[認知症]非拘束でニコチン受容体を用いる次世代PET診断システム、アルツハイマー病等の解明に期待

[アルツハイマー病などの脳の病態を解明 「次世代PET診断システム」を確立―独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(H25.9.5)]

精神科医療行政ニュース - 2013年 09月 13日

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 独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) の 「基礎研究から臨床研究への橋渡し促進技術開発」 において、浜松医科大学と浜松ホトニクス株式会社の研究開発チームが9月5日、アルツハイマー病などの患者の脳の病態を解明するための「次世代PET(陽電子放射断層撮影法)診断システム」を確立した、と発表しました。

 高齢化社会の到来に伴い、認知症、アルツハイマー病、躁うつ病などの精神性疾患の増加は大きな問題となっていますが、現状の診断システムでは、患者が長時間静止している必要があるなど、重度患者ほど正しい測定が困難でした。これらの精神性疾患の診断法は問診が主流ですが、研究レベルでは、MRIやPETを用いた診断法の開発が進められています。しかし、現状のPET計測は、比較的長時間にわたって被験者を固定する必要があるため、患者の苦痛が大きく、長時間測定が困難といった問題点がありました。

 この研究開発においては、脳内にある記憶や認知機能に関連するといわれているα7とα4β2の2つのニコチン受容体に着目しています。これらの分布をPET画像で明らかにするためのイメージング薬剤を開発。また、被験者を歩行しながらでも非拘束で高精度に計測できる頭部用PET装置を開発し、臨床での安全性をクリアしています。
 小型・軽量な検出器ヘッドが実現したことで、被験者の頭部を固定せずに頭部の動きを検知し、この情報を元にPET計測で収集したデータを補正することができるといいます。また、体動補正の仕組は、頭部にLEDマーカーを取り付け、浜松ホトニクス株式会社が開発した2台の高速インテリジェントビジョンシステムカメラで計測した3次元体動データから3次元位置情報と回転情報を計算し、PET検出器からの収集データを位置補正して、画像再構成位置補正誤差6mm以下とぶれのない良好な画像が撮れるそうです。実際の認知症患者の撮影にも成功しており、資料では、(1)α4β2ニコチン受容体イメージング薬剤[18F]2FAを用いて、 頭部用PET装置で正常者及び認知症患者を撮影した画像、(2)α7ニコチン受容体イメージング薬剤[11C]Me-QAAを用いて、 非拘束の頭部用PET装置で認知症患者を撮影した画像、が掲載されています。

 このシステムは、脳内の認知機能の変化を把握する新しい薬剤と、高精度のPET診断装置で、ともに世界初の開発です。認知症の早期発見、治療薬開発に貢献できるシステムとして、7〜10年後の製品化を目指しています。

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