[診療報酬] 医療経済実調結果報告、病院はやや悪化、診療所は若干改善
[中央社会保険医療協議会 調査実施小委員会(第38回 11/6)《厚生労働省》]
精神科医療行政ニュース - 2013年 11月 08日
厚生労働省は11月6日に、中医協の調査実施小委員会を開催した。
この日は、厚労省当局から第19回医療経済実態調査結果が報告された。
医療経済実態調査は、医療機関等調査と保険者調査の2つで構成されている。
前者の医療機関等調査は、医療機関や薬局に対し、アンケート形式で経営状況を調査するもの(p4〜p343参照)。
後者の保険者調査は、協会けんぽや健保組合、市町村国保など医療保険者の財政状況を見たものだ(p344〜p350参照)。
この結果を参考に、次期(今回は平成26年度の)診療報酬改定の内容を検討していくことになる.。
診療側、支払側双方とも、「結果を分析して、別途見解を表明する」ことを明らかにしている。なお、森田中医協会長(学習院大法学部教授)は「11月下旬に、改定率に関する意見を取りまとめ、内閣に提出したい」とコメントしている。
◆病院経営はわずかに悪化、診療所経営は若干改善傾向に
医療機関等調査の結果を眺めてみよう(p4〜p13参照)。
従前は、診療日数の変動が少ない6月を対象に調査していたが、今回調査から「通年調査」となっており、季節変動(たとえばインフルエンザの流行や、夏季の結膜炎増加等)などの診療科別の差異は吸収されていると見られる。
医療法人立の病院(471施設)では、24年度の損益差額(医業・介護収益と医業・介護費用の差)は7620万5000円で、損益差率はプラス4.4%。改定前の23年度に比べて0.1ポイント増加しており、若干の経営改善がうかがえる。
国立病院(27施設)では、24年度の損益差額はマイナス396万9000円で、損益差率はマイナス0.1%。23年度に比べて0.4ポイント改善している。
公立病院(177施設)では、24年度の損益差額はマイナス3億1897万円で、損益差率はマイナス5.8%。23年度に比べて0.7ポイント改善しているが、依然、厳しい経営状況が続いている。
これらに公的病院等を加えた病院全体(883施設)の24年度経営状況を見ると、損益差額はマイナス1136万5000円で、損益差率はマイナス0.4%。23年度に比べて0.5ポイント改善している。
精神科病院に目を移すと、全体(186施設)の24年度経営状況は、損益差額マイナス929万4000円、損益差率マイナス0.6%で、前年度より0.6ポイント悪化している。
一方、診療所のうち、有床診療所(131施設)では、24年度の損益差額は2502万7000円で、損益差率はプラス8.7%。黒字経営だが、23年度に比べて0.3ポイント悪化している。
また、無床診療所(1532施設)では、24年度の損益差額は1725万5000円で、損益差率はプラス14.8%。23年度に比べて0.9ポイントと大きく改善している。
診療所全体で見てみると、24年度の損益差額は1786万7000円で、損益差率はプラス13.7%。23年度よりも0.6ポイント改善している。
歯科診療所(598施設)については、24年度の損益差額は986万8000円で、損益差率はプラス20.3%。23年度に比べて0.1ポイント増という状況だ。
薬局については、全体(915施設)で見ると、24年度の損益差額は921万2000円で、損益差率はプラス5.5%(前年度に比べて1.0ポイント減少)。
規模が大きいほど、経営状況が良い状況がうかがえる。
◆消費税率8%に対応するため、医業費用の中の消費税課税部分を明らかに
今回調査では、26年4月からの消費税率引上げに伴う診療報酬プラス改定の基礎資料とするために、消費税関連調査も行っている。
具体的には、費用の中で消費税が課税されている項目と金額、比率等を調べている。
医業費用には、給与費、薬剤費、委託費などさまざまな項目があるが、すべてに消費税が課税されるわけではない。
したがって、消費税率引上げに対処するための診療報酬プラス改定の改定率等を考えるにあたっては、消費税が課税されている部分(中でも控除対象外消費税、いわゆる損税となっている部分)を正確に把握する必要がある。
この課税対象部分が、医業費用の中でどの程度を占めるのかを医科(入院・外来別)、歯科、調剤のそれぞれについて把握し、その比率に従って財源を配分していくことになる。
調査結果を見ると、「費用に占める課税費用の比率」について、次のような状況が明らかになった(24年度)(p316〜p337参照)。
●一般病院(法人、その他)では67.9%(税込、以下同)
●精神科病院(法人、その他)では68.6%
●特定機能病院では85.1%
●有床診療所では64.5%
●無床診療所では67.9%
●歯科診療所では73.7%
●薬局では57.2%
今後、下部組織である診療報酬調査専門組織「医療機関等における消費税負担に関する分科会」で、これらのデータをもとにより具体的な議論を行うことになる。
◆医療保険者の財政、23年度から24年度にかけて改善傾向に
なお、保険者調査(保険者の財政状況)を見ると、次のようなことがわかる(p344〜p350参照)。
●全体では、24年度の経常収支差は1396億円の黒字決算(23年度は1542億円の赤字決算、22年度は2381億円の赤字決算)
●個別保険者で見ると、24年度は、協会けんぽは3096億円の黒字、健保組合は2976億円の赤字、市町村国保は1327億円の黒字、後期高齢者医療は371億円の黒字
●24年度、23年度の変化を見ると、概ね財政状況は改善傾向にある