[改定速報] 後発品上市から5年で60%置換なき長期収載品、新たな薬価引下げ
[中央社会保険医療協議会 薬価専門部会(第94回 11/13)《厚生労働省》]
平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 11月 13日
厚生労働省は11月13日に、中医協の薬価専門部会を開催した。
この日は、(1)長期収載品と後発品(2)医療上必要性の高い医薬品の継続的な安定供給―の大きく2点について議論を行った。
◆後発品への置換え進めるため、長期収載品に新たな特例引下げルール設定
(1)の「長期収載品と後発品」については、すでに昨年(平成24年)12月に薬価専門部会として中間取りまとめを行い、総会に報告済みだ。
そこでは、「長期収載品の後発品への置換えを推進していく」方向が確認された。
具体的には、「後発品が上市されてから一定期間の間に置換え割合が一定以下の場合には、長期収載品薬価の引下げ(特例引下げ)を行う」という仕組みを導入することとなっている(p4〜p5参照)。
ところで、先発品(長期収載品も先発品)の薬価の推移を見てみると、次のように考えることができる(p10参照)。
●新薬として薬価が設定される(類似薬効比較方式あるいは原価計算方式)。
●2年に1度の薬価改定により、薬価が引下げられる(ただし、新薬創出等加算によって一定の下支えが行われる)。
●特許期間が終了すると、後発品が登場する。そこでは、これまで下支えされてきた加算分の引下げ、通常の薬価改定による引下げ、後発品出現に伴う特例引下げが行われる。
●後発品が登場してから一定期間の間に、後発品への置換えが進まない場合には、さらなる特例引下げが行われる(今回の提案)。
新たな特例引下げについては、「一定期間をどの程度と考えるか」「一定割合をどの程度に設定するか」「薬価引下げ幅をどの程度に設定するか」という論点があげられる(p11参照)。
厚労省保険局医療課の近澤薬剤管理官は、期間と置換え割合について「後発品使用促進のロードマップを参考に、『5年間』で後発品置換え割合が『60%』とすることが考えられる」と提案している。
この点、矢内委員(全国健康保険協会東京支部長)は「一定期間を5年とすると、薬価制度見直し(2年に1度)とどういう関係になるのか」という指摘をしている。
また、「薬価引下げ幅」については、「新薬創出等加算額」「後発品が初めて登場した場合の特例引下げ」に加えて、「後発品への置換えによる医療費適正化効果の額」も合わせて検討してはどうか、との考え方が示された。
ちなみに後発品出現時の特例引下げはマイナス4〜8%、22・24年度に行われた追加引下げでは、22年度はマイナス2.2%、24年度はマイナス0.86%となっている(p7〜p8参照)。
このように、引下げ幅については今後の議論を待つよりないが、厚労省の近澤薬剤管理官は「後発品使用に係る結果検証調査結果からは、国民が後発品の価格について『先発品の半額』程度をイメージしていることが分かる。1つの参考になるのではないか」と紹介している(p16参照)。
なお、厚労省の近澤薬剤管理官は「新たな特例引下げがルール化されれば、22年度・24年度改定で行われた後発品使用促進が進まないことに起因する『長期収載品の追加引下げ』は行われなくなるのではないか」と見通している。
この提案に対し、中医協委員からは概ね歓迎する意見が出されている。
しかし、製薬メーカーの代表でもある専門委員からは「方向は昨年(24年)末に既に決まっている。ただし企業としては『後発品の置換えを自ら支援する』ことには消極的にならざるを得ないのではないか」と苦しい胸のうちを明らかにしている。
◆後発品の価格バラつき是正に向け、当初価格設定ルールなど見直し
後発品については、「後発品の品目数が多く、薬価についてもバラつきが大きい」という指摘がある。
この点、24年度改定では「後発品の当初価格の設定ルール見直し(通常は『先発品薬価の70%』だが、後発品の品目数が10を超える場合には『先発品薬価の60%』とするなど)」や、「価格の低い後発品の薬価統一」などの見直しが行われた。
厚労省当局では、26年度においてもこの見直し方向を維持する考えだ(p14〜p22参照)。
具体的には、次のような提案がなされている
●後発品の当初価格を、通常は『70%×0.79(つまり55.3%)』、品目数が多い場合には『60%×0.79(つまり47.4%)』とする、あるいは品目数にかかわらず『50%』とする(p18参照)
●後発品の価格帯(品目数が多いため)を削減するために、たとえば『後発品の最高価格から○%までの品目は統一価格とする(銘柄別収載は維持)』などの見直しを行う(p22参照)
たとえばアレルギー性鼻炎治療薬のセチリジン塩酸塩については、先発品(ジルテック錠5)価格は88.70円だが、後発品の価格は69.00円〜14.10円という幅がある(p21参照)。
この問題について安達委員(京都府医師会副会長)は、「価格幅が、医療関係者や国民における後発品の信頼性を損ねている。早急な是正が必要だ」と強く要望している。
◆医療上必要な医薬品の安定供給、白川委員から意見聴取要請
(2)の「医療上必要性の高い医薬品の継続的な安定供給」に向けては、不採算であるがゆえにメーカーが製造販売から撤退してしまうことを防ぐために、「不採算品目再算定(価格の引上げ)」や「最低薬価制度(剤形に応じて医薬品の最低価格を保証する)」が設けられている(p24〜p28参照)。
しかし、メーカーサイドは不十分であるとし「災害時等に安定供給を行う仕組みをメーカーが敷いている点の評価」を求めている。
この点について、厚労省当局は次のような論点を示している(p29参照)。
●災害時に備え供給体制を整備することは一般的なことであるから、「薬価制度上の施策を講じる必要性がある」といえるのか
●「不採算品目再算定」「最低薬価」では対応できない場合があるのか、あるとしたらどのようなものか
●仮に措置が必要だと判断された場合、どのような医薬品が医療上必要性の高い医薬品といえるのか
この問題について白川委員(健保連専務理事)は、「個々の医薬品で事情が違うようだ。それぞれの事情について詳しく知りたい」と述べ、関係者からの意見聴取(ヒアリング)を要望している。