[診療報酬] 機能強化型在支診、看取り等の実績を評価する仕組みに見直しへ

[中央社会保険医療協議会 総会(第252回 10/23)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 10月 23日

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 厚生労働省は10月23日に、中医協総会を開催した。
 この日のメインテーマは在宅医療である。
 
 
◆機能強化型の在支診・病、厚労省は看取り等の実績を重視したい意向
 
 在宅医療については、これまでに3回、集中討議を行っている。4回目となった今回は、次の7分野について、厚労省当局から詳細な論点が提示された。
(1)機能強化型在宅療養支援診療所・病院の要件
(2)訪問看護
(3)在宅医療における注射薬や衛生材料等の提供
(4)在宅医療における薬剤師の役割
(5)在宅歯科医療
(6)在宅医療における患者紹介等の事例
(7)在宅医療を専門に行う保険医療機関
 
 
 (1)では、機能強化型在支診・病(機能強化型)の要件とともに、「機能強化型ではない在支診・病」(一般型)が積極的に在宅医療を実施した場合の評価を検討している(p32〜p53参照)。
 
 24年度改定では、機能強化型として「在宅医療を担当する常勤医師を3名以上配置」「過去1年間の緊急往診実績が5件以上」「過去1年間の在宅における看取り実績が2件以上」という要件を満たす在支診・病に対して高い報酬を設定し、在宅医療の推進を目指した。
 ただし、小規模な診療所ではこの要件をクリアすることは難しいと考えられたため、「他の連携保険医療機関(診療所または200床未満の病院)との合計でも可」とする類型(連携型)が認められた。
 
 しかし、厚労省の調査によれば、機能強化型であるにもかかわらず緊急往診や看取りを行っていないところがある(もちろん短期間調査なので断定はできない)。その一方で、一般型だが緊急往診・看取りを機能強化型以上に積極的に行っているところもある(p38〜p42参照)。
 このため、厚労省当局は、次のような提案を行っているのだ(p53参照)。
●連携型の機能強化型について、「それぞれの医療機関が実績要件を満たすことを必要とする」としてはどうか
●常勤医師が3名配置されていなくても、十分な実績を有する在支診・病を一定程度評価してはどうか
 厚労省当局の「看取り等の在宅医療実績を重視した評価体系を設けたい」という考え方が伺える。
 
 この前者の提案については、診療側委員が猛反発。
 鈴木委員(日医常任理事)は、「連携型は在支診・病の裾野を広げるために24年度改定で導入した。その趣旨を見失ってハードルを上げることは好ましくない。個別医療機関で要件を満たすのであれば連携する必要がないではないか」と指摘。
 また、西澤委員(全日病会長)も、「個人開業医では24時間対応は難しかろうということで連携型を創設した。当初は『要件が緩すぎるのではないか』と私自身も思ったが、議論するうちに在宅医療の推進には必要なことだと確認した経緯がある。連携型には定期的なカンファランス等も義務付けられており、一般型とまったく同じことをしているわけではない。連携医療機関全体を1つの在支診・病と見るべきである」とし、厚労省の提案を牽制している。
 
 一方、支払側の委員は「現行の『全体で要件を満たせばよい』という仕組みは護送船団方式であり好ましくない」と指摘する。
 とくに白川委員(健保連専務理事)は、「機能強化型でありながら、看取り等の実績がゼロで、高い報酬を算定しているところがある。その一方で機能強化型でないにもかかわらず、在宅医療を熱心に行うが、低い報酬に甘んじているところもある。これは矛盾であろう。厚労省の提案は、この矛盾を解消しようというもので理解できる」と反論している。
 
 この点について厚労省保険局の宇都宮医療課長は、「連携型は制度導入のインセンティブとして、『全体で要件を満たせばよい』という形になっている。しかし、機能強化型には、患者は高い費用(一部負担)を支払っており、そこを十分に理解していただくためにも、相応の実績などを求めるという視点も必要なのではないか」と説明している。
 
 
 厚労省保険局医療課の担当者は会合終了後に、「機能強化型の看板を掲げながら、連携型として他医療機関に『おんぶにだっこ』で、看取り等を行っていないところは好ましくない。何らかの要件は課さなければならないのではないだろうか」と説明している。
 つまり、連携型については、現行の「在宅看取り実績2件以上、緊急往診実績5件以上」よりも緩やかな要件が課され、すべての医療機関がこれを満たすよう求められることになりそうだ。
 したがって、厚労省提案によれば、看取り等の実績を満たさない場合には、機能強化型の高い報酬は算定できなくなる。
 
 一方で、後者は「体制要件(常勤の在宅担当医師3名以上)を満たさないが、在宅医療の実績が高い一般型」を高く評価しようという考え方だ。
 
 これらを総合すると、厚労省は在支診・病を大きく次のように整理したい考えのようだ。
(i)24時間対応をとり、看取り等の実績が十分な医療機関(機能強化型在支診・病)
(ii)24時間対応をとり、看取り等の実績が一定程度ある医療機関(在支診・病)
(iii)24時間対応をとり、看取り等の実績がない、あるいは不十分な医療機関(在支診・病)
(iv)一般の診療所
 
 
 (1)の機能強化型の要件等については、次のような論点も示されている(p53参照)。
●機能強化の実績要件を緊急往診○件/年、看取り○件/年とすることについてどのように考えるか
●在支診と連携して緊急時の受入を行うこととなっている在支診・病以外の医療機関であって、緊急時に必ず患者の受入を行うことをあらかじめ患者に文書で示している医療機関における、緊急時の受入の評価をどのように考えるか
●このような医療機関が在支診の医師と共同で訪問診療や往診を行う場合の評価についてどのように考えるか
 
 
◆24時間対応や看取り実績ある「高機能」な訪問看護ステーションを評価
 
 (2)の訪問看護は、在宅医療と在宅介護の「架け橋」として注目される。とくに、地域包括ケアシステムにおいては、中核的な位置を占めるものと期待されている。
 しかし現状をみると、訪問看護ステーション数は増加傾向にあるものの、小規模な事業所では「24時間対応が進んでいない」「重症患者対応が十分ではない」などの課題も指摘されており、患者のニーズに十分には応えられていないようだ(p56〜p66参照)。
 そのため厚労省では、かねてより「訪問看護ステーションの大規模化」に向けた取組みを進めているが、その効果は不十分といわざるを得ない。
 
 そこで、26年度改定に向けては、まず「機能が高い訪問看護ステーション」の評価を充実させてはどうかと厚労省当局は考えた。
 この点、厚労省保険局医療課の担当者は「機能の高いステーションは、大規模なところが多い。大規模化を進めるためにまず機能の高さを評価してはどうかと考えている」と、今回の趣旨を説明している。
 
 具体的には、『機能が高い』の定義としては、「24時間体制の有無」「看取り数」「重症度の高い患者の受入れ」「介護支援専門員の配置の有無」等が要件とされる(p87参照)。
 
 さらに、一定の規模も、評価の際の指標となる見込みだ(p87参照)。これは、要件というよりも報酬設定が規模で区分されるようなイメージであろうか。
 規模については、「常勤○名以上」「常勤換算○名以上」などさまざまな手法があり、何名とするのか、どの手法を用いるのかなど具体的内容については今後の検討を待たなければいけない。
 ちなみに、『常勤換算○名以上』とした場合のメリット・デメリットについて厚労省医療課の担当者は、「数多くのナースを配置しなければならず、かえって人件費がかさむ可能性もある」とデメリットを指摘したうえで、「潜在ナースを活用できる効果もある」とのメリットもあることを説明している。
 
 また、要件に盛込まれるかどうかは微妙だが、「地域の他のステーション、地域住民、病院、介護支援専門員に対する情報提供や相談機能を有している」ことも重視される見込みだ(p87参照)。
 この点、訪問看護師として働きながら、介護支援専門員として活躍している方も少なくない。そこで厚労省当局では、「医療と介護の双方が必要な高齢者に、居宅療養管理指導と訪問看護の2枚看板で対応していただく」という姿を提案しているのだ(p67〜p71参照)。
 一部委員からは疑問も出されており、具体的な姿については今後の議論を待つ必要があろう。
 
 
◆在宅専門の医療機関を認めるべきか、健保法の趣旨に照らして検討
 
 厚労省当局はこのほかにも、在宅医療の推進に向けて次のような論点を提示している。
 ちなみに、この日は議論が熱を帯び審議時間が大幅に延長となった。そのため(4)〜(7)については、厚労省の説明のみが行われ、委員間の議論は次回以降に持越しとなっている。
 
(3)在宅医療における注射薬や衛生材料等の提供(p88〜p121参照)
●在宅医療で投与できる注射薬に、電解質製剤等を加える(保険薬局で交付できる注射薬も同様)
●無菌調剤室の共同利用で、【無菌製剤処理加算】の算定を認める
●介護保険の訪問看護を受けている患者に対し、【在宅患者訪問点滴注射管理指導料】の算定を認める
●在宅医療に必要な衛生材料について、訪問看護ステーションが、訪問看護実施時に計画書とともに必要な量を医師に報告し、また、報告書とともに使用実績を報告することとし、患者が必要とする衛生材料について主治医が把握できるようにする
●処方せんに基づき保険薬局で交付できる特定保険医療材料に、必要な在宅用の特定保険医療材料(皮膚欠損用創傷被覆材など)を追加する
 
(4)在宅医療における薬剤師の役割(p122〜p139参照)
●保険医療機関において、処方せんの交付にあわせて患者に保険薬局の地図を配る際に、在宅患者訪問薬剤管理指導を行う保険薬局の情報を提供すること等については、特定の保険薬局への誘導の禁止に反しないことを明らかにする
●24時間の対応(夜間・休日でも対応できる体制)について、地域の薬局との連携を図りつつ単独の薬局による対応を原則としてはどうか
●医師(病院・診療所)以外に、訪問看護師(訪問看護ステーション)やケアマネジャーへの情報提供についても規定する
 
(5)在宅歯科医療(p140〜p157参照)
●在宅歯科訪問診療を推進するために、在宅療養支援歯科診療所をどう評価していくか
●介護施設等で複数の患者に行われる歯科訪問診療を適切に提供するために、【歯科訪問診療2】の評価などをどう考えるか
●歯科訪問診療の診療時間が20分未満であった場合に、基本診療料を算定する取扱いをどう考えるか
●歯科訪問診療が必要な患者が、適切に診療を受けられるよう、医科医療機関等と歯科医療機関との連携をどう促すか
 
(6)在宅医療における患者紹介等の事例(p158〜p202参照)
●【在宅時医学総合管理料】【特定施設入居時等医学総合管理料】について、訪問診療料と同様に、同一建物かどうかに応じた評価体系とする
●現在議論している主治医機能のある医療機関の評価との連動を検討する
●【在宅患者訪問診療料】について、過剰診療等を防ぐために、患者等への説明と同意を含め、一定の診療内容による整理を行う
●療養担当規則の改正等により、保険医療機関が、患者の紹介を行う者に対して、患者の紹介を受ける対償として、紹介料等の経済上の利益を提供することを禁止する
 
(7)在宅医療を専門に行う保険医療機関(p203〜p205参照)
●在宅専門医療機関を認めるべきか否かを検討する
●在宅専門医療機関が認められないとして、外来応需体制(たとえば、「在宅医療を行うことの被保険者への周知」「急変時に患者から相談を受ける連絡先の確保」「患者が外来受診できる連携医療機関の確保」「訪問診療を行う地域範囲の限定」など)を検討する
 
 
◆新たな医療機器と臨床検査の保険適用を承認
 
 中医協ではこの日、新たに保険収載される医療機器と臨床検査を承認している。
 
 新たに保険収載される医療機器のうち、C1(新機能)に区分されたものは次のとおり(p3参照)(p4〜p13参照)。
●トリプルチャンバ型の植込み型パルスジェネレータで、除脈が検出された場合にペースメーカパルスを供給して心拍数を正常まで上昇させる機能をもつ【エヴィア HF-T Pro】(バイオトロニックジャパン社)
●ヘパリン使用人工血管である【ゴアプロパテンバスキュラーグラフト】(日本ゴア社)
●頭蓋骨開頭術の閉頭時における遊離骨弁の固定に用いる頭蓋骨固定用クランプである【クラニオフィックスアブソーバル】(ビー・ブラウンエースクラップ社)
 
 また、新規医療機器のうち、C2(新機能・新技術)に区分されたのは、ナカシマメディカル社の【上肢カッティングガイド】。これは、上肢の矯正骨切り術に使用される骨切りガイド・ドリルガイドである(p3参照)(p14〜p16参照)。
 
 
 一方、新たに保険収載される臨床検査は、次の2つ(p25〜p29参照)。
(1)視神経脊髄炎の診断の補助に用いるための、血清中「抗アクアポリン4抗体」の酵素免疫測定法(ELISA法)での測定(1000点)
(2)重症筋無力症の診断の補助に用いるための、血清中「抗筋特異的チロシンキナーゼ抗体」の放射性免疫測定法(RIA法)での測定(1000点)

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