[改定速報] 医療事故は院内調査をし、民間第三者機関が分析する仕組みに
[社会保障審議会 医療部会(第35回 11/8)《厚生労働省》]
平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 11月 11日
厚生労働省は11月8日に、社会保障審議会の「医療部会」を開催した。
この日は、(1)チーム医療の推進(2)特定機能病院・地域医療支援病院のあり方(3)医療事故に係る調査の仕組み(4)次期診療報酬改定の基本方針案―の4点について議論を行った(p1〜p2参照)。
◆チーム医療推進へ外国医師の臨床修練制度見直しや特定行為の看護師研修制度創設
(1)のチーム医療の推進については、(i)特定行為に係る看護師の研修制度創設(ii)診療放射線技師の業務範囲(iii)臨床検査技師の業務範囲(iv)歯科衛生士の業務実施体制(v)居宅(患家)での薬剤師の調剤業務(vi)外国医師等の臨床修練制度(vii)歯科技工士国家試験の全国統一化―の7点の見直し案が報告された(p4〜p22参照)。
具体的には(i)の特定行為に係る看護師の研修制度は、医師のみに認められている診療行為のうち、一部(特定行為)は「特別の研修を受けた看護師(特定看護師、仮称)が、医師の指示のもとに独自の判断で実施できるようにする」旨の検討がなされている。
厚労省は特定行為は省令で定め、その追加・改廃は医師、歯科医師、看護師等の専門家が参画する常設の審議の場を設置し、そこで検討して決定すると説明。また、指定研修機関における研修を終了したことの看護師籍への登録は、あくまで研修を終了したことを確認するものであって、新たな国家資格の創設ではないとしている(p11〜p13参照)。
(vi)の外国医師等の臨床修練制度の見直しは、現行では臨床修練の許可は最長2年の有効期間があるため、日本の医学部の大学院(一般に4年課程)に留学したとしても、十分に臨床教育を受けられない可能性がある。このため見直し案では、医学部の大学院に在学中である等の正当な理由があると認められる場合、最長2年間、有効期間の更新を認めてはどうかと提案している。
また、受入れ病院の責任において、「外国医師等の能力水準」「適切な指導体制」「医療事故等が起きた際の賠償能力」を確保する仕組みに改め、厚労大臣が関与する手続・要件を簡素化する(p20〜p21参照)。
(vii)の歯科技工士試験は現在、都道府県で行われている。しかし、近年インプラントやCAD/CAM等の精密技術が必要とされており、地域によっては高度な技術の試験問題を作成する試験委員を確保するのが困難な状況のため、全国統一化して国が実施するよう改めるもの(p22参照)。
これらについて山崎委員(日精協会長)は、「看護師の特定行為の事故責任は、看護師にあるのか医師にあるのか」と質問。厚労省は「事故の責任については司法判断によるが、看護師と医師の過失の程度で個別に判断される」と説明した。
◆特定機能病院は更新制導入へ、紹介率等要件も見直し
(2)の特定機能病院・地域医療支援病院のあり方については、下部組織の「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」の議論の状況が報告された(p26〜p28参照)。
特定機能病院の承認要件の見直し案として、まず高度な医療の質を継続的に確保するため、更新制度を導入することが示され、「標榜科」「専門医の配置」「紹介率」「論文数」の要件について見直し案が出された。【標榜科】は16すべての診療科の標榜、【専門医の配置】は医師の配置基準の半数以上の専門医の配置、【紹介率】は紹介患者への対応と逆紹介の実施を同一の算定式で評価していたものを、別々に評価、【論文数】は英語論文が年間70件以上―をそれぞれ要件化する(p27参照)。
また、内閣府の地方分権改革推進本部で、特定機能病院の報告聴取、立入検査等を都道府県に移譲する方向で検討されていることが報告された。
一方、地域医療支援病院は、「紹介率」「救急医療の提供」「研修実績」の要件が見直される。【紹介率】は紹介患者への対応と逆紹介の実施を同一の算定式で評価していたものを、別々に評価、【救急医療の提供】は救急医療圏の5%以上または年間1000件以上の救急搬送患者の受入れ、【研修実績】は地域の医療従事者への研修実績に関する基準を年間12回以上―がそれぞれ要件化される(p28参照)。
厚労省は特定機能病院の更新制について「今すぐの導入は見送るが、医療の質を充実するために議論は継続する」と説明している。
相澤委員(日病副会長)は「都道府県に権限を移譲するのはおかしい。国が特定機能病院を承認した以上、国が責任を持ち行うべきだと」都道府県への移譲に反対意見を示した。
◆医療事故は院内調査をし、民間第三者機関が分析する仕組みを医療法に位置づけ
(3)の医療事故に係る調査の仕組みについては、再発防止に向け医療事故が発生した医療機関(病院、診療所、助産所)において院内調査を行い、その調査報告を民間の第三者機関が収集・分析する仕組みを医療法上に位置づけることとしてはどうかと提案された(p29〜p38参照)。
具体的には、【対象】は「行った医療・管理に起因し、または起因すると疑われる死亡・死産(いずれも予期しなかったものに限る)」としている。
対象の医療事故について、【院内調査】は次の手順で医療機関が措置をとることになる。
●医療機関は、遺族に説明し第三者機関に届出なければならない
●医療機関は、速やかに必要な調査を行う
●医療機関は、調査結果を遺族に説明し、第三者機関に報告しなければならない
【第三者機関(医療事故調査・支援センター(仮称))】は民間の法人を指定するなどの方法で医療法上に位置づけ、次のような収集・分析を行う(p35参照)。
●院内調査の際の、医療機関からの求めに応じた助言
●医療機関の院内調査の結果報告についての確認・検証・分析
●遺族からの求めに応じて行う医療事故に係る調査・報告
●医療事故の再発防止に係る普及啓発
●外部の事故調査へ携わる者等への研修
遺族からの求めに応じて行う医療事故についての調査は、院内調査の結果に納得が得られなかった際に遺族または医療機関が申請し行うもので、結果を遺族・医療機関に通知することになる(p35参照)。
また、医療機関は医療事故調査・支援センター(仮称)の調査に協力すべきとして、協力せず調査ができない状況が生じた場合、その旨が医療機関名とともに公表されることとしてはどうかと提案されている(p35参照)。
費用負担は、学会・医療関係団体からの負担金や国の補助金に加えて、調査を申請した遺族や医療機関にも求めるものの、調査申請を妨げることにならないよう、負担のあり方について検討していくとしている(p37参照)。
山口委員(NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)は「第三者機関による中立性、透明性の担保は必要で避けて通れない」と発言。高智委員(健保連理事)は「賛成である。院内調査の納得性と透明性を高めるべき」と指摘し、概ね評価する声が多くあがった。
藤本委員(NPO法人地域医療を育てる会理事長)は「調査結果の司法での取扱いはどうなるのか」と質問。厚労省は「調査結果は紛争とは切離した扱いになる」と答弁している。
◆次期改定の基本方針案、重点課題は「医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実等」
(4)次期診療報酬改定の基本方針・骨子案について、厚労省は重点課題を「医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実等」の1本に絞って提案している。社会保障・税一体改革を、診療報酬の側面から強く推進していく意気込みがみてとれる(p41〜p46参照)。
また改定の視点に関しては、従前の基本方針を踏襲して次の4本としている(p42参照)。
(a)充実が求められる分野を適切に評価していく視点
(b)患者等から見て分かりやすく納得でき、安心・安全で生活の質にも配慮した医療を実現する視点
(c)医療従事者の負担を軽減する視点
(d)効率化の余地があると思われる領域を適正化する視点
骨子案の内容については、11月8日の医療保険部会の記事をご覧いただきたい。
これについて複数の委員から「消費税改定部分と従来の改定部分を分けて明示してほしい」と要望が出された。厚労省は「最終的な改定率だけ示されることになると思う。ただし、消費税分科会で消費税改定分についての議論が見えることになる」と説明している。