[診療報酬] 26年度改定に向け、通常部分の基本方針論議を医療保険部会開始

[社会保障審議会 医療保険部会(第69回 10/23)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 10月 23日

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 厚生労働省は10月23日に、社会保障審議会の医療保険部会を開催した。
 この日は、平成26年度改定の通常部分について検討を開始したほか、産科医療補償制度の見直し、国保・後期高齢者医療制度の保険料軽減策などについて議論を行った。
 
 
◆26年度改定の基本方針策定に向けた論議スタート、まずは自由討議
 
 26年度の診療報酬改定は、次の3要素に分けることができる。
(1)社会保障・税一体改革関連部分
(2)通常改定部分
(3)消費税率8%対応部分
 
 このうち(1)については、社会保障審議会がすでに基本的な考え方をまとめている(p93〜p96参照)。また(3)の消費税については、安倍首相が税率引上げを決断し、こちらは下部組織で方針を固めつつある。
 したがって、社会保障審議会の医療部会と医療保険部会では、今後(2)の通常改定部分について基本方針を詰める作業に入る。
 ちなみに通常部分とは、一体改革の有無にかかわらず存在する医療現場の課題を解決するものである。たとえば、がん医療の推進、リハビリの充実、認知症対策、生活習慣病対策、効率化の推進などがあげられる。
 
 厚労省当局からは、26年度改定に向けた大まかなスケジュールと、過去の改定における基本方針等を整理した資料が提示され、本日は、これらを踏まえたフリートークとなった(p87〜p92参照)(p158〜p193参照)。
 
 菊池委員(日看協副会長)は、『医療従事者の負担軽減』と『医療と介護の連携』を重視すべきと提言。
 とくに前者の『医療従事者の負担軽減』について、離職防止・人材確保を確実に進めるために、たとえば「看護師の夜勤制限」などを十分に議論するよう求めている。
 また、充実すべき分野としては「がん医療」「周産期・小児分野」「精神科入院医療の機能分化」の3点を掲げている。
 
 一方、鈴木委員(日医常任理事)は、「これまでの改定は急性期の、とくに大病院中心の内容であった。次回は、超高齢社会に対応するために『地域密着医療の充実』と『かかりつけ医を中心とした地域包括ケアシステムの構築』を重点テーマとするべき」と提案。
 さらに「がん医療」「認知症対策」「リハビリの充実」「栄養管理の充実(とくに在宅医療における栄養管理)」の4点に焦点を合わせて、充実を図っていくべきとも提言している。
 
 また、武久委員(日本慢性期医療協会会長)は、「超高齢社会においては、リハビリや慢性期医療を含めた長期間のフォローが必要になる。急性期医療だけでは対応できない」ことを強調。
 そのうえで、「高齢者向けの救急医療」の重要性に焦点を合わせるべきと提案。具体的には「すべての高齢者救急患者を救急病院で対応したのではパンクしてしまう。トリアージを充実させ、『慢性期患者の急性増悪対応』と、いわゆる『本来の救急医療』のすみわけを図るべき」とコメントしている。
 
 また藤原参考人(日本経済団体連合会経済政策本部長、森委員の代理として出席)は、「重点課題の中に、『病床機能の分化と連携』を加味し、これまでの『勤務医等の負担軽減』『医療と介護の役割分担と連携強化等』と一体化して検討すべき」と主張。
 さらに、充実すべき分野に「イノベーションの評価」を、効率化の推進に「医療のICT化による医療提供体制の効率化」「遠隔診療の推進」を追加するよう求めている。
 
 さらに小林委員(全国健康保険協会理事長)は、「協会けんぽをはじめとする保険者の財政は厳しい」とプラス改定を暗に牽制したうえで、次のような効率化を推進するよう求めている。
●後発品の使用促進や、長期収載品の価格引下げ
●平均在院日数の短縮
●7対1一般病棟のあり方の見直し
●主治医機能の強化
●ゆるやかなフリーアクセスの制限
 
 
◆国保、後期高齢者医療制度の低所得者について保険料を軽減
 
 この日は、国保と後期高齢者医療制度における保険料負担軽減も議題となった。
 社会保障・税一体改革では、社会保障の効率化・重点化を進めて「持続可能な社会保障制度」構築を目指すとともに、消費税収の投入による「社会保障の充実」も行うとしている(p99〜p101参照)。
 この充実策の1つに「国保、後期高齢者医療制度における低所得者の保険料負担軽減」が盛込まれているのだ(p56〜p59参照)。
 
 厚労省当局からは、国保について(1)低所得者保険料軽減の拡大(2)保険者支援制度の拡充―の2点が示されている(p60〜p66参照)。
 (1)は、現行制度で5割軽減・2割軽減となる世帯を拡大(400万人程度)するとしている。
 また(2)は、全被保険者について保険料水準を低く抑えるものだ。
 
 一方、後期高齢者医療制度についても、上記(1)と同様の見直しを行うとしている(p68〜p69参照)。
 
 ところで、後期高齢者医療制度においては、現在、法定の保険料負担軽減措置のほかに特別の負担軽減措置(たとえば、年金収入80万円以下の場合には、法定の7割軽減を9割軽減に手厚くしている)が設けられている(p73〜p76参照)。
 しかし、この特例軽減措置は「手厚すぎ、他の制度とのバランスを欠いている」との指摘もあり、段階的に見直していく方針が固められている(p77参照)。
 
 
 こうした見直しについて委員からは、概ね「妥当」とする意見が数多く出されている。
 なお、白川委員(健保連専務理事)は「厚労省当局の試算によると、20年度から24年度にかけて、高齢者の負担は5%程度の上昇にとどまるのに対し、現役世代は27%の負担増になっている(p72参照)。これは現役世代にとって厳しすぎる内容だ。高齢者医療制度の見直し論議を早急に行うべき」とコメントしている。
 
 国保等の保険料軽減には、相当の国費が必要になるため、「○%軽減する」などを社会保障審議会だけで決めることはできない。これらは、年末の予算編成過程で、与党の意向等も踏まえて決着することになる。
 遠藤部会長(学習院大学経済学部長)は、この状況を説明したうえで、厚労省当局に対し「今回の議論を踏まえた対応をとるよう努力してほしい。状況や結果については、改めて当部会に報告してほしい」と指示している。
 
 
 
 なお、この日は、産科医療補償制度における「剰余金の取扱い」などについて、改正案が日本医療機能評価機構から報告された。そこでは、毎年100億円以上の剰余金が返還されることになり、これらを将来の掛金負担に充当する案などが紹介され、委員からは概ねの賛同を得ている(p4〜p53参照)(p97〜p98参照)。

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