[診療報酬] 高血圧等患者に対し、主治医の服薬管理や24時間対応を包括評価

[中央社会保険医療協議会 総会(第250回 10/9)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 10月 09日

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 厚生労働省は10月9日に、中医協総会を開催した。
 この日は、外来医療について集中討議を行った。
 
 
◆外来機能分化を進めるため、「主治医機能」を包括評価
 
 外来医療に関する集中討議は、1月23日、6月12日に続き、この日で3回目。6月12日の会合では、厚労省当局から「中小病院・診療所の主治医機能を持った医師が、複数の慢性疾患を有する患者に対し、適切な専門医療機関等と連携することにより、継続的かつ全人的な医療を行うことを、『総合的に評価する』」という論点が掲げられた。主治医機能を評価する新たな包括点数導入の提案である(p51〜p52参照)。
 厚労省保険局の宇都宮医療課長は、「現行の出来高点数の中では、『診療』行為しか評価できない。しかし、主治医は健康管理なども担っており、これが我が国の健康水準を維持するうえできわめて重要だ。そうした点を包括点数の中でなんとか評価できないかと考えている」と、新たな包括評価の考えを説明している。
 
 この日は、この包括点数について、より詳しい提案が厚労省当局から行われた。そこでは、(1)対象医療機関(2)対象患者(3)果たすべき主治医機能の内容―が示されている。
 
 まず(1)の対象医療機関については、「診療所や中小病院」となる(p101参照)(p54〜p59参照)。これは「診療所・中小病院は一般外来、大病院は専門・紹介外来」という機能分化(p47参照)(p50参照)を進める観点から導かれるもので、異論は出ていない。
 
 また(2)の対象患者については、「年齢による区分は行わない」ことを確認したうえで、(i)高血圧症(ii)糖尿病(iii)脂質異常症(iv)認知症―を有する者としてはどうかと提案している(p101参照)(p54〜p59参照)。
 生活習慣病患者が増加している現状、今後、認知症患者が増加すると見込まれる点などを考慮したものだ。この点にも、大きな異論は出ていない。
 
 
◆医師と薬剤師が連携して、重複投薬などのチェックを
 
 さらに(3)の主治医機能の内容については、通常の診療を行うことを大前提として、これに(i)服薬管理(ii)健康管理(iii)介護保険(iv)外来から在宅までの継続した医療と24時間対応―という4つの機能が提示されている(p101参照)。
 それぞれについて厚労省の考え方と、中医協委員の意見を見てみよう。
 
 (i)の服薬管理について、厚労省当局は「患者が通院している医療機関をすべて把握するとともに、処方されている医薬品すべてを管理することが重要」とし、「院内処方等により、医師自ら、または配置されている薬剤師等が、一元的な服薬管理を行う体制」をとることを求めている(p101参照)(p60〜p66参照)。
 この点、宇都宮医療課長は、「複数の医師・医療機関にかかる場合、ときに重複投薬が生じる。現在、かかりつけ薬局でこのチェックを行っていただいているが、処方権をもつ医師にもこれまで以上に医薬品への関心を高めていただき、薬剤師と医師が連携することを期待したい」とコメントしている。
 
 また、この提案に対しては、「厚労省が進めてきた『医薬分業』と矛盾するのではないか?」との疑問がわく。
 これに対し宇都宮医療課長は、「今の医薬分業の方針を変更することはない。しかし、地方部で薬局の整備が十分ではない場合には、医療機関が薬局の機能を補完する必要がある。医師の医薬品への関心を高めていただきたい」と説明している。
 
 ところで安達委員(京都府医師会副会長)は、「複数疾患をもつ患者に対し、主治医が総合的な診療を行うことは非常に重要で、そこに服薬管理が入ることも理解できる。しかし、その考え方と、処方せん料等の7剤規制とは矛盾するのではないか」と厚労省当局を批判した。
 7剤規制とは、7種類以上の内服薬投与を行った場合、処方せん料(7種類以上は40点、6種類以下は68点)や処方料(7種類以上は29点、6種類以下は42点)が減額される診療報酬上の仕組みである。
 複数疾患を持っている患者には、当然多くの医薬品を処方することになるが、「多種類の医薬品を出すことを抑制する」診療報酬体系は、複数疾患の管理を困難にするのではないかというのが安達委員の主張である。
 
 
 (ii)の健康管理について厚労省当局は、「健康診断・検診の受診勧奨を行いその結果をカルテに記載するとともに、評価結果をもとに患者の健康状態を管理する」ことや、「気軽に相談できる体制をとる」こと、さらに「たばこ対策をとる」ことなどを考えている(p101参照)(p68〜p78参照)。
 
 
 (iii)の介護保険に関しては、「要介護認定に係る主治医意見書の作成」「居宅療養管理指導等の介護サービス提供」などが厚労省当局から例示された(p101参照)(p80〜p89参照)。
 高齢患者の場合には、医療と同時に介護保険サービスを利用する機会も増えてくる。また、在宅生活を継続するためには、「緊急時の短期入所先の確保」がきわめて重要であるが、小規模医療機関では手続き面の煩雑さなども手伝って「短期入所療養介護」(いわば医療機関が行うショートステイ)を実施していないところも少なくない(p89参照)。
 この点、主治医が介護保険サービスへの理解を深め、実際にサービス提供を行うことで、「医療・介護の連携」ひいては「地域包括ケアシステムの構築」に向けて大きく前進することが期待できよう。
 
 花井圭子委員(連合総合政策局長)は、「主治医には、地域ケア会議への出席をお願いしたい」と要望している。
 
 
 (iv)の24時間体制等は、患者、とくに高齢の患者が主治医にもっとも期待している部分であろう。厚労省当局は「在宅医療への積極的な関与」「夜間の連絡も含めて、患者に対して説明と同意を求める」ことをあげている(p101参照)(p90〜p98参照)。
 18年度改定で新設された在宅療養支援診療所、24年度改定で導入された機能強化型在宅療養支援診療所が、まさにこうした機能を担っているが、これをさらに推進するものといえよう。
 
 
 こうした機能について白川委員(健保連専務理事)は、(a)他の専門医への紹介機能(b)ターミナルケア―の2点を追加すべきと提案。とくに後者に関して、廃止された【後期高齢者終末期相談支援料】等を引合いに出し、「診療所等の特定の医師と患者が契約し、毎月いくらかの費用を支払って(包括点数)、疾病治療・健康管理・相談などをすべて診てもらう」ものという自身のイメージを語っている。
 
 一方、鈴木委員(日医常任理事)は、「かかりつけ医(主治医)機能をずいぶん盛込んでいるが、かかりつけ医の負担が過重になってはいけない。24時間対応や、白川委員の提案する終末期対応などは、医師個人ではできない。地域の中で考えていく問題である。その点を認識してほしい」と強調した。
 
 また西澤委員(全日病会長)は、「主治医機能の評価は重要であり、方向性は理解できる」としたものの、「包括評価とするにあたっては、どういった機能を評価するかなど、きめ細かい議論が必要である」とコメントし、早急な結論を出すことを牽制している。
 
 
◆ドラッグ・ラグ解消に向け、北大病院等では先進医療の特例設ける
 
 ドラッグ・ラグ等を解消するための医療保険サイドからのアプローチとして、先進医療が注目される。
 具体的には、先進医療を申請するにあたっての「最初の数例」を、一定の医療水準を担保できている医療機関では廃止するという仕組みが導入される(p30〜p44参照)。
 これにより、「最初の数例」にかかる負担(患者や病院が全額を負担しなければならない)がなくなるため、未承認薬等の研究・開発が一定程度進むものと期待されている。
 
 ただし、「最初の数例」を廃止することは、まったくのゼロから新規技術を一部保険導入することを意味するため、有効性・安全性が問題となる。そこで厚労省は、次の15医療機関に限り、「最初の数例」を行わずに、新規技術を先進医療として申請することを認めるとしている(p28〜p29参照)。
【早期・探索的臨床試験拠点整備事業】
(1)国立がん研究センター
(2)大阪大学医学部附属病院
(3)国立循環器病研究センター
(4)東京大学医学部附属病院
(5)慶應義塾大学病院
【臨床研究中核病院整備事業】
(6)北海道大学病院
(7)千葉大学医学部附属病院
(8)名古屋大学医学部附属病院
(9)京都大学医学部附属病院
(10)九州大学病院
(11)東北大学病院
(12)群馬大学医学部附属病院
(13)国立成育医療研究センター
(14)国立病院機構 名古屋医療センター
(15)岡山大学病院
 
 なお、この日は、保険診療との併用が認められる新たな先進医療として、「冠動脈形成術や末梢動脈形成術などカテーテル治療を受ける造影剤使用患者で、腎機能が中等度・高度障害の人に対する『リーナルガードによる造影剤腎症防止』」が報告されている(p3〜p27参照)。
 
 
 
 このほか、厚労省当局から「高血圧症治療薬ディオバンに関する臨床研究事案と、対応・再発防止策」などが資料提示された(p102〜p156参照)。

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