[診療報酬] 消費税8%対応方針やDPCヒアリング調査など、中医協総会で了承

[中央社会保険医療協議会 総会(第249回 9/25)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 09月 26日

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 厚生労働省は9月25日に、中医協総会を開催した。
 この日は、下部組織である「消費税分科会」と「DPC評価分科会」から報告を受けたほか、厚労省当局から「一体改革に関連する改定部分についての基本的な考え方」や「平成24年度医療費の動向」について報告を受けるなどした。
 
 
◆消費税8%時、基本診療料と個別点数を組合わせる方針を了承
 
 26年4月から消費税率が8%に引上げられる見込みだ。保険診療における患者負担等では消費税が非課税となっているため、医療機関等に控除対象外消費税(いわゆる損税)が発生しており、この負担も増加することになる。
 そこで政府は、26年度改定において消費税8%に対応するためのプラス改定を行う方針を固めており、分科会で具体案が議論されてきた。
 分科会の中間整理(中間報告)では、次のような方針に沿って消費税対応のプラス改定を行うべきと提案されている(p49〜p54参照)。
(1)診療報酬とは別立ての、高額投資(建替えや高額機器購入など)への対応はしない
(2)診療所では、初・再診料、有床診療所入院基本料に上乗せ
(3)病院では、初・再診料(診療所と同点数にする)、入院料等に上乗せ
(4)歯科では、初・再診料に上乗せ
(5)調剤では、調剤基本料に上乗せ
(6)上記(2)〜(5)を中心としつつ、個別項目への上乗せを組合わせる
(7)薬価、材料価格については、【販売価格の加重平均値(消費税抜きの市場実勢価格×108%)+(現行価格×調整幅)】とする
(8)薬価、材料価格に消費税が上乗せされている旨を簡略な方法で表示する
(9)改定財源は、内閣で適切に確保する
 
 こうした提案について委員から異論は出されず、森田会長(学習院大法学部教授)は「分科会で、さらに議論を詰めてほしい」とコメントしている。
 
 
◆DPC見直しに向けたヒアリング調査等を了承
 
 DPC制度については、24年度に大きな見直し(医療機関群・基礎係数の導入など)が行われたばかりであることなどから、26年度はマイナーチェンジにとどまる見込みだ。
 分科会では、中間報告を取りまとめると同時に、次の2つの特別調査を行う方針も固めている。
(1)26年度改定に向けたヒアリング調査(救急医療入院、後発品使用、入院時の持参薬について、その割合が高い病院と低い病院)(p55参照)
(2)機能評価係数IIの新規項目候補である「病院指標」の作成と公開に関する調査(p56〜p67参照)
 
 (1)は、26年度改定の見直し案を、より医療現場の実態に即したものとするための調査だ。DPCデータをもとに、たとえば後発品割合が著しく高い病院と低い病院を選び、取組の状況などを直接聴取することになる。
 
 この点、白川委員(健保連専務理事)は「制度の悪用とまでは言わないが、『うまいことやってやろう』というケースが存在するのは、保険診療上は困る。ヒアリングを通じて適正な運営を促すようにしてほしい。場合によっては、ヒアリングの中で厚労省サイドからサジェスチョンを行っても良いと考えている」とコメント。
 
 一方、西澤委員(全日病会長)は「たとえば持参薬については、DPC病院の収益増目的ととられがちだが、単科病院では当該医薬品を準備していないケースもある。ヒアリングにあたっては、こういった事情もしっかり加味して行ってほしい」と要望するとともに、「DPCだけのルールもあるが、本来であれば出来高を含めて医療機関全体で統一したルール・評価とすべきであろう。そういう面では、総会での議論も十分に行うべきである」と提案している。
 
 
 (2)は、新たな機能評価係数IIの候補として、藤森分科会長代理(北大病院地域医療指導医支援センター長)から提案されている「病院指標」について、現場の意見等を把握しようというもの。
 藤森分科会長は「住民や患者に対し、自院の情報等を分かりやすく提供していることを評価すべきである」と強調し、素案も提示しているが、他の委員からは「専門用語などは、患者等には分かりにくい。現場等の意見を踏まえてはどうか」との指摘があった。そのため、特別調査の一環として実現可能性等を調べるもの。
 なお26年度改定に、この調査結果が反映される、つまり「新たな機能評価係数IIの指数が導入される」可能性は極めて低く、28年度以降の検討テーマとなる見込みだ。
 
 委員からは、上記のように若干の意見があったものの、調査実施について異論は出されず、中医協として承認している。
 
 
◆在宅患者の急性増悪、亜急性期と急性期のいずれが対応すべきか
 
 診療報酬改定については、審議会等の役割分担が進められ「透明な審議」を行うために(1)基本方針は、社会保障審議会の医療保険部会・医療部会で固める(2)改定率は内閣が予算編成過程で決定する(3)改定内容は、(1)と(2)に沿って中医協で議論する―こととされている。
 
 ところで、26年度改定は例年と異なり(i)一体改革関連部分(ii)通常部分(一体改革の有無と関係なく、医療現場の課題を解決する)(iii)消費税対応―の3パーツで構成される。
 このうち(i)については、社会保障制度改革の期限が定められていたため(25年8月21日)、関係審議会等で議論が先行して進められており、今般「基本的な考え方」がまとめられたものだ(p68〜p71参照)。
 詳細については、既にお伝えしているのでここでは割愛するが、「在宅患者の急変時の対応」について、回復期(診療報酬上の亜急性期)が担うべきとする意見と、急性期が担うべきとする意見とが併記されている点が注目される(p70参照)。
 
 この点について診療側の委員は、「救急患者を急性期病院に搬送し、そこでトリアージして亜急性期に再搬送することなどは、医療現場ではあり得ない。在宅患者の急性増悪(救急)は、亜急性期ではなく急性期のベッドで対応するべきだ」とし、急性期が担うべきとする根拠を説明している。
 
 また白川委員は、診療報酬論議と病床機能報告制度との関係について質問。
 厚労省保険局の宇都宮医療課長は、「病床機能報告制度を待って26年度改定を行うわけにはいかず、先行して診療報酬改定論議を進めることになる。したがって、その時点では診療報酬上の機能区分と、病床機能報告制度は完全に一致はしない。しかし、いずれも2025年(平成37年)の一体改革を目指したものであり、将来的には整合性をとることになる」と説明している。
 
 
◆24年度医療費の動向・調剤医療費の動向
 
 24年度医療費についても既にお伝えしており、速報値では前年度に比べて1.7%増の38兆4000億円となっている(p93〜p123参照)(p124〜p140参照)。
 1.7%の内訳について、厚労省保険局の秋田調査課長は(1)人口の増減:マイナス0.2%(2)高齢化の影響:プラス1.4%(3)診療報酬改定:プラスマイナス0%(4)その他(新規技術導入など):プラス0.5%―と説明している。
 
 24年度医療費は、ここ数年に比べて低い伸び率となっており、主な要因は「受診延日数(受診患者数)の伸び率が低い」ことにあると見られている。
 
 
◆新たな検査2件の保険収載を了承
 
 この日は、新たな臨床検査として次の2件を保険収載することも了承している(p3参照)。
●喀痰または抗酸菌用培地で培養した培養菌株中の結核菌群inhA、fabG1、katG遺伝子中の変異の検出を目的として、ハイブリダイゼーション法によって「結核菌群イソニアジド耐性遺伝子検出」を行った場合、850点を算定する(p4〜p5参照)
●摘出された大腸がんまたは胃がん所属リンパ節中のCK19mRNAの検出を目的として、OSNA法によって「サイトケラチン19(KRT19)mRNA検出」を行った場合、2400点を算定する(p6〜p7参照)
 
 なお、前回(9月4日)会合で報告された「被災地特例措置の利用状況」に一部集計漏れがあり、修正された資料が再提示されている(p141〜p146参照)。

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