[医療提供体制] 地域医療ビジョンに向け知事が診療報酬に意見出せる仕組を

[社会保障審議会 医療部会(第34回 10/11)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 10月 11日

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 厚生労働省は10月11日に、社会保障審議会の医療部会を開催した。
 この日は、「地域医療ビジョンを実現するために必要な措置」「新たな財政支援制度の創設」などを検討したほか、平成26年度診療報酬の基本方針策定に向けた議論を開始した。
 
 地域医療ビジョンとは、病床機能報告制度に基づいて報告された県内の医療提供体制の状況に、将来の患者動向(人口動態や高齢化の状況、医療費動向など)を加味して都道府県が作成する「将来の医療提供体制像」である。
 厚労省は、地域医療ビジョンを27年度から作成し、30年度からの新たな医療計画に反映させたい考えだ(p7参照)。
 
 
◆病床機能報告制度の区分に基づいて基準病床数定めるべきか?
 
 この日は、(1)必要な病床の適切な区分の設定、病床機能報告制度と地域医療ビジョンの関係(2)都道府県の役割強化、新たな財政支援制度―の2項目について、厚労省当局から論点が示された。
 (1)の「必要な病床の適切な区分の設定」に関しては、2つの考え方がある。
 1つ目は「医療法上の一般・療養病床について、現行の基準病床数に加えて、病床機能報告制度の医療機能ごとに区分し、各機能の基準病床を定める」という考え方だ(案1)(p8〜p9参照)。「高度急性期病床は○千床、回復期病床は○万床・・・」という病床区分を細分化するイメージである。
 2つ目は「現行の医療法上の病床区分は変えず、病床機能報告制度の医療機能について、今後現状を把握し、その結果を分析したうえで、定量的な基準を定めて、各機能の必要な病床へと誘導していく」というもの(案2)(p8〜p9参照)。
 
 この点、高智委員(健保連理事)は「病床機能報告制度について定量基準を定めた後には、案1と案2は事実上同じものになるのではないか」と指摘。
 この点、厚労省当局は「当初は定性的な基準でスタートし、結果をみて、定量基準を検討することになる。案2では『指定拒否や勧告』などの仕組みは導入しないことになる」と説明。ただし、案2でも診療報酬などと組み合わせた誘導等は行われることになる。
 
 また相澤委員(日病副会長)や西澤委員(全日病会長)は、「行政が権力で病床の区分や必要量の整備をしようとするものだ。案2の『誘導』も強制的な移行措置であろう。自主的な移行等を目指すべき」と強調している。
 このほかにも、案2の『誘導』という文言を、「医療機関の自主的な移行を促す」などに変更すべきとの意見が複数出されている。
 
 なお、案1では病床数を厳格にコントロールできるように思えるが、たとえば「A医療圏では全体として病床過剰であり、高度急性期は過剰、長期療養は不足」という場合、現行の病床規制がしっかりと機能しなければ、「不足している長期療養では、新設・増床が認められる」こととなる可能性も否定できない。こういった点にも留意が必要だ。
 
 医療部会では、今後もこの論点について議論を詰めていく。
 
 
◆地域医療ビジョンに向け、知事が診療報酬の意見提出する仕組み検討
 
 (2)の都道府県の役割強化・財政支援については、(i)機能分化・連携のための圏域ごとの協議の場の設置(ii)地域医療ビジョン達成のための知事による診療報酬に関する意見提出(iii)医療機関に対する知事による医療機能の転換等の要請・指示」―などの内容が考えられている(p9〜p17参照)。
 
 このうち(ii)については、「地域医療ビジョンを実現していくうえで、診療報酬を活用して医療機能の分化・連携を推進できるよう、現行の『医療費適正化計画に係る都道府県の診療報酬への意見提出』(高齢者医療確保法第13条)のような仕組みの導入」を考えてはどうかと提案されている(p14参照)。
 ちなみに高齢者医療確保法第13条第1項では、医療費適正化計画達成のために都道府県が診療報酬に関する意見を述べられることを規定している。また同条第2項では、「都道府県から意見が出された場合には、それに配慮して診療報酬を定めるよう努めなければならない」旨が定められている。
 さらに、同法第14条第1項では「医療費適正化に向けて都道府県別の診療報酬を設定できる」旨の規定もある。
 医療費適正化計画の評価が終了していないため、こうした意見はまだ出されていないが、今回の提案もあわせ、診療報酬改定に大きな影響を与える可能性がある。
 
 また(iii)については、「知事が、地域医療ビジョンの達成に必要と認めるときは、公的医療機関に対して、『過剰となっている医療機能』から『不足している医療機能』への転換や、『回復期機能の充実等』を指示できる」という仕組みが提案された(p16〜p17参照)。
 
 
◆26年度改定(通常部分)の基本方針策定に向け、論議スタート
 
 ところで、26年度改定は、(1)一体改革関連部分(2)通常部分(3)消費税対応―の3要素に分けることができよう。
 これまでに医療部会では、(1)の一体改革関連部分の議論を進め、すでに基本的な方向は固まっている。
 今後は(2)の通常部分、つまり「一体改革の有無に関わらず解決しなければいけない医療の課題」を解決するための診療報酬改定に向けた方針を詰めていくことになる。
 ちなみに、厚労省保険局の宇都宮医療課長は、「一体改革関連部分と、(本日から議論される)通常部分をあわせて1本の基本方針としたい」旨を説明している。
 
 厚労省当局は、現時点では次のような大きな論点を提示するにとどめている(p20参照)。
(i)充実が求められる分野を適切に評価していく視点
(ii)患者から見て分かりやすく納得でき、安心・安全で生活の質にも配慮した医療を実現する視点
(iii)効率化の余地があると思われる領域を適正化する視点
(iv)勤務環境の改善、チーム医療の推進等
 これらの項目は、過去の診療報酬改定における「重点課題」「視点」にも盛込まれたもので、これまでの方針を継続する考え方が見てとれる(p18〜p20参照)。
 
 この点、高智委員は「日本の景気は持ち直しつつあるが依然厳しい。24年度医療費も、前年度に比べて増加しており、重点化・効率化を進めるべき」との厳しい意見を述べている。具体的には、病床機能分化(急性期の重点化や、退院患者の受け皿整備)、不適切な訪問診療の是正などをあげている。
 
 また、相澤委員は「超高齢社会の中で、在宅医療と入院医療の連携が不十分である。多職種チームが連携しあう仕組みが重要だろう。そうした点の評価・充実を検討すべき」と提案している。
 さらに相澤委員は、レセ等のデータ収集・分析をし、国民に還元(開示)することの重要性を強調。具体的には、「DPCデータをベースにした急性期医療の内容を国民に開示すべき」と提案している。

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