[自殺対策] 地域自殺対策緊急強化基金・緊急強化事業、平成25年度検証・評価報告書(案)示される
[自殺対策検証評価会議(第3回)―内閣府(H25.10.24)]
精神科医療行政ニュース - 2013年 11月 01日
内閣府は10月24日に開催した、自殺対策検証評価会議において、地域自殺対策緊急強化基金・緊急強化事業の平成25年度検証・評価報告書(案)を提示しました。
この地域自殺対策緊急強化基金は、自殺に対して都道府県における相談体制整備および人材養成等を緊急に実施するため、平成21年に創設されたものです。地域の実情を踏まえて自主的に取り組む地方公共団体の対策や、民間団体の活動等を支援することにより、「地域における自殺対策力」を強化することを目的としています。
緊急強化事業の内容については、国が提示した「電話相談支援事業」「対面型相談支援事業」「人材養成事業」「普及啓発事業」「強化モデル事業」の5つのメニューの中から、各都道府県が地域の実情を踏まえて選択し実施しているものです。
事業は、平成21年の創設から3年が経過した後に、地域自殺対策緊急強化基金・検証チームが設けられ、報告書をまとめるに至っていますが、平成23年度第3次補正予算および平成24年度第1次補正予算の積み増しが行われ、平成25年度まで延長し、自殺対策への支援体制の拡充が図られてきました。
平成25年度検証・評価報告書(案)は、大きく(1)地域自殺対策緊急強化基金及び地域自殺対策緊急強化事業の概要(2)実施状況(3)基金および緊急強化事業の定量分析(4)地方公共団体へのヒアリング調査(5)まとめと緊急強化事業の方向性、の5部構成となっています。
緊急強化事業の5つのメニューについて、それぞれ見てみます。
● 対面型相談支援事業
都道府県の93.6%、市町村の33.1%が実施しています。相談の種類別による相談者数割合は、最も多いのが「心の健康づくり」の22.7%、次が「精神疾患の相談」の15.0%です。相談者数に関する人口規模別の市町村区分の割合から、同事業の効果は、「人口5万人以下の市町村が担っている割合が大きいことが伺える」と報告されています。
● 電話相談支援事業
都道府県の95.7%、市町村の8.1%が実施しています。市町村の実施率は都道府県と大きく乖離している事態について、「同事業の性質上、人口規模が小さく、職員数が少ない市町村では、運用が困難なためと考えられる」と分析しています。
相談の種類別による相談者数割合は、対面型と同様に、「精神疾患の相談」「心の健康づくり」が多い一方で、対面型では割合の低かった「自殺に関する電話相談」が30.3%と最も高い割合を占めていました。また、相談にあたっては、ほとんどが電話であるものの、メールでの相談も多いことが目立ちます。
● 人材育成事業
都道府県の100%、市町村の52.4%が実施しています。平成24年度は、緊急強化事業の各種の研修を受けた者は、全体で延べ約92万人にのぼります。養成対象の割合は、一般市民が16.7%、民生委員・自治会役員等リーダー的役割を持つ方が15.0%、福祉職員10.7%、保健師9.1%と続きます。また、同事業においても、「人口5万人以下の市町村において効果的取組であることが伺える」としています。
● 普及啓発事業
都道府県の100%、市町村の67.7%が実施しています。他の事業に比べて実施割合は低下傾向にあるものの、緊急強化事業総数8537事業のうち、同事業は3522事業(41.3%)と大きな割合を占めています。イベント・シンポジウム等の事業内容に参加した人数(延人数)をみて見ると、「市民のメンタルヘルスの向上に関する内容」が27.4%、「自殺に関する理解を深める内容」が16.6%、「職場・メンタルヘルスに関する内容」が13.9%で、割合が高くなっています。また、「精神疾患に関する理解を深める内容」も8.2%でした。
● 強化モデル事業
都道府県の100%、市町村の16.8%が実施しています。事業種別割合では、「連携体制の構築」が22.4%と高くなっています。事業内容別割合では、「自殺に関する理解を深めるための内容」が20.4%、「市民のメンタルヘルスの向上に関する内容」が12.7%、「自殺未遂者への支援に関する内容」が8.9%などとなっています。同事業は、他の事業に比べて、より地域の実情を踏まえて、独自の事業を考案する必要があることから、人口規模が大きく、職員数が多い自治体において選択しやすい事業と考えられる、としています。
このほか報告書(案)では、『緊急強化事業の実施状況と自殺死亡率の変化』や、『基金強化事業の定量分析』、『地方公共団体へのヒアリング調査』などがまとめられています。
緊急強化事業に関してヒアリング等を含めた多角的な検証を行った結果、基金以外の財源により実施した事業があったと回答した団体もあるものの、多くの市町村では基金が自殺対策の唯一の財源となっていることが報告されています。そのため、地域の底上げ的な意味での支援が必要であること、実効性のある継続的な自殺対策を実施するには、仮に都道府県に負担割合が生じることになったとしても、単年度ではなく継続的な財源の担保が必要との見解を見せています。