[診療報酬] 入院分科会が、7対1の特定除外廃止等を提言する最終取りまとめ

[診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会(平成25年度 第10回 10/10)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 10月 10日

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 厚生労働省は10月10日に、診療報酬調査専門組織の「入院医療等の調査・評価分科会」を開催した。
 この日は、厚労省当局から最終取りまとめ案(p4〜p36参照)(p37〜p176参照)が示され、これに基づいた議論を行った。若干の文言修正や調整が必要な部分はあるものの、最終取りまとめ案は概ね了承されており、近く中医協総会に報告される。
 
 
◆既報告の「中間取りまとめ」に、13対1特定除外見直し等の提言付記
 
 分科会は、今年度(平成25年度)に入ってから集中的に議論を重ね、8月初旬には「中間取りまとめ」を行った(8月21日の中医協総会に報告済み(p177〜p178参照))。
 これは、入院医療に関する24年度調査結果をベースに行われた議論を整理したもので、「7対1・10対1一般病棟入院基本料」や「亜急性期入院医療」などについて見直しの方向性を示している。
 分科会では、その後、25年度調査結果を受けた議論を続け、今般、厚労省が最終取りまとめ案提示に至った。
 
 最終取りまとめ案は、「中間とりまとめ」に、25年度調査結果とそれに基づく議論の内容を付加した格好となっている。以下のような構成だ。
(1)一般病棟入院基本料(7対1等)の見直し
(2)亜急性期入院医療の見直し
(3)医療提供体制が十分ではないものの、地域において自己完結する医療を提供している医療機関に配慮した評価の検討
(4)特殊疾患病棟や障害者施設等から療養病棟に転換した場合に対する経過措置
(5)診療報酬点数表の簡素化
(6)医療機関における褥瘡の発生等
(7)13対1・15対1における特定除外制度見直し
(8)経過措置7対1
(9)入院医療の適正化(金曜入院・月曜退院等が著しく多い病院の減算措置)
(10)外来機能分化(紹介・逆紹介率の低い大病院の減算措置)
このうち(1)〜(6)が24年度調査に該当し、すでに中間取りまとめとして中医協総会に報告されており、(7)〜(10)が今回付加された25年度調査分に該当する。
 今回付加された(7)〜(10)について少し詳しく見てみよう。
 
 
◆13対1・15対1の特定除外廃止、26年度以降も継続へ
 
 (7)の13対1・15対1の特定除外見直しをおさらいすると、「90日を超えて入院する特定除外患者については、(i)包括点数である療養病棟入院基本料を算定する(ii)出来高点数である一般病棟入院基本料を算定するが、特定除外患者も平均在院日数算定の計算に加える―のいずれかを病院側が選択する」というものだ。
 厚労省保険局医療課の調査結果からは、「13対1では65.2%が、15対1では68.2%が、(ii)の出来高点数を算定している(p151参照)」「退棟先は、13対1では70.5%、15対1では57.0%が死亡退院となり、残りの8〜9割が一般病床以外の自宅、療養病床、介護施設である(p155参照)」ことなどが明らかになっている。
 この結果から最終取りまとめ案は、『大きな問題はなく、特定除外制度の廃止を継続することが妥当』との結論を導いている(p26〜p27参照)。
 
 しかし、石川委員(千葉県勤労者医療協会理事長)や神野委員(社会医療法人財団董仙会理事長)は、「死亡退院が7割あるなど、無理な退院等が多いように思える。13対1等から自宅や療養病棟への退棟が患者にとって好ましいかどうかは疑問だ」と指摘。
 これに対し、厚労省保険局医療課の担当者は「一般病棟で、ここまで看取りやターミナルケアを行うことが求められているのだろうか」との疑問を呈した。
 
 さらに神野委員は、「死亡退院がターミナルケアであるのか、それとも状態が悪化し、手を尽くしたにもかかわらず亡くなられたのかは、ここから分からない。患者の状態も勘案した調査を継続すべきではないか」と指摘。
 この点については、厚労省保険局の宇都宮医療課長が「日医と四病協の調査【特定除外に該当する入院患者実態調査】(前回会合で報告されている)では、『入院患者が急性増悪した場合、13対1・15対1病院では、自院での対応は2割強にとどまっている。すると、7割の特定除外患者を死亡退院するまで自院に入院させているということは、比較的状態が安定していた(急性増悪していない)ことを意味していると考えられるのではないか』と反論している。
 
 また石川委員は、最終取りまとめ案に記載された『大きな問題はなく』という点に反発し、文言の修正を求めている。
 この点、佐柳委員(国立病院機構関門医療センター病院長)から「13対1・15対1の特定除外廃止は、病床機能分化に有効である」旨の表現としてはどうかとの提案がなされている。
 
 
◆経過措置7対1、予定どおり26年3月31日で廃止へ
 
 (8)の経過措置7対1とは、24年度改定で設定された新たな7対1の施設基準(平均在院日数18日以内や、看護必要度の高い入院患者割合15%以上など)を満たせない7対1病院について、「10対1の施設基準を満たすことを条件に、26年3月31日まで7対1の点数を算定できる」とする取扱いだ。
 25年9月1日時点で、経過措置7対1は113病院ある(24年4月1日時点では197病院)(p157参照)。
 経過措置を届出ている理由としては、「専門医が少ない」「十分な設備がない」などのために、看護必要度の高い患者(いわば重症な患者)割合15%以上が満たせないというものが多い(p158〜p159参照)。
 ただし、経過措置7対1病院の多く(厚労省医療課調査では62.5%)が「26年3月31日までに新7対1の施設基準を満たす予定」と考えている(p160参照)。
 
 こうしたことから、最終取りまとめ案では「経過措置7対1は、26年3月31日で終了することが妥当」と結論づけている(p28参照)。この結論に反論は出ていない。
 
 
 (9)の入院医療の適正化としては、次の2つの措置が24年度改定で盛込まれた。
(i)金曜入院・月曜退院の割合合計が、連続して6ヵ月以上、4割を超える場合には、土日の入院基本料を8%減額する
(ii)午前中退院患者の割合が、連続して6ヵ月以上、9割を超える場合には、「30日以上入院している患者で、退院日に手術・高度な処置を行わない」ときに、退院日の入院基本料を8%減額する
(i)では「土日の病床稼働率を上げる」こと、(ii)では「ベッドを2回転させ、午前中入院と午後入院で、入院基本料をそれぞれ算定する」ことを防ぐという目的がある。
 
 厚労省医療課の調査では、医療機関の動向に大きな変化は見られていない。最終取りまとめ案は「今後も継続することが妥当」と述べるにとどめている(p29〜p30参照)(p162〜p167参照)。
 
 この点、保険者を代表する高智委員(健保連理事)は、「要件の厳格化(連続6ヵ月要件の短縮など)を検討すべき」と主張。一方、医療提供者を代表する安藤委員(西福岡病院理事長)は「現状を維持すべき」と反対している。
 要件の厳格化や、減算の拡大(8%よりも高い減算幅とするなど)等は中医協総会で検討することとなろう。
 
 
◆紹介率・逆紹介率低い病院の減額措置、「500床以上の全病院」に拡大
 
 (10)の外来機能分化について、厚労省当局は「診療所・中小病院が一般外来を担い、大病院は専門・紹介外来を担う」という大きな方針を示している(p169参照)。
 ここには効率的な医療提供(高機能の大病院が軽症の外来患者を数多く診ることは非効率)や、大病院の勤務医負担軽減などの狙いがある。
 古くは、平成8年度の健保法改正で盛込まれた「200床以上の病院では、紹介状のない初診患者から特別な負担を徴収できる(選定療養)」という仕組みもこの一環だ。
 
 24年度の診療報酬改定では、「紹介率40%以上・逆紹介率30%以上」を満たせない特定機能病院・一般病床500床以上の地域医療支援病院について初診料・外来診療料を減額するという仕組みが導入された。
 この減額措置の対象となる病院は現時点で存在しない(p170参照)。
 
 最終取りまとめ案では、この仕組みを「許可病床数500床以上のすべての病院」に拡大することを提案している(p31〜p32参照)。
 この点、厚労省保険局の調査からは、「一般病院の20%程度」について減額措置の対象となる可能性があることが示唆されている(p198参照)(p204参照)。
 
 あわせて最終取りまとめ案は、「逆紹介の取組みをとくに推進していく」ことの重要性を強調している。
 これは、紹介率(診療所等から大病院への紹介)を上げるためには、逆紹介(大病院から診療所等への紹介)を強化し、診療所等の安定的な経営(患者の確保)を担保することが重要なためだ。
 逆紹介については、500床以上の病院で意識が高く(p201〜p202参照)、また「大病院自身が積極的に逆紹介を行うことしか、逆紹介率を高める有効な方法はない(p206参照)」ということが厚労省医療課の調査から見えてきている。
 
 なお、上記の選定療養(200床以上病院における紹介状なし患者の特別負担)を行っている病院では、そうでない病院に比べて紹介率・逆紹介率が高い傾向がある(p205参照)。厚労省医療課の担当者は、「社会保障改革の中で議論されている大病院の外来一部負担見直し(選定療養ではなく、高額負担を義務化する)は、外来機能分化に効果があると考えられる」とコメントしている。
 
 ところで最終取りまとめ案では、減額措置の拡大のみが提案されており、「紹介率40%以上、逆紹介率30%以上」という基準には言及がない。
 この点、筒井委員(国立保健医療科学院統括研究官)は「基準の妥当性も考えるべき」と指摘しており、中医協総会で検討される可能性もあろう。
 
 
◆亜急性期の拡大に向けて、厚労省が療養病棟の看護配置資料を提示
 
 ちなみに、中間取りまとめで提案された方向をあげると、次のような点がポイントとなる。
(1)一般病棟入院基本料(7対1等)
『複雑な病態をもつ急性期の患者に対し、高度な医療を提供する』という役割を明確にし、「特定除外制度の見直し(13対1等と同じ仕組みとする)」「看護必要度・重症度基準の見直し」などを行う(p9〜p16参照)(p52〜p89参照)
(2)亜急性期入院医療
機能を(i)急性期病床からの受入れ(ii)在宅復帰支援(iii)在宅等患者の緊急時の受入れ―の3つと定義し、これにふさわしい施設基準を設定するとともに、算定対象を療養病棟にも広げる(p17〜p18参照)(p90〜p100参照)
(3)医療資源の乏しい地域における特例
 病棟ごとの入院基本料届出等を認める特例措置は十分に活用されていないが、検証を前提に継続する(p19〜p20参照)(p101〜p108参照)
(4)特殊疾患病棟等から療養病棟に転換した場合の経過措置
 療養病棟に転換した場合、患者の医療区分を高く評価する経過措置を設けているが、ほとんど活用されていないため廃止する(p21〜p22参照)(p109〜p120参照)
(5)診療報酬点数表の簡素化
 入院料の施設基準に「管理栄養士」配置が義務化されたが、有床診療所の実態とあっていないため、病院とは別の対応(つまり義務化の廃止)を行う(p23〜p24参照)(p121〜p136参照)
(6)医療機関における褥瘡の発生
 褥瘡発生等の基礎データを収集し、有効な対策へつなげていくことを検討する(p25参照)(p137〜p142参照)。
 
 このうち(2)について、医療関係者(とくに急性期医療の関係者)から「療養病棟に亜急性期機能を持たせることは困難ではないか」との指摘がなされている。これに対し厚労省当局は、「20対1療養病棟でも、緊急入院患者の占める割合が7対1病棟の平均より高いところでは、看護補助者を含めて概ね6.7対1程度の手厚い配置をしている」という調査データを提示している(p189参照)。

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