[診療報酬] 大病院の紹介外来率等による減額措置、全500床以上病院に拡大

[診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会(平成25年度 第9回 9/30)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 09月 30日

» この記事を書いたメディアのページへ
 厚生労働省は9月30日に、診療報酬調査専門組織の「入院医療等の調査・評価分科会」を開催した。
 この日は、24年度改定項目のうち「13対1・15対1一般病棟における特定除外制度の影響」や「経過措置7対1一般病棟の状況」などについて議論を行った。
 
 入院医療分科会では、24年度診療報酬改定が入院医療等に及ぼした影響を探るため、平成24年度(7対1の平均在院日数の変化など)と平成25年度(13対1等の特定除外廃止の影響など)とに分けて調査を行っている。
 24年度調査については、結果が既に報告されるとともに、これをベースにした議論を行い、中間とりまとめが行われている(p173〜p195参照)(p196〜p298参照)。
 
 この日は25年度調査結果が報告(p6〜p68参照)(p69〜p107参照)され、これに基づいた議論が行われた。25年度調査項目は、大きく次の4点。
1.13対1・15対1一般病棟における特定除外制度廃止の影響(p8〜p34参照)
2.経過措置7対1の状況と、今後の意向(p35〜p42参照)
3.金曜日入院・月曜日退院、正午以降退院の状況(p44〜p53参照)
4.大病院における外来機能分化措置の状況(p54〜p68参照)
 
 
◆13対1等の特定除外廃止、「現場に大きな問題ない」と厚労省
 
 1は、13対1・15対1一般病棟において、90日を超える特定除外患者が著しく多かった(90日超患者の9割以上)ために、この制度を廃止したもの。
 具体的には、(1)療養病棟入院基本料と同じ点数を算定する(包括点数を算定する)(2)出来高点数(一般病棟入院基本料)を算定できるが、平均在院日数の計算対象に加える―のいずれかを病院側が選択するという仕組みだ(p9〜p11参照)。
 この点、24年度改定時に厚労省保険局医療課では「とくに13対1では平均在院日数要件が厳しい(24日以内)ために、ほとんどの病院が(1)を選択するであろう」と見込んでいた。
 しかし、今回の調査によれば、13対1の65.2%、15対1の68.2%が(2)を選択していることが分かった(p22参照)。
 
 この背景には、平均在院日数の計算方法が大きく関係しているようだ。平均在院日数は、【直近3ヵ月間の在院患者延べ日数】÷【(直近3ヵ月間の新入棟患者数+直近3ヵ月間の新退棟患者数)÷2】で計算される(p31参照)。
 これをもとにシミュレーションすると、7対1一般病棟(平均在院日数要件は18日以内)では「入院患者の1割が90日超である場合には、その他の患者(9割)の平均在院日数が15日であれば、要件を満たす」(p32参照)「入院患者の22%が90日超であっても、その他の患者の平均在院日数が14日であれば、要件を満たす」(p33参照)ことが分かる。
 つまり、相当程度、特定除外患者が入院していても、他の患者の平均在院日数を一定程度短縮することで「うまくまわせる」のである。
 
 もっとも、これは逆に考えれば「7対1等で特定除外制度を廃止しても、多くの病院はそれほど困らない」ことも意味しており、今後の7対1・10対1における特定除外制度廃止論議に大きな影響を及ぼす結果となりそうだ。
 
 また、今回の調査では「90日を超えて入院している患者の退棟先」についても調べられており、(i)6〜7割は死亡し、死亡以外の退院は3〜4割である(ii)死亡以外退院で多いのは「自宅(死亡以外退院のうち35%程度)」「自院の医療療養病棟(同13〜23%)」「介護施設(同20%以上)―などという結果が明らかになっている(p26参照)。
 厚労省保険局医療課の担当者は、「重度の肢体不自由児等の半数は療養病棟に、リハ患者の4割程度は自宅に退棟している」とコメントしており、90日を超える患者について、一般病棟で診る必要性は低そうだ。
 
 ちなみに、24年度改定で90日を超える患者数(病棟あたり)は、13対1では1.4人(マイナス0.8人)、15対1では5.2人(マイナス0.7人)と減少しており(p23参照)、減少した医療機関では退院支援(退院後の居場所に関する調整や、介護サービス受給への支援など)をより積極的に行っている(p27〜p29参照)。
 
 こうした結果を見て厚労省医療課では、「24年度改定での、13対1等における特定除外廃止には『大きな問題はなかった』」と見ている(p34参照)。
 
 この点、高智委員(健保連理事)は、「26年度改定以降は、90日を超えて入院している患者について、療養病棟の点数を算定している患者と出来高点数を算定している患者の比較を行い、出来高から療養点数(包括点数)に移行できる仕組みを考慮すべき」と提案している。
 
 一方、神野委員(社会医療法人財団董仙会理事長)や石川委員(千葉県勤労者医療協会理事長)は、今回の結果が7対1等にも波及することを見越し「7対1と13対1・15対1では患者像が異なる。今回の結果を7対1・10対1論議に直接適用されては困る。そのあたりは中医協総会でしっかり議論してほしい」とアピールしている。
 とくに神野委員は、「13対1・15対1で90日超のがん患者が減っている(p24〜p25参照)が、7対1に入院するがん患者は病状がきわめて不安定である」と、7対1における特定除外制度の一部存続を狙ったかのようなコメントも行っている。
 
 
◆経過措置7対1、規定どおり26年3月31日に廃止へ
 
 2の「経過措置7対1」とは、7対1一般病棟の施設基準厳格化に伴い、基準を満たせなくなっても、「10対1の要件を満たしていれば、26年3月31日まで7対1の点数を算定できる」とする経過措置である。
 いわば「2年の間に、体制整備を行って新7対1を算定できるようにするのか、10対1に降りるのかを考えてください」というものだ。
 
 この点、経過措置を算定している病院は25年9月1日現在で113にとどまっている(24年7月1日現在の7対1病院数は1456)(p36参照)。
 また、24年4月1日時点で経過措置を届出ていた197病院のうち、132病院の状況を追跡したところ、126が経過措置7対1一般病棟であり、25年6月時点では(1)44病院が7対1基準を満たした(2)77病院は経過措置を継続(3)1病院は専門(がん)病院7対1に転換(4)4病院は10対1に降りた―という状況である(p36参照)。
 
 また、経過措置を届出ている理由としては「重症度・看護必要度基準を満たす患者割合が15%以上」の要件を満たせないケースが多いようだ(80病院中48病院で、60%)(p37〜p38参照)。
 さらに、経過措置を届出ている病院の今後の意向としては、(i)62.5%が7対1を満たすよう努力する(ii)28.8%が「10対1」に降りる―と考えている(p41参照)。
 
 こうした状況に鑑みて、厚労省医療課では「経過措置の延長は不要(26年3月31日で経過措置は廃止する)」としてはどうかと提案している(p42参照)。
 これには明確な異論が出ず、分科会としては「7対1経過措置は規定どおり廃止する」方針を確認したといえる。
 
 もっとも、この日は、経過措置から脱線し「7対1における特定除外制度の是非」について舌戦が繰り広げれられた。
 これは、厚労省当局が論点の中で「経過措置7対1は、『複雑な病態を持つ急性期患者に対し、高度な医療を提供している』とは言えない」と記述したところ(p42参照)に、神野委員が「これは決定事項か?」と噛み付いたのが始まり。
 この発言に対し武久委員(日本慢性期医療協会会長)は、「分科会ではこの表現で中間とりまとめを行っている。中医協総会では別の意見も出たが、それは分科会の結論には影響しない。一度決まったことを蒸し返すのは男らしくない」と批判している。
 
 今後、最終取りまとめに向けて、「7対1・10対1における特定除外制度の廃止」は最重要テーマの1つとなるが、波乱が続きそうだ。
 
 
◆金曜入院・月曜退院が著しく多い病院等の入院料減算、26年度以降も継続
 
 3は、「金曜日に入院させ、月曜日に退院させることで、土日の入院料を稼ごうという医療機関がいるのではないか」等の指摘を踏まえて、24年度改定で導入された減算ルールだ。
 具体的には、(1)金曜日入院・月曜日退院の割合が、6ヵ月連続して40%を超える場合(2)30日以上の入院患者について、午前中退院の割合が、6ヵ月連続して90%を超える―場合には、当該日の入院基本料を8%減額するというもの。
 
 この点、24年度改定前後で(1)(2)ともに大きな状況の変化はないようだ(p44〜p52参照)。
 また、厚労省医療課では、(1)(2)ともに対象病院は10〜20程度であるとコメントしている。
 
 この、いわばペナルティ措置を実際に受ける病院数は少なく、また改定前後での変化もないことから、「本減額措置は廃止してもよいのではないか」とも思える。
 しかし、(1)(2)を見れば分かるように、極めてゆるい条件にあてはまるような病院は、保険医療においては、やはり「好ましくない」と考えるべきであろう。
 厚労省医療課は、「当該措置の継続」と「厳格化」を論点に掲げている(p53参照)。
 
 
◆大病院の紹介率等に応じた初診料等減算措置、500床以上の全病院に拡大
 
 4は、「一般外来は診療所や中小病院で、紹介外来や専門外来は大病院で」という外来機能分化(p58参照)を進めるための措置の影響を見たものだ。
 具体的には、大病院における一般外来を適正化するために、「特定機能病院・一般病床が500床以上の地域医療支援病院では、紹介率40%未満かつ逆紹介率30%未満の場合には、初診料と外来診療料を減算する(減算分は、選定療養として患者から徴収可能)」という措置である(p59参照)。
 
 厚労省の調査では、本減算措置の対象となった医療機関はなかったという。ただし、「スレスレの病院」が2病院あった。
 上記減算措置には、(1)前年度の紹介率が40%未満、逆紹介率が30%未満である(2)当該年度の連続する6ヵ月の紹介率が40%未満・逆紹介率が30%未満である―場合に初めて対象となる。この点、(1)には2病院が該当したが、(2)で紹介率等をクリアしたため、減算措置対象とならなかったのである(p60参照)。
 
 こうした状況を踏まえ、厚労省医療課では(i)減算措置を「許可病床数が500床以上のすべての病院」に拡大する(ii)逆紹介の取組みをさらに推進する―という方針を示している(p68参照)。
 
 とくに(ii)の逆紹介に厚労省当局や委員は注目しているようだ。
 厚労省医療課の担当者は、「病院からの逆紹介がなければ、病院・診療所間の信頼関係が構築されず、紹介は進まないのが実際であろう。逆紹介を進めるために地域連携パスなどを拡大すべきとの指摘もあるが、診療報酬上は、名称こそ異なるものの地域連携を進める加算や点数は数多くある」とコメントしており、「逆紹介率を病院の施設基準に設ける」ことや「逆紹介率の低い病院について一定のペナルティを設ける」ことなどが検討されることになりそうだ。
 
 なお、「紹介率40%、逆紹介率30%」の基準値の妥当性について、筒井委員(国立保健医療科学院統括研究官)は、「(a)紹介率・逆紹介率ともに満たす病院(b)紹介率は満たすが、逆紹介率は満たさない病院(c)紹介率は満たさないが、逆紹介率は満たす病院(d)紹介率・逆紹介率ともに満たさない病院―に区分し、さらに紹介状なしの初診患者から徴収する選定療養費の金額を勘案して、病院の特性などを分析することで、基準値の妥当性が見えてくると思う」と提案している。
 
 
 
 厚労省医療課の担当者は、「次回会合(10月中旬予定)に、最終報告案を提示し、10月中にとりまとめを行いたい」と述べているが、上記のように「7対1等の特定除外制度廃止」など議論がくすぶっているテーマもあり、予定通りに進むかどうかは微妙だ。
 ところで、医政局の検討会で病床機能報告制度における機能区分(高度急性期、急性期、回復期、長期療養)が固まっている。これが、本分科会の最終とりまとめにどう影響するかが気になるが、厚労省医療課の担当者は「すでに中間とりまとめ(p173〜p195参照)(p196〜p298参照)を中医協総会に報告済であり、そこに影響はない」とコメントしている。
 
 
 なお、この日は、日医と四病協による「特定除外に該当する入院患者実態調査結果」(p108〜p172参照)が石川委員より資料提示された。

関連資料

※資料をご覧いただくためには、ログインが必要です。
mail   pass

mail
pass

医時通信について

よくある質問