[診療報酬] 24年度改定検証、医療連携は在宅24時間対応に寄与しない可能性

[中央社会保険医療協議会 診療報酬改定結果検証部会(第38回 10/9)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 10月 09日

» この記事を書いたメディアのページへ
 厚生労働省は10月9日に、中医協の「診療報酬改定結果検証部会」を開催した。
 この日は、平成24年度改定の結果検証調査(24年度調査)について本報告案をまとめた。なお、この報告案は、同日に開催された中医協総会に提示されている。
 
 診療報酬改定には、適正経営(収入)の担保や新たな医療技術の保険導入などいくつかの目的があるが、「医療現場にある課題を解決する」という点が重視される。
 このため厚労省は平成18年度改定から、改定の結果、医療現場がどのように変化したかをチェックし、これを次期改定に反映させるというPDCAサイクルをまわしている。
 
 24年度改定の結果検証については、「改定の効果が早期に現れる項目は24年度に調査検証を行う(24年度調査)」、「改定の効果が現れるまでに時間のかかる項目は25年度に調査する(25年度調査)」という2本立てで行われている。
 24年度調査に関しては、すでに結果速報が中医協総会にすべて報告されており(項目ごとに報告されている)、今般、結果検証部会の見解を添えた本報告案がまとまったもの。
 本報告案を眺めてみよう。
 
 24年度調査の項目は、次の6つ(p3参照)。
(1)救急医療機関と後方病床との一層の連携推進など、小児救急や精神科救急を含む救急医療の評価
(2)在宅医療の実施状況、および医療と介護の連携状況
(3)訪問看護の実施状況、および効率的な訪問看護等に係る評価
(4)在宅における歯科医療と、歯科診療で特別対応が必要な者の状況
(5)医療安全対策や患者サポート体制等に係る評価についての影響
(6)後発医薬品の使用状況
 
 
◆小児救急の評価充実、効果は十分ではなくさらなる後方病床との連携を
 
 (1)の救急(p86〜p326参照)については、24年度改定で(i)【小児特定集中治療室管理料】の新設など「小児救急に関する評価」(ii)【救急搬送患者地域連携受入加算】の引上げや要件緩和など「後方病床における取組の評価」(iii)【院内トリアージ実施料】の新設など「救急外来の評価」(iv)「精神科救急に関する評価」―などが行われた。
 
 このうち(i)の小児救急については、平均在院日数の減少など「NICUの回転率が上がっている」などの効果が現れているが、十分とは言えないため、「さらなる後方病床との連携推進が必要」と述べている(p12〜p13参照)。
 (iii)では、院内トリアージについて、3次救急の61.4%、2次救急の87.6%、1次救急の54.5%が「24年4月以降にトリアージを導入」しており、改定が一定の効果をあげている状況がうかがえる(p13〜p14参照)。
 また(iv)の精神科救急については、24年度改定で「精神科救急に入院した後、状態が落ち着いた患者を連携精神診療機関等に紹介した場合の加算」を設けたが、この加算で他院への転院が円滑に進んだかどうかについて、9割近くは「変わらない」と回答している。加算浸透にも時間がかかるため、検証部会では「今後の動向を注視する必要がある」と述べるにとどめている(p14〜p15参照)。
 
 
◆24時間対応に対し、他院との連携は寄与度低い可能性あり
 
 (2)の在宅医療(p327〜p637参照)については、まず「緊急時に入院する後方病床の確保」が重要である。在宅医療ですべてを賄うことはできず、また患者にとっても後方病床の存在は安心につながるためだ。
 この点、機能強化型を含む在支診では6割以上が「連携先病床」を確保できているが、実際には緊急入院させられなかった(満床など)ケースが少なくない。検証部会では「緊急入院のための病床確保は依然として課題となっている」と見ている(p24〜p25参照)。
 
 また「24時間体制」も在宅医療では重要だ。この点、1つの医療機関、とくに個人診療所が24時間体制を組むことは難しい。そのため、厚労省は「複数の医療機関が連携して24時間体制を構築する」ことを推進している。
 しかし、今回の調査結果では「他医療機関との連携で24時間体制の負担が軽減された」という回答は少ない(在支診で2割強、一般診療所で9%程度)(p23参照)。検証部会では「連携体制の構築が24時間体制の構築を推進することに必ずしも寄与しない可能性がある」と指摘している(p25〜p26参照)。
 なお、この点について西澤委員(全日病会長)は、後に開催された中医協総会で疑問を呈し、データの再精査等を求めている。
 
 
◆訪問看護ステーション、大規模化が24時間対応や経営面で重要
 
 (3)の訪問看護(p638〜p892参照)について、24年度改定では「退院後の医療依存度が高い要介護被保険者に対し、退院直後の2週間に限り、医療保険での訪問看護が提供できる(通常は、急性増悪等以外では介護保険のみとなる)」規定を盛り込んだ。在宅移行を円滑に進めるための方策だ。
 調査結果からは訪問看護指示書・実際の訪問回数ともに増加していることがわかり、在宅への円滑移行が進んでいる状況がうかがえる(p35参照)。
 
 また、訪問看護においても「24時間体制」が重視されており、診療報酬上は【24時間連絡対応加算】が設けられている。この点、「加算の届出は、訪問看護ステーションの職員規模が大きいほど高い」ことがわかる(p36〜p37参照)。
 訪問看護ステーションの経営面で見ても「規模が大きいほど、改定による収支プラス効果が大きい」との結果が出ており、厚労省は今後も「訪問看護ステーションの大規模化」を進める方針だ。
 
 
◆在宅歯科医療、まずは存在の周知を図ることが重要
 
 (4)の在宅歯科医療(p893〜p1121参照)は、地域包括ケアにおける「栄養管理」という面、あるいは「誤嚥性肺炎防止」という面などで、とても重要になる。
 24年度改定では、歯科と医科の連携が進められたが、調査からは「歯科訪問診療があることが知られていない」などの課題が浮かび上がった。
 検証部会では、「連携を図るためには、歯科訪問診療に関する情報等の周知が重要」と指摘している(p49参照)。
 
 また認知症患者など「特別な対応が必要な患者に対する歯科医療」についても24年度改定で手当てされている。
 この点については、「採算が合いにくい」「全身状態の管理が必要になる」などの課題が現場から示されており、検証部会は「特別対応が必要な患者に対する歯科診療の負担を軽減するための方法を『幅広く』とって行く必要がある」とコメントしている(p50〜p52参照)。
 
 
◆有床診療所の管理栄養士配置義務、対策の検討が必要
 
 (5)の医療安全対策(p1122〜p1356参照)については、24年度改定で【感染防止対策加算】の大幅見直しなどが行われた。
 調査結果からは「医療機関が感染防止対策に積極的に取組んでおり、新規入院患者1000人あたりのMRSA等感染者数が、改定後に大きく減少している」ことがわかった。改定の目的が一定程度達成されていると見ることができよう(p56〜p57参照)。
 
 ところで24年度改定では、入院料の施設基準に「管理栄養士の配置」が盛込まれた。つまり、管理栄養士を配置していない場合、入院料を算定できないケースが生じるのである。
 これは、「病院では9割以上が管理栄養士を配置している」という厚労省調査結果に基づいて行われたものだが、有床診療所サイドからは「管理栄養士の配置は困難」との批判が多く出されている。
 この点、検証部会が行った調査では「24年3月31日時点で、【栄養管理実施加算】の届出を行っていなかった(つまり、管理栄養士を配置していない)医療機関は86.7%にのぼる」ことや、「管理栄養士が地域にいないことが最大の理由である」ことなどが明らかになっている。
 検証部会では「対策を検討する必要がある」と指摘(p62参照)。
 なお、この点について、診療報酬調査専門組織の「入院医療等に関する調査・評価分科会」では、有床診療所の管理栄養士配置義務を廃止する方針を打出している。
 
 
◆後発品使用促進、厚労省による品質保証の周知徹底が必要
 
 (6)の後発品(p1357〜p1644参照)については、毎年調査が行われている。
 今回の調査結果では、24年度の対応(一般名処方加算の創設など)で一定の効果があることが分かったが、一方で、患者・医師等に「根強い後発品への不信感」があることも明らかになっている。
 このため検証部会では、「保険薬局、医師、患者から後発品使用促進のために大切なこととして同じことがあげられている。それは『厚労省による後発医薬品の品質保証が十分であることの周知徹底』である」と指摘。厚労省に対して、一層の情報推進等を強く要望している(p84〜p85参照)。

関連資料

※資料をご覧いただくためには、ログインが必要です。
mail   pass

mail
pass

医時通信について

よくある質問