[改定速報] 後発品出現から5年経過の先発品、毎回薬価特例引下げの可能性も

[中央社会保険医療協議会 薬価専門部会(第95回 11/20)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 11月 20日

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 厚生労働省は11月20日に、中医協の薬価専門部会を開催した。
 この日は、前回に引続き「長期収載品と後発品」について議論したほか、後発品メーカーからの意見聴取などを行った。
 
 
◆上市から5年経過した後発品のある先発品、改正ごとに薬価引下げの可能性も
 
 「長期収載品と後発品」については、前回(11月13日)会合で「後発品の上市から5年間で、後発品への置換え割合が60%以上に達しない場合には、長期収載品価格を引下げる」ルールを導入してはどうかという提案が厚労省当局から行われた(p25参照)(p31参照)。
 今回は、さらに踏み込んだ提案がなされている。それによると、新たな長期収載品の価格引下げルールは、次のようなものになる(p32〜p33参照)。
●後発品上市後5年を経過した後、最初の薬価改正において判定基準(後発品割合60%以上、逆にいえば先発品占有率40%以下)をクリアしているか否かを判断する
●クリアしていれば長期収載品の価格は維持される(もちろん通常の市場実勢価格を踏まえた引下げ(薬価改正)は行われる)
●クリアしていなければ長期収載品の価格は、通常の薬価改正に加えて、新ルールに基づく引下げが行われる
●次の薬価改正において判定基準をクリアしていなければ、さらに、通常の薬価改正に加えて、新ルールに基づく薬価引下げが行われる
 
 つまり、後発品が上市されてから5年が経過した長期収載品(先発品)については、薬価改正のたびに上記の判定基準を満たしているかを判断し、基準をクリアしていなければ、その都度、「通常の薬価改正(引下げ)」と「新ルールに基づく薬価引下げ」が行われることになるのだ。
 
 
 この新ルールは「後発品への置換え」を促進するもので、「後発品が初めて薬価収載された場合の、長期収載品価格の特例引下げ」と同じ目的だ。
 ちなみに、後発品への置換えによって「22年度は3500億円、24年度は4100億円」の医療費適正化効果があることを厚労省当局は試算している。ここに「後発品出現時の特例引下げ」分などを加えると、22年度には3730億円、24年度には4470億円の財政影響(医療費適正化)が生じている格好だ(p27〜p30参照)。
 このため「両者を並存させるか、新ルールに1本化するか」も検討テーマとなってくる。
 診療側の安達委員(京都府医師会副会長)や中川委員(日医副会長)は、「後発品が初めて薬価収載された場合には4〜6%の薬価引下げが行われるが、新ルールに1本化された場合、現在と比べて少なくとも5年間は長期収載品の薬価が維持されることになり、好ましくないのではないか」と指摘。
 また支払側の石山委員(日本経団連医療改革部会部会長代理)も、「両者は厳密には違う機能をもっており、並存させるべきと考える」とコメントしている。
 
 新ルールについては「上市から5年間で、後発品への置換えが60%以上になっていない場合に発動する」という方向が示されているが、確定したわけではない。また、基準をクリアしない場合、どの程度薬価引下げが行われるのかも未定だ。
 この点について厚労省保険局医療課の近澤薬剤管理官は、「引下げ割合を仮置きし、10%刻み(たとえば40%、50%、60%といった具合)での財政影響シミュレーションを提示する」ことを約束している。
 
 なお、近澤薬剤管理官は「新ルールは、毎回の薬価改正において、通常の薬価改正とは別に薬価の引下げを行う可能性をもち、たいへん厳しいものである」とコメントしている。
 
 
◆後発品メーカーは、初収載時の『先発品価格の70%』維持を要望
 
 この日は、後発医薬品メーカーの団体である「日本ジェネリック製薬協会(JGA)」が意見陳述を行っている(p3〜p12参照)。
 前回会合では、後発品使用促進のために「後発品の当初薬価引下げ」「後発品価格バラつきの是正」も議論になり、前者の後発品薬価については次のような提案が厚労省当局からなされていた。
●後発品の当初価格を、通常は『先発品の70%×0.79(つまり55.3%)』、品目数が多い場合には『先発品の60%×0.79(つまり47.4%)』とする
●品目数にかかわらず、後発品の当初薬価は先発品の『50%』とする
 
 この提案に対しJGAは「24年度改定で導入された『後発品の品目数が10を超える場合には、薬価設定を通常の70%より低い60%とする』というルールの分析・評価がなされていないにもかかわらず、さらに初収載品目の薬価引下げを議論することは時期尚早」と主張。
 そのうえで「後発品価格を『先発品価格の60%』を超えて適正価格販売を行っている品目が30%を超えており、これらの品目を有するメーカーの努力を無視せず、『0.7掛けの維持』をお願いしたい」と要望している。
 
 また、後発品価格のバラつきについては、「一定の縮小が見られる」「バラつきの多い規格は一部のみである」点を強調し、後発品メーカーのやる気をそぐ「一まとめとする薬価算定方式」の是非を再検討すべきと提案している。
 
 中医協委員からは、この要望・提案よりも、根本に遡った指摘がなされた。
 支払側の白川委員(健保連専務理事)は、「後発品使用促進の目標をクリアできていない(つまり使用が進まない)原因はどこにあると考えているか」と質問。
 JGAサイドは「国民や医療関係者の間に、後発品に対する漠然とした不安がある。それを払拭するための努力を行っているが、努力が足りていないと感じている」と答弁するにとどめている。
 
 また診療側の安達委員は、「後発品については、『高いほうが信用できる』と考える人が多い状況だ。後発品使用促進に向けて先発品メーカーへのペナルティとも言える措置の議論が先行しているが、後発品メーカーも足並みをそろえて使用促進に取組んでほしい』と要望している。
 さらに、公益代表の印南委員(慶應義塾大学総合政策学部教授)からは「業界からも普及・促進に向けた具体的提案をして欲しい」旨の要望が出されている。
 
 
 
 このほか、土屋専門委員(エーザイ株式会社代表執行役専務)らから「保健医療上必要性の高い医薬品に関する業界内の取組み」が紹介された。
 輸液や血液製剤について、災害等により、ある企業の工場が被災しても、別企業がバックアップし、医療上必要な医薬品の供給に支障がないようにしている旨が具体的に提示されている(p13〜p24参照)。
 なお、土屋専門委員は「不採算品目再算定制度は、適用されるか否かが不安定であり、かつ対象選定が財源規模に左右される。最低薬価制度は、輸液等の実態にマッチしていない」ことを強調し、「輸液や血液製剤などの医療上必要な基本的医薬品について、不採算に陥る前の予防措置を創設すべき」と要望している。

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