とコメントしている。
 
 
◆亜急性期、病棟単位の届出が原則だが、200床未満病院では病室単位も可
 
 入院医療の(2)「亜急性期」については、次のようにかなり具体的な論点が提示された(p83参照)。
(i)地域医療を支えるため「亜急性期医療の評価を充実」する
(ii)亜急性期は病棟単位の評価を原則とし、200床未満の病院については特例を設ける
(iii)亜急性期の機能に鑑み要件を設定する
(iv)療養病床においても、1病棟(60床)まで亜急性期の届出を可能とする
 
 このうち(i)は点数引上げを意味するものだが、当然、点数設定等は年明け2月の答申を待つよりない。
 
 
 (ii)の届出単位については、「亜急性期の拡大」「現場の混乱防止」「機能分化の推進」という視点(p85参照)を総合的に考慮し、次のような整理を行っている(p93〜p94参照)。
●原則として、病棟単位の届出とする
●200床未満の病院で、病棟ごとに機能分化を行うことが困難な医療機関については「病院全体での亜急性期病棟の届出」を可能とする
●200床未満の病院で、病棟単位の届出が困難な場合には、「1病棟に限り、病室単位での届出」を認める
 
 このうち、200床未満の「病室単位届出」特例を用いる場合には、「看護師の夜勤時間を、所属する病棟に算入する(現在と同様)」「DPC点数表による算定を行っていた患者が入室した場合には、引続きDPC点数表で算定を行う」という規定を盛込む構えだ。
 後者は、入院期間が延び「DPC点数<亜急性期の点数」となった時点で、患者の医療必要度と無関係に亜急性期病床への移動が行われている事例が多いことを是正するための措置といえよう(p91参照)。
 
 
 (iii)の要件については、「急性期からの患者受入れ」「在宅復帰」「在宅患者の急性増悪時の対応(救急対応)」という機能を踏まえて、次のように提案している。
(a)2次救急病院の指定や在宅療養支援病院の届出
(b)在宅復帰率(現在6割以上)
(c)新規入院患者のうち、重症度・看護必要度A項目1点以上の患者が、回復期リハ病棟入院料1(現在は30%以上)と同程度
(d)原則として、病床あたり面積が6.4平方メートル以上
 
 このうち(a)の「2次救急病院指定」については、診療側の中川委員(日医副会長)から「地域によっては2次救急指定が非常に難しいこともある」とし、要件からの除外を求める要望が出された。
 この点について厚労省の宇都宮医療課長は、「2次救急病院指定は必須要件ではなく、選択要件としたいと考えている」と説明している。
 
 また(c)から、亜急性期にも「重症度・看護必要度」の考え方が導入されることがわかる。厚労省の宇都宮医療課長は「急性期から亜急性期を通じて、一貫した基準を採用したい」との考えを明確にしている。
 
 
 ところで、この点に関連して厚労省当局は次のような提案も行っている(p102〜p115参照)。
●重度の肢体不自由者、脊髄損傷等の重度障害者、重度の意識障害者、筋ジストロフィー患者および難病患者等の長期療養については、より療養環境の整った病床で行うことが適切であることから、
○療養病棟、有床診療所療養病床での15歳を超えて障害を受けた者の超重症児(者)・準超重症児(者)入院診療加算の算定を可能とする
○経過措置を設けた上で障害者入院基本料等を算定する病棟以外の一般病棟に日数上限を設ける
○障害者施設等入院基本料、特殊疾患病棟入院料、特殊疾患入院医療管理料については、これらの病床機能のあり方とともに継続的に議論する
●療養病棟における透析患者に対して、検査や投薬の費用を踏まえた評価のあり方を検討する
 
 前者は、「15歳を超えてから障害を受けた人」について、A212【超重症児(者)・準超重症児(者)入院診療加算】を算定できる病棟を、「療養病棟」等にも拡大していくものだ。
 
 また後者は、透析患者では、他の患者に比べてコストがかさむために、新たな加算や管理料などを新設してはどうかとの提案である。
 この点、支払側の白川委員(健保連専務理事)は「透析患者について医療区分を引上げるような見直しは困る」と厚労省に釘をさしている。
 
 
◆医療資源の乏しい地域での診療報酬特例、要件等を拡大する方向
 
 入院医療の(3)「医療提供体制が十分ではない地域の医療機関に配慮した評価」と、(4)「入院医療や外来診療の機能分化の推進や適正化」については、審議時間が足らず、次回以降への持越しとなった。
 ここでは、厚労省が提示した論点を紹介するにとどめよう。
 
 (3)「医療提供体制が十分ではない地域の医療機関に配慮した評価」(p117〜p131参照)
●当該評価について、平成26年診療報酬改定後も引続き利用状況を検証していくことを前提に、評価を継続する
●現在ほとんど利用されていない実態を勘案し、対象医療機関は継続した上で、24年度診療報酬改定での評価項目とは別に、亜急性期入院医療の今後の評価体系の要件を緩和した評価を導入することとし、チーム医療等に係る評価については、対象の範囲を拡大するとともに専従要件等を緩和し、それに応じた評価とする
●夜勤72時間の緩和対象となる特定一般病棟入院料について、全病棟ではなく一般病棟が1病棟のみの病院を対象に加える
 
 (4)のうち「入院医療の適正化」(p134〜p142参照)
●24年度診療報酬改定後、金曜日入院、月曜日退院、正午までの退院に関して、医療機関の動向に大きな変化はみられないが、これらの評価については今後も継続する
 
 (4)のうち「外来診療の機能分化の推進・適正化」(p144〜p155参照)
●許可病床数が500床以上のすべての病院(精神科単科病院や療養病床のみの病院を除く)について、紹介率40%未満かつ逆紹介率30%未満の施設は24年度改定と同様の取扱い(初診料・外来診療料の減額)とする
●特定機能病院と一般病床500床以上の地域医療支援病院については、外来のさらなる機能分化と逆紹介の推進のため、紹介率50%未満かつ逆紹介率50%未満の施設を対象とする
 
●外来の機能分化の更なる推進の観点から、
「紹介率50%未満かつ逆紹介率50%未満の特定機能病院と一般病床500床以上の地域医療支援病院」
「それ以外の許可病床数が500床以上の全ての病院(精神科単科病院や療養病床のみの病院を除く)」
のうち、紹介率40%未満かつ逆紹介率30%未満の病院については、一部の薬剤を除き、原則的に投薬日数によって投薬に係る費用(処方料、処方せん料、薬剤料)を制限する(p157〜p171参照)
 
●多剤投与の実態とその患者に及ぼす影響を勘案し、多剤投与の評価を見直す(p173〜p183参照)
 
 
◆支払側・診療側双方ともに「財務省による改定各論への干渉」を批判
 
 この日は、診療報酬改定、とりわけ改定率に向けて、支払(1号)側、診療(2号)側双方から見解が発表されている。ポイントは次のとおりである。
 
【支払(1号)側】(p231〜p232参照)
●わが国の経済・社会情勢は、アベノミクス等による金融緩和政策等により景気や雇用は持ち直しつつあるものの国民生活は依然として厳しく、さらなる少子・高齢化の進展により、現役世代を中心に社会保障負担は一層増加する
●医療保険財政は危機的な状況に陥る一方で、医療機関の経営状況は病院、診療所、薬局とも安定している
●消費税率引上げに伴って国民の負担が増加するなかで、さらに診療報酬が引上げられ、国民や事業主の保険料負担が一段と増加することになれば、足もとの経済再生の動きにブレーキをかける
●26年度の診療報酬改定率をプラスとすることは、国民の理解と納得が得られない
●これまでの改定でしばしば行われてきた薬価・特定保険医療材料改定分(引下げ分)を診療報酬本体の引上げに充当するやり方を取り止め、薬価等改定分は国民に還元し、診療報酬全体でマイナス改定とすべき
●消費税率引上げに伴う診療報酬上の財源規模の算出にあたっては、消費税負担の中身を精査するとともに、薬価等も含めて消費税率引上げが消費者物価に与える影響を反映すべき
 
 
【診療(2号)側】(p233〜p234参照)
●社会保障・税一体改革において、消費税増収による財源を社会保障の充実に充てることは国民との約束事項である
●直近2回の改定は全体(ネット)プラス改定であったが、いまだにそれまでの厳しい医療費抑制の下で直面した医療崩壊の危機から脱することができておらず、消費税率引上げ対応分を除いた全体(ネット)プラス改定は必須である
●超高齢社会に対応するために地域包括ケアシステムの確立が重要であり、その中核的機能を担う地域の中小病院や診療所の「かかりつけ医」について十分な評価を行う
●歯科診療所、保険薬局においても必要な手当を行う
●診察、薬剤の支給、処置等は不可分一体であり、その財源を切り分けることは不適当である。医療再興を確実にするためにも、薬価引下げ財源を診療報酬全体の改定財源として活用することを要求する
●消費税率引上げにあたっては、医療機関等に負担が生じないように完全な補填をすることはもちろん、通常の診療報酬改定とは明確に区分して対応する
 
 
 なお、両側とも(白川委員、中川委員)に「財務省が改定の各論にまで踏み込んだ発言をしているが、医療の課題解決に向けて、データを積上げ、膨大な時間をかけて議論をしている中医協の役割を軽視するものだ」という旨の財務省批判を行っている。
 
 今後、田村厚生労働大臣に宛てて提出する「意見書」取りまとめに向けた議論が行われる。この点、診療・支払双方の委員から「改定率に関する意見の一致は困難だが、財務省に対する見解では一致している。これをしっかり盛込んだ意見書案を提示してほしい」と公益代表に注文がついている。
 
 
◆消費税分科会から、医療経済実態調査踏まえた状況などの報告うける
 
 26年4月からの消費増税に対応するため、診療報酬をプラス改定する方針が固まっている。具体的には「診療所は初・再診料、病院は入院基本料、薬局は調剤基本料」を引上げ、すべての医療機関における「控除対象外消費税(いわゆる損税)」を補填することとしている。
 消費税対応について議論してきた『医療機関等における消費税負担に関する分科会』からは、医療経済実態調査をベースに分析した結果「医療機関等全体では、給与費等が52.3%、医薬品・材料費が25.8%(薬22.6%、材料3.2%)、その他が22.0%(その他課税費用17.4%、減価償却費4.6%)となっている」ことなどが明らかにされている(p3〜p14参照)
 ちなみに、消費税率が5%に引上げられた9年度には、「その他」部分を対象として診療報酬プラス改定率を計算している。
 
 また、分科会では次のような意見が出されたことも報告されている(p15参照)
●消費税対応のプラス改定率を検討するにあたって、支払側委員からは「消費増税分を丸まる上乗せすべきではない」、診療側委員からは「消費税率そのもの」をベースにすべきとの意見があった(9年度の対応では「消費税率」ではなく「消費者物価」をベースとしている)
●設備投資の消費税負担を考えるにあたり、支払側委員からは「設備投資額は経年変動が大きく、減価償却費を用いるべき」、診療側委員からは「設備投資額を用いるべき」との意見があった
●消費税対応分の財源を、「通常の診療報酬改定財源と明確に分けた形で示すべき」との意見が多数あった
 
 
◆先進医療として「経カテーテル的大動脈弁植込み術」の報告うける
 
 ところで、先進医療会議からは「弁尖の硬化変性に起因する重度大動脈弁狭窄を有する患者(ただし、慢性透析患者に限る)に対する『経カテーテル的大動脈弁植込み術』」(先進医療A)が報告された(p196〜p219参照)。
 保険給付される費用は95万9000円、保険給付されない費用は477万2000円だが、厚生労働科学研究費等からの補助金が支出される予定だ。
 
 なお、先進医療については、医療上の必要性の高い抗がん剤を用いる技術について外部評価機関で評価を行い、迅速な対応をとることが決まっている。
 この点、外部評価機関として「国立がん研究センター」を選定したことや、『医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議』から開発要請を受けた企業は、先進医療実施を計画する医療機関からの相談があった場合には開発にかかる情報提供を行うこととしてはどうかという考え方が報告された(p220〜p230参照)。

関連資料

※資料をご覧いただくためには、ログインが必要です。
mail   pass

mail
pass

医時通信について

よくある質問