[診療報酬] 次期診療報酬改定の基本方針案に消費税対応を明記

[社会保障審議会 医療部会(第36回 11/22)《厚生労働省》]

精神科医療行政ニュース - 2013年 11月 29日

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 厚生労働省は11月22日に、社会保障審議会の医療部会を開催した。
 この日は、(1)地域医療ビジョンを実現するために必要な措置および新たな財政支援制度の創設(2)臨床研究の推進等(3)次期診療報酬改定の基本方針―の3つのテーマを議論した(p1〜p2参照)。
 
 
◆必要な病床の適切な区分、日医・四病協と厚労省が新提案
 
 (1)の地域医療ビジョンを実現するために必要な措置については、「必要な病床の適切な区分の設定」に関して、前々回の会議(平成25年10月11日)で2つの案が出されていた(p8〜p14参照)。
 1つ目は「医療法上の一般・療養病床について、現行の基準病床数に加えて、病床機能報告制度の医療機能ごとに区分し、各機能の基準病床を定める」という考え方だ(案1)。「高度急性期病床は○千床、回復期病床は○万床・・・」と病床区分を細分化するイメージである。
 2つ目は「現在の医療法上の病床区分は変えず、病床機能報告制度の医療機能について、今後現状を把握し、その結果を分析したうえで、定量的な基準を定めて、各機能の必要な病床へと誘導していく」というもの(案2)だ。
 
 この日も引続き議論を行い、厚労省からは改めて案1、案2の比較・説明がなされ、「新たな案」を検討する上での次のような論点が示された(p14〜p15参照)(p7〜p15参照)。
 
(i)病床機能報告制度の各医療機能の基準に合致していれば、当該医療機能として報告できることにしつつ、医療機関の自主的取組みや医療機関相互の協議により、機能分化連携を進め、必要量に向けて収れんさせていく
(ii)医療機関相互の協議の場の実効性を高めるため、医療機関に対して協議の場への参加と合意事項への協力の努力義務を課す
(iii)合意を無視した一部医療機関が現れた場合に協議の場が機能不全となるため、医療審議会の意見を聴いたうえで、(a)一定期間稼動していない病床の稼動・削減に係る要請(b)都道府県知事による医療機能の転換の要請―をできることとする
(iv)(iii)の(b)の都道府県知事の要請に従わない場合、医療機関名を公表し、各種補助金の交付対象・福祉医療機構の融資対象からの除外ができるとする
(v)既存医療機関が必要量より過剰な医療機能に転換しようとする場合は、都道府県知事が、医療審議会での説明や転換計画書の提出を求めた上で、医療審議会の意見を聴き転換にやむを得ない事情がない場合には、転換の中止を要請できることとする
(vi)(v)の場合、都道府県の要請に従わないときは、医療機関名を公表し、各種補助金の交付対象・福祉医療機構の融資対象からの除外、地域医療支援病院・特定機能病院の不承認・承認取消ができるとする
 
 これについて、日本医師会と四病院団体協議会から「案3」として新たな提案がなされた(p30参照)。
 その内容は、「現在の医療法上の病床区分は変えずに、病床機能報告制度の医療機能について、今後現状を把握し、その結果を踏まえて、それぞれの医療機関が自ら担う機能や今後の方向性を自主的に選択する。このことで、地域のニーズに応じた病床数に収れんさせていく」というものだ。
 具体的には次のような説明がされた。
●現在の医療法上の病床区分は変更しないが、病床機能報告制度を活用し、わかりやすい病院機能などを示す
●病床機能報告制度では、各医療機能の内容は定性的な内容とし、将来的に地域のニーズに応じた定量的な「指標」を設定する
●必要な医療機能の病床数を確保するため、地域の実情に応じた基金等の財政支援や診療報酬を適切に組合わせる
 
 これらについて、委員からは厚労省案、日医・四病協案ともに大筋で異論はでず、中川委員(日医副会長)は「日医・四病協の案3と従来の厚労省案2との違いは、医療機関が連携・情報交換し協議の場を随時設けていくことだが、厚労省の新しい案にはまさに盛込まれている」と評価した。
 また山口委員(NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)は「地域医療支援病院・特定機能病院の不承認・承認取消は、診療を受けている患者に不利益が及ぶことも考えられる。慎重な議論をしてほしい」と指摘するなど、都道府県の要請に従わない場合の処分について慎重な対応を求める意見が多く出された。
 
 
◆臨床研究中核病院(仮称)を創設し、研究の集約化と効率化を図る
 
 (2)の臨床研究の推進等については、まず厚労省当局から現状の課題として、(i)医師のほか、臨床研究を戦略的に企画・立案・実施するマネジメントや被験者ケアを担う人材の不足(ii)必要なデータ管理システム等の設備が不十分(iii)多施設共同研究を行う場合の調整事務局が不十分―等が示され、解決するため十分な人材・設備等を持つ拠点病院の整備が必要である旨が説明された(p17〜p23参照)。
 
 具体的には、臨床研究中核病院(仮称)(現在の早期・探索的臨床試験拠点と臨床研究中核病院をあわせるイメージ)を医療法上に位置づけた上で、一定の基準を満たした病院について、厚生労働省が社会保障審議会の意見を聞いた上で承認してはどうかとしている(p21参照)。
 
 厚労省当局は、臨床研究中核病院を承認し病院がその名称を独占することで、次のような良質な医療が提供されるとしている。
●臨床研究に参加を希望する患者が質の高い研究を行う病院を把握してアクセスできるようになる
●患者を集約して診療データの収集等を行えるため、臨床研究が効率的に行われる
●臨床研究中核病院が他の医療機関の臨床研究の実施をサポートするほか、共同研究を行う場合には中核となって研究を実施することで他の医療機関の臨床研究の質の向上が図られる
 
 このほか、X線検診車におけるX線撮影時の医師または歯科医師の立会いについて見直し案が提示されている。これは平成25年度厚生労働特別研究事業として行った、医師・歯科医師の立会いがない状況でのX線撮影の安全性に関する調査研究結果に基づいたもの。それによるとX線検診車で胸部X線撮影を行う場合に、医師・歯科医師の立会いがなくても安全性は十分であることが確認されている(p21〜p22参照)。
 なお、胃透視撮影や乳房撮影等については、医行為に関連する手技等の評価を行う必要があり、調査結果による立会いの有無の評価は困難であることが示唆されている。
 
 そこで、厚労省当局は、診療放射線技師法第26条第2項を改正し、病院または診療所以外の場所で、健康診断として胸部X線撮影のみを行う場合に限り、医師または歯科医師の立会いを求めないこととしてはどうかとしている。
 
 
◆次期診療報酬改定の基本方針に消費税引上げ対応を明記
 
 (3)の次期診療報酬改定の基本方針については、厚労省から骨子案に肉づけした基本方針案が提示された(p24〜p27参照)。
 
 骨子案は11月8日の医療保険部会で議論されたもので、改定の視点については、従前の基本方針を踏襲して次の4本としている。
(i)充実が求められる分野を適切に評価していく視点
(ii)患者等から見て分かりやすく納得でき、安心・安全で生活の質にも配慮した医療を実現する視点
(iii)医療従事者の負担を軽減する視点
(iv)効率化の余地があると思われる領域を適正化する視点
 
 骨子案からの主な変更部分・追加部分は次のとおり。
 基本的考え方については、改定の視点の(ii)が、患者等から見て分かりやすく納得でき、安心・安全で質の高い医療を実現する視点―に変更された(p24参照)。
 
 また、基本方針については「1.重点課題」の「V有床診療所における入院医療について」で、地域包括ケアシステムの構築を目指していく中で、有床診療所の評価について検討を行う必要があることが明記されている(p26参照)。
 また、「2.改定の視点」の次の視点が追加されている。
●緩和ケアを含むがん医療の推進
●かかりつけ薬局機能を活用し、患者個々の薬歴を踏まえた投薬管理・指導の推進
●患者に対する相談指導の支援
●入院中のADL(日常生活動作)低下の予防
 
 目を引く大きな追加部分は「III消費税率8%への引上げに伴う対応」が明記されたことだ(p26参照)。
 具体的には、医療機関等に実質的な負担が生じることのないよう、消費税率8%への引上げ時には、別建ての高額投資対応は実施せず診療報酬改定により対応するべきとしている。また、診療報酬による対応においては、医療経済実態調査の結果を踏まえ、基本診療料・調剤基本料への上乗せによる対応を中心としつつ、個別項目への上乗せを組み合わせる形で対応するべきとしている。
 
 また部会では、自民党社会保障制度に関する特命委員会医療に関するプロジェクトチームと公明党社会保障制度調査会から、それぞれ26年度診療報酬改定についての提言が田村厚生労大臣に提出されたことが報告され、その内容が参考として示された(p47〜p49参照)。
 
 自民党委員会からは、7対1入院基本料の見直しに関連し、急性期後の受け皿となる病床の確保、在宅医療の充実を行うことや、有床診療所の評価について、地域包括ケアシステムにおける位置づけのもと適切な評価を行うことなどが提言されている。
 また、消費税については、消費税8%への引上げに伴う対応は、必要な財源を確保し消費税対応分が明確になるよう求めている(p47〜p48参照)。
 
 一方、公明党調査会からも、消費税引上げに伴う改定率を別途明確にすることや、急性期を脱した患者の受け皿となる病床の整備と適切評価、有床診の機能に応じた適切な評価が求められている(p49参照)。
 
 これらについて委員からは、大きな反対意見や批判はなく、基本方針への項目追加を求める声が相次いだ。藤原委員(経団連経済政策本部長)は「ICT化や遠隔診療も明記してほしい」と要望。花井委員(連合総合政策局長)は「在宅栄養管理や褥瘡対策も盛り込んでほしい」と指摘するなど、医療充実や安定財源確保のため基本方針への文言追加の要望が多く出された。

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