[DPC] DPC機能評価係数IIの新たな指数として「後発品割合」を導入
[診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会(平成25年度 第9回 11/13)《厚生労働省》]
精神科医療行政ニュース - 2013年 11月 15日
厚生労働省は11月13日に、診療報酬調査専門組織の「DPC評価分科会」を開催した。
この日は、これまでの議論を踏まえて(1)機能評価係数II(2)算定ルール等(3)II群の要件―のそれぞれについて論点が示された。
◆機能評価係数IIの7番目の指数として「後発品使用割合」を了承
機能評価係数IIについては、「データ提出指数」「効率性指数」「救急医療指数」「地域医療指数」の4つの指数が見直される方向が打出された(p17〜p61参照)。
「データ提出指数」は、これまで「正確なデータを期限までに提出」することを評価するとされてきたが、26年度以降は異なる視点での評価体系も加味してはどうかとの提案がなされている。
見直し項目は多岐にわたり、委員の意見は集約されていないが、次のような見直し内容が示された(p17〜p26参照)。
●現在、「部位不明・詳細不明コード」の使用割合が20%以上の場合には、指数を5%減算することとなっているが、この使用割合(たとえば15%以上に拡大する)と減算幅(たとえば10%減に強化する)を見直してはどうか
●矛盾のあるデータ(様式1の親様式と子様式で、同じ患者について性別等が異なっているものなど)が一定以上ある場合には、指数を減算してはどうか
●傷病名コードに記載されていない傷病名(未コード化傷病名)の使用率が一定以上ある場合には、指数を減算してはどうか
●適切な保険診療を普及するために、「コーディング委員会の開催」「厚労省指導医療官への医師派遣」を行っている場合には、指数を加算してはどうか
このうち、最後の「指導医療官への医師派遣」(p26参照)はまったく新しく提案されたもので、厚労省保険局医療課の佐々木企画官は「I群の病院から、一定期間、医師を指導医療官へと派遣していただき、実際の業務を行う中で保険診療への理解を深め、期間満了後はI群病院へもどって、医学生に保険診療の重要性を伝授してもらうことなどを評価してはどうかと考えている」と説明している。
I群は大学病院本院であり、保険診療の重要性を教育することの評価を試行的に行うというものだ。厚労省保険局医療課の担当者は「I群の中で財政中立とする」との考えを披露している。
この提案について委員からは「II群の病院も対象としてはどうか」との意見が出されており、今後、さらなる検討が行われる模様だ。
なお「データ提出指数」の名称を「保険診療指数」と変更してはどうかとの提案がなされているが(p18参照)、伏見委員(東京医科歯科大大学院教授)は「『保険診療に役立てば』という視点で評価が拡大してしまわないか。指数の機能変更につながるもので慎重に検討すべき」と反対している。
「効率性指数」においては、後発品使用割合を評価してはどうかとの提案がなされていたが、その後の議論で「効率性とは別の体系の中で評価すべき」との指摘が出され、厚労省は次のような再提案を行い、概ね了承された(p27〜p28参照)。
●後発医薬品の使用割合による評価方法は、効率性指数の中に導入するのではなく、7項目の新規項目として別建てで評価する
●評価対象とする薬剤の範囲について、「入院医療で使用される全薬剤(包括部分+出来高部分)」を対象とする
●「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」の目標値である60%(新指標)を評価上限とし、連続値で評価する
「救急医療指数」については、前回(10月30日)会合におけるヒアリング結果から、病院間で「救急医療の定義」にバラつきがあることなどが分かり、次のように算定式を見直す提案が行われている(p29〜p30参照)。
●A205【救急医療管理加算】の施設基準を届出ている病院では、評価対象となる『1症例』の考え方を「次の(i)または(ii)の要件を満たす患者について、入院後2日間までの包括範囲出来高点数(出来高診療実績)と診断群分類点数表の設定点数との差額の総和」とする
(i)「救急医療入院」かつA205【救急医療管理加算】を1日以上算定している症例
(ii)「救急医療入院」かつ、A300【救命救急入院料】やA301【特定集中治療室管理料】などのいずれかの特定入院料(もしくは差額加算)を入院初日から1日以上算定している症例
●A205【救急医療管理加算】の施設基準を届出ていない病院では、従前どおりとする
この見直しには、「救急医療」の範囲を「一定程度、重篤な患者を受けれいている」ものに限定しようという狙いがある。
見直し案は概ね了承されている。
「地域医療指数」については、新たに次の2項目が加わり、12項目で評価する方向が了承されている(p31〜p33参照)。
●『急性心筋梗塞の実績評価』:医療資源をもっとも投入した傷病名が「急性心筋梗塞」であり、予定外入院であって時間外対応加算が算定され、入院同日(この点争いがあり、さらなる検討が行われる可能性もある)に経皮的冠動脈形成術等が一定程度実施されていること
●『精神疾患の評価』:A230-3【精神科身体合併症管理加算】の施設基準を届出ていること
◆3日ルールを改め「7日ルール」に
(2)の算定ルールに関しては、まず「高額薬剤に対応するために導入した新たな点数設定方式」の継続等について論点案が示された(p62〜p63参照)。
これは抗がん剤などの高額薬剤を使用する場合、「入院期間を一定程度以上にしなければ医療機関側の持出しが生じてしまうため、入院期間を引き延ばす」ことを是正するために、「入院期間初日の点数に、高額薬剤の費用を包含する」という仕組みだ。
24年度改定で22の診断群に導入されたが、18の診断群では平均在院日数が短縮したが、4の診断群では短縮が認められなかった。
これを踏まえ、厚労省当局は次の考え方を提示し、概ね了承されている。
(i)在院日数短縮が認められた18の診断群では、この仕組みを継続する
(ii)在院日数短縮が認められない4診断群では、継続すべきかどうかを専門家の意見を踏まえて検討する
(iii)新たに適用を検討する診断群については、専門家の意見を踏まえて検討する
なお、高額薬剤だけではなく、高額な機器を用いる検査(たとえば心臓カテーテル検査など)への導入も検討される。
また「特定入院期間(包括評価期間)を過ぎてから高額な薬剤・材料を用いる検査等が行われた場合」の取扱いについても論点が提示された(p64〜p65参照)。
たとえば心臓カテーテル検査などが、包括評価期間を過ぎてから実施された場合、検査費用は出来高算定できるが、包括評価にも内包されている。
このため「検査費用の二重取りではないか」との批判がなされているのだ。
このケースについて厚労省当局は高額な抗がん剤と同様に、「包括評価期間では実施されず、出来高算定期間で初めて実施するような場合には、検査費用を算定できない」とする仕組みを導入すべきかどうかという論点を提示している。
委員からは「止むを得ないケースも少なくない」「事務処理が煩雑になりすぎる」との慎重論が数多く出されており、導入は難しそうな状況だ。
さらにDPCでは「一度退院し、入院期間をリセットして、高いDPC点数を改めて算定する」という弊害を除去するために、「3日以内の再入院で、入院傷病名が前入院の最大医療資源投入傷病名と同じ場合には、入院期間は通算する(高いDPC点数を算定できない)」というルール(3日ルール)が設けられている。
この点、現状を調査したところ、再入院時の傷病名を操作し3日ルールを回避していると考えられるケースが少なくないため、厚労省は次のような提案を行っている。この提案も概ね了承された格好だ(p66〜p68参照)(p71〜p74参照)。
●「入院の契機となった傷病名」または「最も医療資源を投入した傷病名」が同一病名である場合「一連」と見なす(現在は、「入院の契機となった傷病名」のみで判断)
●現在は「3日以内」となっているところを、「7日」以内の同一病名の再入院は、一連として取扱う(7日ルール)
●化学療法に係る分類については、抗がん剤等の薬剤の費用がDPC包括範囲に含まれており、一連と見なされる期間を「7日」に拡大することによって必要な費用が償還されない事例も存在すると考えられ、その取扱いを検討する
委員からは「とりあえずやってみてはどうか」と試行を求める意見が相次いだ。
ところで、この仕組みが適用されると、「新たな7日ルールの適用があるかどうかは、2回目の入院期間が終了(つまり退院)しなければ分からず、事務処理が煩雑になる」ことが予想される。この点について、事務を円滑に処理する手法も今後検討される模様だ。
さらに、最近話題になっている「持参薬」については次のような論点が提示されている(p69〜p70参照)。
(i)DPC 病院において当該予定入院中に療養を行う疾患に対して用いる薬剤を患者に持参させることを制限する規定を設けてはどうか(例:がんの治療を目的に予定入院する際に、内服の抗がん剤や制吐薬を外来で処方し患者に持参させる)
(ii)予定入院がある際に、外来において、入院期間中も含む日数分を処方することに規定を設けてはどうか(例:3日後に当該病院に入院が予定されている際、外来で30日分処方する)
(iii)持参薬の使用の有無について退院患者調査の様式1で調査してはどうか
このテーマについて厚労省保険局の担当者は、「持参薬は非常に難しい問題だ。(i)については委員に好意的に受止められたが、(ii)は課題が多そうだ」とコメントしている。
◆II群病院の要件、外保連手術指数の最新版活用して設定
(3)の「II群病院の要件」については、大きな見直しはなく、次のような細部の修正にとどまる見込みだ(p81〜p84参照)。
(i)実績要件3(手術の難易度等の評価)において、現時点で最新の外保連試案(第8.2版)を活用する
(ii)実績要件3における「外保連手術指数の集計」にあたっては、様式1に記載された手術のうち、複数の記載がある場合には、「もっとも外保連手術指数が高い手術」の指数に基づいて評価する
(iii)実績要件2(臨床研修の実施)について、基幹型臨床研修病院の実績のみを評価する