[精神医療] 精神障害者の6割以上が年収100万円未満、経済的理由から受診抑制

[平成25年度精神障害者の暮らしや受診状況の実態等に関するアンケート調査―奈良県医療政策部(H25.11.14)]

精神科医療行政ニュース - 2013年 11月 22日

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 奈良県医療政策部は11月14日に、精神障害者の暮らしや受診状況の実態等に関するアンケート調査の結果を公表しました。
 県は、精神障害者とその家族の暮らしむきや、医療機関への受診状況等を取りまとめ分析するために、精神障害者保健福祉手帳を所持する6742名(平成25年3月末現在)から無作為に、約1200名を抽出してアンケートを実施しました。調査期間は、平成25年8月12日〜8月31日で、有効回答数は527名(有効回答率43.4%)でした。

 

 調査結果の一部を紹介します。

 

 現在の治療形態を見てみると、通院中が84%、入院中が11%でした。手帳等級別では、1級が入院中34%・通院中57%、2級が入院中8%・通院中89%、3級が入院中2%・通院中94%という状況です。医療保険は、国民健康保険が51%と最も多く、次いで生活保護が17%、社保家族が16%、社保本人は7%であることから、手帳所持者のうち、働き盛りの世代である18〜59歳の多くは、雇用されていない割合が低いことが明らかになっています。

 

 次に、本人の年間収入を見てみると、100万円未満が61%で、平均年間収入はおよそ95万円でした。年収の種類では、年金による収入が73%、生活保護と給与が14%で、年金と生活保護のいわゆる社会保障制度、および家族(主に年老いた親への依存)によって支えられている割合が高いことがわかりました。また、同居家族の年間収入は、300万円未満が57%で、平均年収はおよそ271万円でした。
 さらに、暮らしむき(収支状況)に余裕がない世帯割合は83%にのぼり、世帯の平均年間収入はおよそ266万円(平成24年に厚生労働省が実施した国民生活基礎調査では、平均年間収入548万円であることから、その約半分程度)でした。

 

 精神科医療費について見てみます。精神科への受診頻度は、多い順から、月に1回が40%、月2回が22%となっています。ほとんどかかっていないが6%であるものの、ほとんど毎日が5%という状況です。また、入院中は9%でした。精神科医療費の1か月あたりの平均支払額は1万610円で、この額は支払基金・国保連合会からの請求額とほぼ同額であると報告されています。

 一方、精神科以外の医療費の1か月あたりの平均支払額は6764円でした。精神科以外の病気では、歯科が最も多く、高血圧、糖尿病、高脂血症と続き、慢性疾患の割合が高いことがわかりました。中でも、糖尿病・心臓病の1級手帳所持者の罹患率の高さが目立っており、これらの病気は継続して治療が必要であることから、医療費負担の大きさがうかがえる、と分析しています。他方、精神科以外の病気に罹患していると回答した人の中で、治療を受けていない人が19%いました。治療を受けていない理由では「お金がないから」「家族に経済的に負担をかけるから」「将来の収入不安」など、経済的理由により44%が受診を抑制している姿が、今回の調査から明らかになりました。

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