[診療報酬] 26年度改定、薬価引下分を「財源」とするのは不適切  財政審

[財政制度等審議会 財政制度分科会(10/21)《財務省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 10月 22日

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 財務省は10月21日に、財政制度等審議会の「財政制度分科会」を開催した。
 この日は、平成26年度の社会保障関係予算、なかでも診療報酬改定について議論を行った。
 
 26年度予算編成にあたって、政府は「社会保障支出についても聖域とせず、見直しに取組む」ことや、「自然増を含め、年金・医療等に係る経費について、合理化・効率化に最大限取組み、その結果を26年度予算に反映させる」との方針を固めている(p3参照)。
 医療については、高齢化や技術の高度化に伴う費用増(自然増)に加えて、26年度には診療報酬改定が予定されている。プラス改定となれば医療費が増加し、それを賄うための国費(歳出)も増加することになることから、今後、「プラス改定をする経済・財政状況にはない」とする財務省サイドと、「プラス改定すべき」と主張する医療関係団体との綱引きが行われることになる。
 
 財務省当局からは、経済動向とは無関係に医療費が増加している状況が改めて強調されるとともに(p6〜p11参照)、次のような資料が提示され、「診療報酬プラス改定は認められない」という考え方が強く示されている。
(1)診療報酬を1%引上げた場合、25年度(42兆円)に比べて医療費は4200億円増加し、それを賄うには、税金を約1600億円、保険料を約2000億円、患者負担を約500億円増加させる必要があり、国民負担が重くなる(p14参照)
(2)26年4月から消費税率を8%に引上げることに伴い、診療報酬について消費税対応のプラス改定(医療費増)を行う必要がある(平成元年の消費税導入時には本体0.12%、薬価等0.72%、9年の5%引上げ時には本体0.32%、薬価等0.45%)(p15参照)
(3)医療費は、診療報酬プラス改定をせずとも、人口の高齢化等で概ね3%程度伸びており、診療報酬改定でさらなる上積みをする必要があるのか(p16〜p17参照)
(4)診療報酬改定の有無にかかわらず、医療従事者の収入は増加している(人件費の伸びが、医療従事者数の伸びを上回っており、1人あたり収入増を意味している)(p18参照)
(5)医療費は、自然増によって賃金・物価よりも高い水準で伸びており、さらなる上積みをする必要があるのか(p19参照)
 
 さらに、財務省当局は「医療提供体制改革(病床機能分化や地域包括ケアシステム構築など)(p21参照)を進めるためには、全国一律の診療報酬ではなく、地域ごとに柔軟に対応できる別の財政支援方策が必要である」と強調し(社会保障制度改革国民会議でも同様の指摘)、診療報酬プラス改定を牽制している。
 病床機能分化の方向性は、我が国全体では「急性期病床を減らし、亜急性期病床を増やす」ものといえる。ただし、都道府県別に見るとベッド整備状況は異なっており、たとえば群馬県では我が国全体の方針と合致するが、高知県では「急性期も亜急性期も減らす」方向に、埼玉県や宮城県では「急性期も亜急性期も増やす」方向を取る必要があるといった具合に、「地域ごとに進むべき方向が異なっている」状況にある(p30参照)。
 この点について財務省当局は、18年度改定で導入した7対1一般病棟の予想を超えた届出を引合いに、「診療報酬の配分による対応では、行き過ぎた医療提供体制の変化をもたらす可能性がある」と指摘(p25〜p27参照)。
 そのうえで、地域の実情に応じた医療提供体制を構築するために「診療報酬以外の手段」を用いた財政支援を行うべきと提案している(p28〜p31参照)。
 
 このほか、薬価については次のような指摘を暗に行っている(p32〜p39参照)。
●薬価改正(引下げ)を「財源の捻出」と見なし、診療報酬本体の増額等に使うことは不適当(p33〜p34参照)
●新薬創出・適応外薬解消等促進加算を、適応外薬の開発要請すらされないメーカーの新薬や、有用性の低い薬に適用することは不適当(p36参照)
●特許切れ新薬は速やかに後発品に置換えられるべきであり、そのために「長期収載品の薬価の大幅引下げ」を行う(後発品のある先発品がすべて後発品に置換えられた場合には、医療費ベースで1兆5300億円、国費ベースで4000億円の縮減が見込まれると試算)(p37参照)
●フランス、ドイツのように参照価格制を導入すべき(p39参照)

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