[診療報酬] 「病院経営の安定」の視点で基本料のあり方論議する方針固まる

[中央社会保険医療協議会 診療報酬基本問題小委員会(第163回 9/25)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 09月 25日

» この記事を書いたメディアのページへ
 厚生労働省は9月25日に、中医協の診療報酬基本問題小委員会を開催した。
 この日は、「基本診療料のあり方」について検討を行った。
 
 基本小委では、これまでに診療側が「基本診療料のあり方を議論するために、コスト調査を行うべき」と主張する一方で、支払側は「医療機関の経営を担保するための基本診療料の水準について議論すべき」と提案するなど、議論がかみ合わない状況が続いていた。
 この点、下部組織である『医療機関のコスト調査分科会』では、「入院基本料の定義が明確ではない。具体的にどのような医療行為が評価されているか不明である以上、対応するコストを把握することは極めて困難である」との報告(p10〜p14参照)を行っており、議論は宙に浮いた格好となっていた(p7〜p9参照)。
 
 この日は、診療側の西澤委員(全日病会長)らの強い要請を受け、厚労省から次のような論点が再提示された。
(1)診療報酬の水準を設定するうえで、コスト情報の必要性・重要性をどう考えるか(p3〜p4参照)
(2)仮にコスト情報を把握・活用するとした場合に、「医療ニーズと医療提供体制のミスマッチ」の存在が指摘される現状をどう考えるか(p4参照)
(3)仮にコスト情報を把握・活用するとした場合、あらかじめその活用方法等について、関係者間で基本認識のすり合わせをしたうえで、コスト情報の具体的な把握方法の議論等に着手すべきではないか(p5参照)
 
 この論点を受けて西澤委員は「平成15年に『医療機関の運営等に関するコストの調査・分析を進め、医療機関等の機能の適切な評価を進める』旨が閣議決定(p6参照)されてから10年が経過するが、議論がなかなか進んでいない。本日の論点も、かつて示された論点からの進捗が見られない」と厚労省を批判。そのうえで、「基本小委を定期的に開催し、基本診療料のあり方について検討していく必要がある」と強く要望した。
 
 一方、支払側の白川委員(健保連専務理事)は、「基本小委で、基本診療料の論議をする提案に賛成」とし、さらに「これまで議論がかみ合わなかった原因は、『コスト調査・把握』にとらわれすぎたからであろう。診療・支払双方にある根本の問題意識は『医療機関の経営が円滑に行われ、安定すること』なのだから、その点をベースにおいて、基本診療料のあり方を議論していったらどうだろう」と提案した。
 
 診療側の万代委員(日病常任理事)は「『個別点数のコスト』よりも、『病院の安定的な経営』のために何をすべきかを考えるべきであろう」と述べ、白川委員の提案に賛意を示している。
 また、西澤委員もこの提案を受入れ、「(任期の切れる)10月までに基本小委を開催してほしい。また、改定後の比較的時間に余裕のあるときには、集中的な議論を行ってほしい」旨の要請を行っている。
 
 
 このように、「基本小委で、病院の経営安定化という視点に立って、基本診療料のあり方を議論していく」方針について、診療側と支払側の意見はようやく一致したようだ。
 ここからは診療側と支払側とが歩み寄ったように思えるが、白川委員の「病院の経営安定化をベースとする」との提案は、実はこれまでの主張を繰り返したものに過ぎない。つまり、歩み寄ったのは診療側だけなのである。
 そのためか、森田小委員長(学習院大法学部教授、中医協会長)が「果たして、議論が前に進んだのだろうか」とつぶやく場面もあった。
 
 ところで、10月以降は26年度改定に向けた具体論をハイペースで進める必要があり、「基本診療料のあり方」についてじっくり議論する時間はないようにも思われる。
 今後の議論の進め方について森田小委員長は、「厚労省と相談し、診療、支払双方の意見も聞きながら調整したい」と述べるにとどめている。

関連資料

※資料をご覧いただくためには、ログインが必要です。
mail   pass

mail
pass

医時通信について

よくある質問